姉さんが亡くなってからというもの、僕は泣いてばかりいた。
そんな姿に両親は失望も顕にしていた。
次期当主が潰えた、と思っていたとしても不思議ではない。

僕が、姉さんに寄せた思い。信頼・・・親が僕に向けた失望。
それだけが今は僕の周りに空気のように敷き詰められ、圧迫していた。

「姉さん・・・どうして」
「貴方が、当主になるためよ」
「・・・ねっ姉さんっ」

ベッドに突っ伏していた僕の背後に、見下ろすように立つ姉さん。
その目は蔑みに近い光を湛えている。

「いつまでそうして泣いているつもり?あの人たちは貴方を手放す気はなくなったよう
だけれど」
「い、生きていたの姉さん・・・」
「現実を常に見極めなさい。葬儀は行われたわよね。あれが茶番だったとでも?」
「い、いいえ」

ベッドに座り、姉さんを見上げる形で向かい合う。生前のままの姿だが・・・姉さんは
もういないのだ。

「貴方が当主たる存在になるために、私はいるの」

宣言する姉さん。両の手を僕の肩に置き、顔を寄せて囁く。

「どんなに辛くて泣こうとも、決して許さない。拒否もさせないわ。いいわね?」

僕は、頷いた。
最終更新:2011年03月05日 23:40