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俺の浮気が原因で、すったもんだの挙句に離婚。妻は離婚してすぐの頃に病気で他界。
妻との間には息子が一人いるが、親権は妻方。彼女の死後はその両親が息子を引き取り、滅多に会わせて貰えない。
尤も、俺も責任職にあって帰りの遅い日々が続くので、『父親だ』と大きな顔をする事も出来ないが。

やもめ暮らしを始めた頃からか。年に数回、数十分から数時間、俺の周りの電化製品が異常を起こす日がある。
最初は携帯電話だったが、今では家電製品は当たり前、先日は飲み屋街のネオン看板までが異常明滅を起こした。

原因はわかっている。
どの日も、誕生日や発表会など、息子にとっての重大イベントがあり、
俺がその事を忘れているか知らないかのどちらかの理由で、妻の実家――息子へ連絡を怠った時ばかりだった。
元来気の強い方だったが怒らせるとこちらが謝るまで、
家事はきっちりこなしつつも一切無言、且つ背中しか見せなくなる彼女は、
死んでからパワーアップしているらしい。


今日も昼から夕方にかけて、家電製品が一斉停止した。
幸か不幸か日曜日。社会的影響は最小限に抑えられる。
アパート暮らしなので、他の家に影響が出ないように肌寒い雨の中、人気の無い公園で時間を潰す必要はあったが。
異常が収まった頃合に帰宅するとすぐPCを起動させ、今年一年生になった息子が通う小学校HPにアクセスする。
調べてみると、今日は運動会だったようだ。
と、突然ぶつん、とPCモニタが暗転した。部屋の照明もだ。
仕方ないので暫くそのまま待っていると、今回は僅か一、二分で回復した。
早すぎる事に逆にびくびくしながら照明を見上げると、何時の間にかそこに何かがぶら下がっていた。
妻の形見になってしまった、忘れ物のハンカチ。それで作られたてるてる坊主だった。
PCを再起動させ、もう一度小学校HPにアクセスし、よくよく確認すると、雨で運動会は翌日順延になったとある。
スケジュール帳を確認しようとしたら、見えない誰かにむしり取られた。
「わかったよ。無理にでも、一時間でも時間を作って応援に行くよ」
そう言うと、ぱちんと音を立てて、一度だけ照明が瞬いた。
『私は別にどうも思ってませんけど!あの子の父親は貴方だけなんですからね!』
だから会いに来いと、不機嫌に言いつつどこか気恥ずかしそうに振り返る生前の妻の姿を、ふと思い出した。
最終更新:2011年03月06日 07:20