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うちの学校の怪談に、『かがみこさんのおまじない』というのがある。
曰く、合わせ鏡で呼び出した『かがみこさん』に贈り物をあげ、代わりに願いをかなえてもらう。
良くある怪談の亜流だ。下手を打つと鏡の中に引きずり込まれたり殺されるといったありきたりのオチもある。


で、性格にやや難有りの友人Aが、放課後に学校の踊り場の鏡でそれをやると言い出した。その結果。
「巫女さんじゃねええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
鏡の中に現れたやや古臭い制服の女子生徒を見てのAの感想が、暗い校内に響く。
結構美人だと思うがAが今問題にしているのはそこじゃないらしい。
「お前…相変わらず…」
幽霊だか何だかも、呆気に取られた顔してるぞ。
『えっと…用があったから私を呼び出したのよね?』
「いや、間違いです」
がっくりと肩を落としたAに代わり俺が事情を説明する。
『…成る程、加賀という名前か何かの巫女さんだと思ったと』
「そうそう、だから悪いけどお引取りを」
『バカにしてんじゃないわよ!!』
怒号と共に噴出したダークオーラに身体を押されて俺は転びそうになった。
因みにAは微動だにしない。自らが発する落胆オーラで打ち消しているようだ。
『いいわよ帰っても。その代わりそれは『願い事』扱いさせてもらうから』
こちらを見下し視線で女王様立ちした彼女の言葉に、意味が解らず聞き返す俺達。
「えっと、どういう事?」
『願い事叶えて欲しいなら何か寄越しなさい。そうね、あんた達のどっちか…じゃなくてあなた』
指名されたのは俺。
『帰って欲しいならあなたの命を頂戴』



「何その大胆告白!?」
『…え?』
俺より先にやや過剰反応するA。
「命ってつまりは人生でそれが欲しいって要するに『あなたと一生添い遂げます』って事じゃん」
ああ今日もよく飛んでるなぁ。
どうでもよくなってきた俺とは逆に、Aに慣れていない幽霊は狼狽しているようだ。
「つまりは逆プロポーズ!!」
『いや、ちょ、違っ…!?』
「畜生、確かにお前ら美男美女だよ!お似合いのカップルだようわあぁぁぁん!!!!」
泣きながら走り去るA。取り残された俺達。くそう、微妙な空気だ。
『…あの、そういう意味じゃないからね!!』
「うん解ってる。君みたいな可愛い子に俺は釣り合わないよな」
『可愛い…わた、私…っていや、そうじゃなくて』
頬を赤く染めて慌てている幽霊。ほんと可愛いのに…残念だ。
「それに俺、もう先約済みだから」
『は?』
きょとんとする彼女に、袖をまくって腕を見せる。はっと息を呑む彼女。
そこには全身に刻まれた呪いの一部がくっきりと浮き出ていた。
「奴に付き合わされて心霊スポットに突撃させられる事二桁。何故かいっつも俺がとばっちりで魂よこせって言われてさ。
まぁ君みたいな子だったら魂だろうとこっちから喜んで差し出したけど」
呪い同士が競合で打ち消しあっているのか二つ目以降はかなり元気に日々過ごしている事は伏せとこう。
「だからさ、今度可愛いアクセサリーとか持ってくるから今日はそれで勘弁してもらえないかな」
苦笑しつつ彼女にお願いしてみた。
『…わかったわ』
小さな溜息をつくと、彼女はくるりと背を向けた。



「よーし新しい噂を仕入れたぞ!今夜さっそくいざ突撃!!」
今日も元気に盛り上がるA。
「みこちゃんも準備はOK?」
『気安くみこちゃんって呼ぶなって何度言わせるのよ』
彼女のリクエスト、ペンダント風にあしらった小さな鏡を身に着けた幽霊は、俺の視線に気付くと今日もむっとした顔になる。
『あなたは私が護ってるから心配要らないわよ…プレゼントのお返しって言うだけで別に特別な意味は無いけどね!!』
鏡の幽霊らしく、彼女には呪い反射能力があるそうだ。
おかげで今は、俺に取り憑いているのは彼女唯一人だけ。
最終更新:2011年03月06日 09:56