安価『ほ』

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安価『ほ』 - (2008/12/05 (金) 00:44:50) の編集履歴(バックアップ)


「ほ……」
ほ?
「ほ……ほ……」
ほ?
うん。なんだこれ。
いきなり屋上に来てくれと言われ、腕を引かれて来てみれば、つれてきた親友はこの様だ。
今の「ほ」で九十三回目だ。なんとなく面白くて、数えてみている。
ただ、今日の俺は少し忙しい。何しろ三日ぶりの登校だったし、それに、とある変化で今日の俺はなにかと注目の的だ。
こいつが机のまわりの人だかりから解放してくれるようだったからついてきたものの、つれてきた本人がこれでは、こちらも困ってしまう。
「……ほ」
――九十四回目。
そしてこいつの「ほ」はまだ終わらない。ほ、ほってフクロウかよ。もしそうならもっと語尾を伸ばせ、らしくなるから。
けれどまあ、こいつが俺を呼び出したのも分からんでもない。
俺の体に起こってしまった事を考えれば、親友――おそらく俺にとってただ一人の――であるこいつが俺を連れ出すのはまあ仕方がないだろう。
休んでいた三日、こいつからはそれなりに多くの連絡が来ていたようだったが、俺からは一度も連絡をしななかった。
というよりも、できなかった。
「ほっ」
――九十五回目。
そんな風な状況で、きっと俺を心配したであろうこいつの前に「女」になった俺が現れたんだから、それは混乱だってするだろう。
だから、俺はこいつが落ち着くまで待ってやろうと思っていた、けれどだ。そう。けれど、だ。流石に一時間近くこんなんでは、こっちも困ってしまう。
――叩けば直るだろうか?
ふと頭にそんな考えがよぎり、実行に移そうとすると。
――壊れた。
当然、目の前のこいつが、だ。
「ほっ……ほ、ほ、ほっ……ほ」
あっ、百回目なんて考えていられる程度には、まだ余裕がある。
何故なら、こいつがこんな風にテンパるのはそんなに珍しいことじゃないからだ。
けれど、そんな俺の余裕も一瞬で奪い去られた。


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