紫煙が空に舞う。青空に浮かぶ雲に重なり、やがて霧散した。
「・・・なぁ、どうやったら成仏するんだ?」
「さぁ。あんたのやる気次第でしょ」
「・・・だよなぁ」
「バカでしょ?あんた」
とあるアパートの一室。ベランダで隣りどおし座って空を見てる。
別に同棲とかじゃない。
俺は坊主で、相手は幽霊だった。
近所付合いで、除霊なんぞに駆り出されたりする。
自殺や孤独死。無念を残した霊が部屋にいついて、霊障を起こすのはよくある。
生きた人間に悪さをするのは、よくない。そういった霊たちは、説得し無念を聞いてやる。
死んだ事に気付かない場合は、教えてやる。
坊主は何も経を読むばかりじゃない。こんなのも、行のひとつだ。
「キムタクって整形してるのかな」
「・・・どうだろうねぇ」
「あんたに聞いた私がバカだったわ」
死んだことを理解し、尚且つ悪さするでもない。無念もない。
ただ、なんかツンケンしてるだけの普通の霊。困るなぁ。
俺仏教学校ばっかで、女人に免疫ないんだよなぁ。
大家の話では、特に何も事件があったでもなく。ある日、借主が事情を話し出て行ったという。
流れの霊っていうのもいる。ただ、浮遊にしては、色合いが濃い。
ここにいる理由があるはずなんだ。
それがわかれば・・・
「煙草吸い過ぎはバカになるわよ」
「初見だ。そんな学説はあったかな」
「じいちゃんがいってたもの。あんたも気をつけなさいよ」
じいちゃん。何かの手がかりになる。最近の葬儀は・・・近所じゃない。
煙草。そういやぁ、三丁目の煙草屋のじいさん、最近見ないな。
三丁目から八卦鏡を見れば・・・ここは鬼門になるなぁ。
「じいさん、元気かい?」
「まんざらバカでもないようね」
「行こうか」
三丁目の煙草屋のじいさんは、心筋梗塞で亡くなっていた。身よりもなく、
孤独な最後だったようだ。
傍らには、連れ添うように猫が一匹。朽ちていた。
「ありがとう」
「な、何よ。気持ち悪いわね」
「じいさんがそう伝えてくれっていってるんだ。ありがとう」
「・・・うぇっ・・・うえーんっっ」
鬼門とはいえ、あの距離を移動するのは大変だったろう。だが、少しでもうちの寺の
そばへ。関わりが多い地に行こうと這ったのだろう。
膝と肘がすりむけている訳が解った。素直じゃないが、動物霊とはいじらしいものだ。
手を合わせ、天に昇れるように祈る。紫煙が立ち昇る。白い雲に届きますように。
最終更新:2011年03月04日 21:05