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とんとんと、誰か肩をたたく。
俺は振り向かない。振り向いちゃいけない。


昔はよく言われていたんだけど、みんな知っているかい?
誰もいない夜道を一人で歩くと、肩をたたかれることがあるそうだ。
そのときに、素直に振り向いてはいけない。それはきっと悪霊だからだ。
俺の友達のおじいさんが、振り向いてしまったらしい。
おじいさんは、それから死んでしまったそうだ。
まぁ、昔の話だ。


だから、俺は振り向かない。

とんとん

振り向かない。前を向いてひたすら進む。

ぽんぽん

指でたたくよりも、手のひらでたたかれている感じがする。
冷や汗が出てきた。はやく、この路地を抜けよう。早足になる。

ぽんぽん、ぽんぽん、ぽんぽんぽんぽんぽんぽん、だんだん!!

もはや、肩をたたかれているというより、どつかれているような状況になった。駆け出す。しかし…。

だんだん!! だんだんだんだんだんだんだんだんだん!!

路地が終わる。もうすぐ、逃げられる。

恐怖の終わりに安堵しながら、路地の出口を抜けた。


ふわりとした感覚を覚えた瞬間すさまじい、衝撃が体中を突き抜けた。

「まったく、人が止めているんだからとまりなさいよ!!」
俺は、今、説教されている。
「マンホールのふたが開いていて危ないからとめようとしたのに、ほんと馬鹿ね」
ごめん、俺、悪霊だと思って。
「ば、馬鹿ね、別にあんたのためじゃないわよ。死なれたら取り付けないじゃない」
そういって、悪霊(?)はそっぽを向いた。

俺はなんとか生きていた。足の骨折だけですみ、入院生活を送っている。
あぁ、そうだ。知り合いのおじいさんの話だが、実は98歳の大往生だったそうだ。
俺は悪霊(?)にとりつかれながら平凡な生活を続けている。


- 了 -
最終更新:2011年03月05日 10:02