今年もついに夏がさりゆく。
ツンデ霊たちとの宴もまたしばしの別れを迎える。
キーボードを叩く指になにか空しさを感じ、僕は窓の秋空を眺めた…

…え。

窓に手のひらのあとがあった。常識的に考えれば、自分の手の跡だろうと思いたいんだが。
跡が付いてるのは窓の上方。しかも、外側。加えて言うなら、指先を下にした不自然極まりないものだった。
どうやったらこんな所に、手のあとがつくんだろう?

(…右手のあとだよなぁ…?)手の跡の、親指の付け根で判断する。

気持ち悪いのでさっさと拭くことにした。
ちょっと手が届かなかったので、椅子を踏み台にして拭く。あ~面倒臭ぇ。
拭いて椅子からおりてまた、パソコンに向かい合う。
…と、窓が気になって見ると。

…あ。

窓に足のうらのあとがあった。常識的に考えれば、自分の足の跡だろうと思いたいんだが。
跡がついてるのは窓の下方。それも、外側。加えていうなら、僕の足より小さい不自然極まりないものだった。
どうやったらこんな所に、足のあとがつくんだろう?

(…左足のあとだよなぁ…?)足の跡の、土踏まずで判断する。

なんかわくわくしてきたのでもう一度拭くことにした。
今度は椅子を使わなくてすむのでそのまま拭く。
拭いて、パソコンに向かう…

振りをして窓を振り返った…あ。

おかっぱ頭の女の子が窓に張り付いていた。

(こえー、めっちゃこえー)頭の中はパニック症候群。期待通りの怪異に恐怖も最高潮。
身動きのとれない僕に、その張り付いているおかっぱ少女が口を開いた。

「お、降りれないわけじゃないのよ。でもちょっと手を貸してくれると嬉しいかも…」

その一言で冷静さを取り戻せた。よくよくみると少女は腰に紐をくくり張り付いていたみたいだ。
なるほど。今度は両手両足の跡をつけようとしたんだな。
上の階の住人かな?
「よっこらせ」両手で支えて、部屋に入れてあげる。
と、するりと紐も落ちてきた。間一髪。どうやらほどけたらしい。
「いたずらで死んだら、みんな悲しむよ」僕は少女をしかった。
つんと少女はそっぽを向いた。
「しょうがないなぁ、親御さんには言わないから、気をつけて帰るんだよ」

玄関をあけて見送る。
少女はバツが悪そうに出て行った。

で…その後よくよく考えた。僕の部屋はマンションの最上階。上に住人などいるはずもない。
首をかしげながらパソコンの前に座る僕は改めて、窓をみた。

窓には指で文字が書かれていた。

「期待するわけじゃないけど、来年もまた書くのよ。別に書かなくてもいいけど」
最終更新:2011年03月05日 21:45