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近所に祟り石という巨石を祀る神社がある。
ばあちゃんが信心深いほうだったので、俺も前を通るときには挨拶してた。

神社には昔から美人の巫女さんがいる。ただし視える人と視えない人とがいる。
視えても良い事はない。
巫女さんは大体いつも不機嫌だからだ。ついでにすぐに拳も飛んでくる。俺体験済み。

祟り石に悪さすると大怪我をするらしい。
その日は俺が直接悪さしたわけじゃない。
近所の糞ガキがその上から滑り落ちたのを抱きとめたものの、ガキの肘と膝が俺にヒット。俺転倒。その後ガキ逃走。まぁいいけど。

座り込んだまま肘が入った顎をさすってたら、巫女さんに見つかった。
「痛むのか?」
「唾つけときゃ治るよ」
「ふむ」
巫女さんは急にしゃがみこむと、わっしと俺の頭を掴んだ。
条件反射で何されるのかガクブルな俺だったが、気が付くと柔らかな唇が俺の顎に触れていた。
「他に痛む所は?」
「ななななないです」
本当は鳩尾とか腰とか後頭部も痛いです。
「今回だけの特別じゃぞ?」
唇に人差し指を添えて、悪戯っぽい微笑みを浮かべる巫女さん。
顎の痛みは消えていた。

数年後、神職として戻ってきた俺を「誰?」みたいな顔で迎えてくれたときはショックだったが。
相変わらず怒らせると恐ろしいが。
「なんじゃ、今日も子供の相手か」
「ボロ神社だから秘密基地扱いされてるからなー。いいんだけどさ」
「ふふ、だが御主が来てからは私も随分と楽をさせてもらっておるぞ」
そう言いながら、隣に腰掛けた巫女さんが肩に頭を預けてきた。
彼女の笑顔が得られるならどんな苦労もいとわない。
最終更新:2011年03月06日 08:14