夜な夜な壁がなる。
ゴッゴッゴッ。入居したその夜から怪異は続いていた。
3LDKで家賃8万。どっかの田舎なら当たり前だろうが、ここは都心だ。
ありえない値段。だが、飛びついた。
だから、後悔はしていない。もともと、仕事が忙しくあまり家にも帰らなかったから。
だが、リストラで家に長い時間いるようになり、この音に次第にいらだち始めた。
最初はヘッドフォンして寝ていた。だが、ゴッゴッゴッの異音が耳につき目覚めるとヘッドフォンはいつの間にか外れてベッド脇にある。
だったら音には音だということで、バスの聞いたメタルをかけながら寝ているといつの間にかデッキの電源が切れていて、異音で目が覚める。
異音は俺がおきたら止む。
畜生、こん畜生。無職だからって馬鹿にしやがって。
だったら原因を探ってやる。
そう考えるのは当たり前だろ?
俺は景気付けにビールを煽り、一服して気持ちを落ち着けて眠りについた。
正確には寝た振りをした。
ゴッゴッゴッ。薄目で音の出所を探す。ゴッゴッゴッ。耳を澄ます。
「そぉこだぁっ!!」勢いよく飛び上がり音の出所に隠し持ったトンカチを振り下ろした。
ボスっ。という鈍い音がして穴が開いた。
穴をのぞくと白いものがのぞいて…
「変態!!」思い切り頬を張られた。
「変態変態大変態!」トンカチで作られた小さな穴は内側から大きく押し広げられ白骨が現れた。
「エッチスケッチワンタッチ!!」と勢いよく叫んで出て行った。
放心状態の俺はそれをどうしようもなく、見送っていた。
と気がつくと、部屋の中がなんだか焦げ臭い。
「馬鹿っ!!早く消しなさいよ、変態!!」見ると白骨がバスタオルをまとってバケツを持ってきていた。
一緒に消火活動をいそしむ。
なんとか小火ですんだ。
「まったくあんたは、私がいないとだめなんだから」ぷいっと白骨はそっぽ向いてはき捨てる。
「え」
「ヘッドフォンしたままで寝てて首に絡ませたり、大音量の音楽で隣家の住民に迷惑かけたり、火を消し忘れたり」
「え」
「別にあんたのためじゃないのよ。周りの住民に被害がいくでしょ」とかいいながら白骨は両指をくねらせている。
「そのくせ、いきなり私の裸をみるなんて」そりゃ、一糸まとっていなかったけど…。
「仕方ないわ。これからきちんとあなたを躾けてあげる。」ズイッと顔を近づけてくる。
「勘違いするんじゃないわよ、壁から出してくれたお礼なんだから、あんたのことが好きなんじゃないから!!」
ずびしっと指を突きつけられる。
はらりとバスタオルが落ちた。
「へんたぁああああいい!!」バシッと大きな音がこだました。
その日から、俺の生活は規則正しくなった。
いま、俺はハローワークに通っている。やけに手の込んだ手作り弁当をもって。
最終更新:2011年03月06日 08:56