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もうすぐ夏休み。
もう一人の図書委員長に、事務的な確認事項をかねて、夏休みの予定を聞いてみた。
「別になにもないわ。いつもどおり、ここで仕事するだけ」
相変わらずの事務的な返答だ。
「じゃ、7月30日も、予定ないんだね?」
僕が確認すると、彼女は不審そうな表情を浮かべた。
「それが何?」
「その日、夏祭りなんだ。せっかくだし、一緒に行かないかなって」
なるべく不自然にならないように意識してみたが、態度に出たんだろうか。
彼女は眼鏡の奥で目を伏せると、ただ「ごめんなさい」とだけ言って向こうへ行ってしまった。



夏休みに入った。
図書室は学生に解放されているので、僕は毎日通っていた。
もちろん彼女も毎日顔を出している。
その日、図書室を閉める時間にたまたま二人きりになった。
しつこいかなと思ったけど、もう一度だけ聞いてみた。
「花火だけでも一緒にどう?」
「無理。…私、図書室と関係の無い場所には行けないから」
最後はポツリと呟いて、彼女はそのままふっと姿を消した。
彼女を傷つけてしまったことに、僕はようやく気が付いた。



7月30日になった。
あの日以来、彼女の姿は見えなくなった。
乱れた本棚や溜まった返却本の山がいつのまにか片付けられたりするから、一応図書室の中にはいるらしい。
僕はあの日から決めていた事を行動に移した。

すっかり日が暮れた。縁日の明かりがよく見える。さすがに喧騒までは届かないみたいだ。
「…無断で本を持ち出すなんて、あなたらしくないわね」
不機嫌な声が後ろから響いてきた。振り返ってみたが、姿は見えない。
「でも、どうして学校の屋上にいるの?」
「ここからなら見えるから」
丁度いいタイミングで、花火の打ち上げが始まった。
「…あ」
「へへ。どうしても一緒に見たいと思ったからさ」
次々と咲く大輪の花。やや遠いが、綺麗な光景はくっきり見えるから問題ない。
ちらりと後ろを伺うと、彼女は姿が見えるようになっていた。
花火の光に照らされた彼女はとても綺麗だった。


「はい、これ。勝手に持ち出してごめんなさい。こうでもしないと君を図書室から連れ出せないと思ったから」
「いいわ、今回は許してあげる」
いつものつんと澄ました顔で本を受け取る彼女。
「来年も一緒に見れるかな?」
僕が尋ねると、彼女はちょっとだけ上目遣いになって答えた。
「…規則を守らない人と一緒は嫌」
「ひょっとして、ちゃんと借りた期限内の本でも大丈夫なのかな?」
「…知らない」
彼女は顔を真っ赤にすると、慌てて消えた。
よし、明日さっそく確かめてみよう。
最終更新:2011年03月06日 06:22