「ハァ・・・ハァ・・・もう、いやだよう」
私が、悪かったのだ。あれほど入ってはいけないと言われていた森に、興味本位で踏み入れてしまったがために追われることとなってしまった。
一体、どれだけ走ったのだろう。気が付けば、今まで走っていた道すらも無くなっていた。それでも、私を追う馬の足音は今も続いている。
ちらりと後ろを振り返ると、そこにはゆっくりと私の後を追う影が見えた。大きな黒い馬の上にまたがる鎧騎士。しかし、その首はあろうことか脇に抱えられていた。
――デュラハンの森には、近寄ってはいけない・・・近寄ったら最後・・・。――
あれほど、おじいちゃんやお父さん、お母さん、果ては村長にまで注意されていたのにそれを破ってしまった。私は、なんと愚かな事をしてしまったのだろう。
「ハァ、ハァ・・・も、もう・・・追ってこないよね?」
ふと気が付くと、さっきまで聞こえていた馬の足音が聞こえなくなっていた。ようやく休めると思い、樹に寄りかかろうとした瞬間だった。
――ゴス!――
私の真上に、剣が突き刺さった。
――いや・・・いやぁ・・・いやぁぁぁぁぁぁあ!――
あまりの出来事に、腰を抜かしてしまい。私は、動けなくなってしまった。
そんな私に、ゆっくりとデュラハンは近づいてきて軽々と片手で私を持ち上げるともう片方の手で、先ほど突き刺した剣を樹から抜き取る。
――も、もうだめだ。私は、殺されるんだ。お父さん、ごめんなさい。大切な杯を割ったのは私です。お母さん、ごめんなさい。寝てる間に髪を切ったのは、イタチじゃありません。やっぱり私です。
村長さん・・・むしろ代わってください。いつも、飴をあげるからといって人の体にベタベタと触ってこのロリコンめ!って、私殺される!!やっぱ、一発フルスイングで殴っておけばよかった!――
悔やんでも悔やみきれない思いに硬く目を瞑った私は・・・・・・・・。
「えっと・・・。あ、ありがとうございます」
なぜか馬に乗せられていた。
「まったく。あれほど、軽装でこの森に入るなといっていたのに、何の道具もなしにこの森を走り回るとは。しかも、領主である我を恐れて蛇沼まで一直線に駆けていくとは、失礼極まりないわ。
愚かにもほどがあるというものだぞ。我が、もう少し遅かったらお前は今頃蛇に丸呑みにされておったわ」
「め、面目ございません」
どうやら、私の真上に刺さった剣は私に襲いかかろうとしていた蛇を仕留めるためだったようだ。殺されなくてよかった。
「お主、何を落ち着いておる?まさか、巷に流れた変な噂を信じていたわけではなかろうな?まったく、つくづく失礼極まりないな。領主である我が、領民であるお主等を森に入った程度で殺すわけがなかろう。
その噂に関しては、我が名と爵位『デュラハン公爵』に賭けてないと誓おう。むしろ、こうして見回っているのだ。感謝してもらいたいものだ。まぁ、領主としては当然のことであるから、その言葉も無用といえばそれまでか。
お主、これに懲りたらむやみに森に入る出ないぞ?くれぐれも勘違いしないことじゃ。お主等が窮地のときには、必ず我が駆けつけてくれるなどといったことを考える出ないぞ?」
「えっと・・・それでも、見回りを怠らないんですよね?そしてら、助けてくれるのではないのですか?デュラハン様?」
「人の話を聞いておるのか?まったく、お主はじゃじゃ馬じゃのう。お、この木の実はなかなかに美味いのでもっていくがよい。甘いぞ。それに、病人にもよく効く。む、もうすぐ村の入り口じゃ。我は、まだ見回りがある。
すまないが、ここで降りてもらうぞ?村人に、何の通達もなく赴いたのではおどろかせてしまうしのう。娘よ、もう無茶をする出ないぞ。ではな」
―――どうやら、デュラハン様はいい人(?)のようです。――
最終更新:2011年03月05日 23:56