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sideA

最近僕はここに居る。

踏み切りの向こうに君が居る。
僕は君の所へ行けないけれど、君の姿を見るだけで、幸せ。

踏み切りの中に彼女が居る。
時折黄昏時に現れて、走る電車に、何度も何度も撥ねられる。
彼女の姿は普通の人には見えない。

最近気になる事がある。
踏み切りの向こうからでもわかる程、君の表情が暗い。
何か心配事でもあるのだろうか。
会話出来ればいいのに。

今日、ふらりと現れた君の背には、無数の鬼の影。
そうか、君もこちら側に来るつもりなんだね。
誰も君を止められないよ、背中の鬼が、君の姿を隠すから。
こちらへおいでと、僕は君に向けて手を伸ばす。

警報が響き、赤い警告灯が明滅し、遮断機が下がる。
鬼が哄笑して、君の背中を押した。
君は、虚ろな表情のまま遮断機をくぐった。
踏み切りで待つ他の人は誰も、君を見ていない。

もう少しで、君に触れられる。
なのに君はふと下を向き、絶叫してその場から逃げ出した。
またか、また彼女が邪魔をしたか。

無数の肉塊と、天を仰ぐ悲しげな生首が、何時の間にかそこに散らばっていた。
何度目かの電車が走り去った後、何時ものように彼女は霧散した。

ここは魔の踏切と呼ばれている。




sideB

私が死んで以来、ここは魔の踏切と呼ばれています。
と言っても、私以外に死んだ人は今の所いません。
死のうとして来る人はいますが、私の姿を見て勝手に逃げていくのです。
悲しむ人がいるとか後ですごく後悔するとか、余計な気を遣って私が脅して追い返しているわけではありません。

最近踏切の向こうに男の人が立っています。
悪霊と呼ばれる類らしいです。
死んだ後か、今から死ぬのかの違いだけだと思うんですけど、どうして生きている人ばかり追いかけるのかしら…。
…別に、意識してたり何時も見てるわけじゃありませんから。
最終更新:2011年03月06日 00:00