去年、友達3人で海へ行った時の話。
初日、ナンパも散々な結果に終わり気晴らしに泳ぐか!って話になり3人で泳いでた。
もう夕方近かったんで人も少なく泳ぎやすかったためか、俺は調子に乗り結構沖まで泳いだ。
俺たちはみんな水泳部だったから泳ぎには結構自信あったしね。
そしたらさ、足がいきなり攣ったんだ。
近くには誰もいないし、こんな沖まで来た自分を恨んだ。
もう駄目だなーとか、なんか妙に冷静に考えてた。
そしたら、誰か水中から足を引っ張るわけ。
友達がフザけてやってるのかと思って水中に引き摺り込まれながら見たらさ、女の子だった。
雰囲気ですぐに幽霊なんだとわかったんだけどさ、引っ張られるうちに
ほら、足が攣ったりした時に引っ張って治したりするあんな感じになって
足が攣った状態が回復したんだ。
泳げるようになったから、振りほどいて頑張って浜まで泳いだ。
その時は怖くて必死だったし、余裕無かったけど、浜に帰りついたら落ち着いてきて友達に今起こった事を話した。
が、最初は案の定信じてはくれなった。
「お前、溺れかけてテンパってただけじゃね?」
とか言われてそうなんかなぁ、と思って自分の足を見たら、足首に握ったような痕が。
それを見せると友達も信じてくれて
「やばくね?てか4泊で旅館予約しちまったけど切り上げて明日には帰る?」
とか言い出した。俺もそれに賛成した。
夜、友達2人が寝た後も俺は寝付けずにいて夕方の事を考えてた。
ふと(あの幽霊はもしかしたら足が攣った俺を助けてくれたんじゃ)とか考え付いた。
そう考えるとどうしても気になって浜辺に行ってみようと思った。
あの時何故あんな事を考え付いたのかも、そのあと何故浜辺に行ったのかも今思えばわからないけど。
通常の精神状態ではなかったのかもしれない。
そんで夜の浜辺へ行った。
時間は深夜2時半をまわったくらいか。
浜辺へ着いたところで(とは言っても旅館からすぐだが)どうするか考えてなかった事に気付き
とりあえず座ってボーっと海を眺めてた。
そしたら海から彼女が出てきた。
真っ白なワンピースで髪はセミロングくらいだろうか。
近づいてくるとスゴイかわいいんだけど、冷酷そうな雰囲気が漂ってるのがわかった。
海から出てきたはずなのに濡れてないし。年は15、6歳くらいだろうか。
普段の俺だったらビビってたんだろうけど、この時俺は何故か第一声で
「昼間はありがとう。助けてくれたんだよね?」
そしたら彼女はまさかの言葉に驚いたらしくキョトンとしてた。
不意をつかれたらしく冷酷な雰囲気や表情も消え去ってた。
改めて見てもやっぱり・・・思わず「かわいい・・・」
と呟くと、彼女は我に返って
「な、何を勘違いしてるのよ!?べ、別にあんたを助けたわけじゃないんだからねっ///」
とか、顔を真っ赤にして言うもんだから、思わず俺も笑っちゃって
「それなんてツンデレwww」とか言ったら怒っちゃって
「ツンd?よくわかんないけど、あたしはあんたを殺そうとしたの!今も!」
とか言うんだけど、顔はまだ真っ赤でさらにふくれっ面。
「てか、ごめ、全然怖くねぇやwだいたいそんなかわいい顔ですごまれてもw」
そしたら、まるで『ボッ』って音が聞こえるような感じでさらに彼女の顔が真っ赤に
「な、か、かわ・・・お、覚えてなさいよ///」
そう言うと彼女はダッシュで海へ消えていった。
俺はその後旅館に戻って布団に入るが、さっきのやりとりを思い出すと笑えてきてにやけてたが
いつの間にか寝付いてしまったらしく、こうして1日目が終わっていった。
2日目。
朝起きると友達2人はもう帰り支度をほぼ終えてた。
俺はまだ寝ぼけてたんで
「どうしたん?まだ3泊あるじゃん」
って言ったら青ざめた顔をして
「いや、マジやばいから。お前もほら、早く帰ろうぜ」
で、俺も目が覚めてきて昨日の事を思い出した。
「あの幽霊なら大丈夫じゃね?」
と言ってみたら
「お前・・・たぶんとり憑かれてるよ。早くお払いとか行った方がいいと思うぞ。」
どういう事か聞いてみると、どうやら昨夜俺が部屋を抜け出した後、ついてきたらしい。
で、浜辺で宙に向かって会話してる俺を見たんだと。
だから「取り憑かれてる」って。
俺は彼女が気になるから、大丈夫だと言い張り残ると言ったが友達は聞き入れず話は平行線。
結局友達は先に帰る事になり、俺一人が残る事に。友達が出発直前に
「向こうで霊媒師とか探してみるからヤバかったらすぐ電話しろよ」って。
これには少しジーンときたが。
ともあれこうして2日目からは俺1人のみとなった。
とは言え、1人で特にする事もないのでとりあえず昼間は浜辺でナンパ。
が、全て空振り。浜辺で声かけた子なんかはまだ普通に断られただけだがいいが、
海に入って声かけた子なんかは悲鳴あげて逃げ出す始末。
おかげで監視員から痴漢と間違われるし。
誤解は解けたがもう無理ぽ、と思って旅館に戻り部屋でゴロゴロしてるとどこからか笑い声が聞こえてきた。
「クスクス・・・クスクス」
俺はピンときて
「なぁ、いるんか?出てきてくれよ」
そしたら彼女が姿を現したので
「もしかして、さっきのってお前のしわざ?」
って聞いてみた。
「そうよ。だいたい昼間っから浜辺で不埒な事してるからよ。もっと困らせてあげるわ」
「もしかしてヤキモチ?」
「バ、バカ、ち、違うわよ!だいたいあたしは幽霊よ。あんななんかにヤキモチなんか///」
また顔を真っ赤にして反論するもんだから昨日の事を思い出して思わず笑ってしまった。
「な、何笑ってんのよ!」
「ごめんごめん。なぁ。」
「何よ。」
「幽霊って昼間でも出てこれるんだな」
「なんだ、そんな事?別に平気よ、昼間でも。まぁでも昼間に出ても波長の合う人にしか見えないけどね。」
「じゃあ夜だと?」
「夜なら多少の霊感がある人なら見えると思う。」
「へぇ。んじゃ俺とお前は波長が合うって事かw」
そしたらまた真っ赤な顔して
「ば、
ばっかじゃないの!?」
「ハハハ」
「だいたいその『お前』って言うのやめてくれる?あたしにはちゃんと・・・」
そこまで言いかけると彼女は急に黙ってしまった。
俺はなんとなく察して
「
生きてた頃、さぁ、何て名前だったの?」
って聞いてみた。そしたら
「・・・ミナ」
って呟いて教えてくれた。
「ミナ、かぁ。かわいい名前だね。俺もそう呼んでいい?」
そしたらミナはまた真っ赤になって
「し、しらない///」って。
「迷惑か?」って聞いたら「べ、別に!勝手にすれば!///」って。
「んじゃ、改めてよろしくな、ミナ」って言ったら
「あ、あんた馬鹿!?あたしは幽霊なのよ!・・・ばか・・・」
と残して消えてしまった。
俺は今夜また浜辺に行ってミナに会おうと決めていた。
最終更新:2011年03月05日 10:00