小学校からの親友グループの俺達は、特に約束したわけではないのだが毎年同じ日に同じ桜の木の下で集まっていた。
しかし進学、就職や結婚など各人の都合が合わない事も増えた。
今年はどうやら俺一人…。
肌寒い夕暮れの空を見上げていた。
「ちょっと邪魔よ」
他の花見客だろう、高校生くらいの女の子が半眼でこちらを見下ろしていた。
いつの間にかうたた寝していたらしい。声を掛けられあわてて起き上がる俺。
彼女は不機嫌なまま脇に抱えていたレジャーシートを広げ、後方の連れに呼びかけた。
俺はそこから少し離れたベンチに移動し、彼女達がわきあいあいと花見を始める様子を眺めていた。
しばらくそうしていると女の子がぶすっとした顔でこちらに近づいてきた。
「アンタもこっちに混ざる?」
唐突に言われたため理解が出来ず「はい?」と聞き返してしまう俺。
「嫌ならいいのよあたしは反対だったしけどおじさん達がどうしてもってうるさいから声かけただけで」
一気にまくし立てる彼女。
「ああ、いや」
断った方がいいだろうな、そう思って言いよどむと彼女の眉間の皺がさらに深くなった。
「断ったらあたしの立場がないでしょう?それとも何あたしの誘いは受けられないって?」
「喜んでご一緒させていただきます」
仕方なくついていく俺。
家族親戚一同だろうか、年齢性別てんでばらばらの一団は快く迎え入れてくれた。
勧められるままに酒をあおり、弁当をつまみ、歌を歌い、一緒に騒いでいると寂しさが薄れていくのを感じた。
あの女の子だけは不機嫌なままだったけど。
「おい、起きろ!」
揺すり起こされ目を覚ました。
酷く寒い。
重い目蓋を何とか持ち上げるとそこには親友グループの全員がそろっていた。
「よ、良かった…」
全員が安堵の溜息をついている。俺は意味がわからずぼうっとしていた。
「お前このまま寝てたら死んでたぞ」
「え?」
周りを見回すがさっきの花見の一団はどこにも見当たらない。花見をしていた痕跡すらない。
さらに時間はとうに深夜を回っていた。
「変な夢見て心配になって来てみたけど正解だったな」
この場所に倒れている俺が幽霊に取り囲まれている、そんな夢を全員が見たらしい。
「女の子の声で『連れてってもいいの?いいのね?』とか念押しされるし不安になってさ」
で、連絡取り合ってみれば俺だけ連絡とれず、慌てて集まったとか。
「ま、こんな時間になっちまったけど、久しぶりに全員で花見だな」
そう明るく締めくくり、俺達は無事の再会を喜んだ。
翌々日、今度は昼間に一人花見。
お礼のつもりでジュースとお菓子を二人分準備して。
その夜の夢に出てきた彼女に「今日も一人で花見ってアンタ寂しい奴ね」とか言われて凹んだが。
でも夢の中で彼女はジュースとお菓子をしぶしぶっぽくもちょっと嬉恥ずかしそうにつまんでいた。
最終更新:2011年03月06日 08:29