安価『商店街の福引』

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1.俺には夢があった。それは何よりも優先されている。 俺には夢があった。どんな困難も排除して達成しなければならない。 俺には夢があった。決してあきらめることは出来ない。 2.俺がそれに興味を持ったのは小学校の高学年のことだったか。 いつ、その夢をもったのか。しっかり思い出すことが出来る。 それを実現させるために、どんな努力も惜しまず、行ってきた。 3.美容院に行き。 ブランドの服に見を包み。 それらのためにバイトもした。 たるんだ身体にしないように運動も欠かせない。 馬鹿になるわけにも行かないから勉強もした。 よく見られるために、偽りの自分を演じてすらいた。 4.いまや、地元では有名人だ。 俺が歩くと、女の子が振り返る。 クラスメイトの女子は顔だけじゃなくて、性格もいいねと俺を褒め称える。 それは決して、お世辞ではない。それは事実なのだ。 決してうぬぼれているわけではない。だって、それは俺の努力の成果だ。 それでも、俺の夢をかなえることは出来なかった。 5.俺にはライバルが居た。同じ目的をもったライバル。 名は佐久間謙治。 切磋琢磨し、磨きあった。 いがみ合い、お互いを蹴落とそうと、時には酷く幼い喧嘩もしたものだ。 学校も違う。携帯の番号も知らない。それでもまるで、惹かれるように俺たちは良く出会った。 6.いつしか俺たちは親友と呼んでも良い仲になった。 ライバルなのには変わらないが、自分を磨くために偽りの生活を続ける俺にとって、 唯一素顔の自分をさらけ出せる、そんな仲になっていた。 それはどうやら、佐久間にも同じだったようだ。 7.たまたま出会ったときは二人でクラブによく行った。佐久間はよくタバコを吸った。 親父からもらったと言う銀のジッポーで器用に火をつける。 肌に悪いから俺はやめろと言ったが。その仕草は様になっていて格好良かった。 そんな俺ら二人の周りには何人もの女が寄ってきた。 それでも俺らの夢をかなえることは出来なかった。 8.しかし、ある日を境に佐久間にはばったり出会わなくなった。 元々、それぞれのプライベートは一切知らなかった。 多少心配にはなったが、連絡する術は無い。 9.いい加減クラブに一人で行くのもなれた頃。 この頃になると、俺の名声はクラブ中に轟いていたらしく、話し掛けてくる女もめっきり減ってきた。 たまに話し掛けてくる女も俺の夢を聞くと離れていった。 タバコでも吸ってやろうかと、自棄になっていると、一人の女が話し掛けてきた。 俺の隣に来ると、妖艶な仕草でタバコを吸う。 他の女とは明らかに雰囲気が違う。 10.クラブに来るような女は馬鹿だ。俺のそんな思い込みを覆すように聡明でもあった。 女なんて、俺の夢を叶えるためだけに存在する。そんな俺の考えすら覆すように完璧な女だった。 夢とは関係なく、俺はただただ、その女に惹かれていった。 付き合ってくれ。俺からそう告げたのは出会ってから一ヵ月後のことだった。 11.良いわよ。と静かに微笑んだ、彼女はなぜか少し寂しそうだった。 その理由は俺には分からなかった。 それでも、彼女との時間は楽しかった。 一緒にいてただただ幸せだった。 幸子と名乗った彼女とはほぼ毎日会った。 家に帰れば携帯で2時間は喋った。 12.そして、ついに今日。俺は今俗にいうラブホテルと言うところにいる。 一足先に風呂からでた俺は備え付けのガウンに見を包みイスに座っている。 緊張でガチガチだ。それをごまかすため、幸子のタバコに火をつけてみた。 見よう見まねで一本に火をつけると思いっきり咳き込んだ。 そんな時フッと佐久間のことを思い出した。 今どこで何をやっているのか?まだ、夢を追っているのか? 夢を諦めつつある俺をみたら、佐久間はどう言うのか? 13.このまま逃げると佐久間に馬鹿にされる気がする。 タバコをもみ消すと、風呂から出てくる幸子を待つ。 真剣な顔をする俺をみて少し不思議そうな顔をする幸子。 14.「幸子、俺にはずっと昔から夢が有ったんだ。」 「夢?随分大げさね。」 そういいながら備え付けのライターで火をつける。 幸子のタバコは様になる。 「その夢を叶えるのには・・・、お前の協力が必要なんだ。」 「私の?何?取り敢えず、聞くだけ聞いてあげるわ。」 そう、ちょっと嬉しそうに幸子が微笑む。 良い女だ。 「子供の頃、深夜番組でみてずっと憧れていた・・・。」 「うん?」 小首を掲げて先を促す幸子。 「“女体盛り”、やらしてくれないか?」 15.緊張した。どんな女もこの瞬間逃げ出すから。 俺がどれだけ男としてのレベルを上げても、ココをクリアしたことは無かった。 今回は尚更。幸子に逃げられるのには耐えられない。 でも、それでもだ。この夢を諦めるのは、俺の人生を否定することになる。 16.「ふふっ。そんなこと?」 「そんなこと?馬鹿にするな。俺には人生すべてをかけてもいい夢だ!」 俺の夢を馬鹿にされて、頭に血が上った。すぐに我に帰る。 まずい!どうやって取り繕うかと考えていると・・・。 17.「良いわよ。どうすればいいの?」 意外な言葉。幸子からの肯定の言葉だった。 幸子は立ち上がると、自分のカバンから何かを取り出した。 また、俺のそばに戻ってくると、吸っているタバコをもみ消した。 佐久間!見ているか?俺はついに夢を実現できるんだ! 18.ガウンをシュルリと脱ぐ幸子。 均整のとれたキレイな裸だった。 一糸まとわぬ姿で、幸子はタバコを取り出すと、銀のジッポーで器用に火をつけた。 「夢、諦めてないみたいで、安心したわ。」 おしまい。 ----

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