「ほ……」
ほ?
「ほ……ほ……」
ほ?
うん。なんだこれ。
いきなり屋上に来てくれと言われ、腕を引かれて来てみれば、つれてきた親友はこの様だ。
今の「ほ」で九十三回目だ。なんとなく面白くて、数えてみている。
ただ、今日の俺は少し忙しい。何しろ三日ぶりの登校だったし、それに、とある変化で今日の俺はなにかと注目の的だ。
こいつが机のまわりの人だかりから解放してくれるようだったからついてきたものの、つれてきた本人がこれでは、こちらも困ってしまう。
「……ほ」
――九十四回目。
そしてこいつの「ほ」はまだ終わらない。ほ、ほってフクロウかよ。もしそうならもっと語尾を伸ばせ、らしくなるから。
けれどまあ、こいつが俺を呼び出したのも分からんでもない。
俺の体に起こってしまった事を考えれば、親友――おそらく俺にとってただ一人の――であるこいつが俺を連れ出すのはまあ仕方がないだろう。
休んでいた三日、こいつからはそれなりに多くの連絡が来ていたようだったが、俺からは一度も連絡をしななかった。
というよりも、できなかった。
「ほっ」
――九十五回目。
そんな風な状況で、きっと俺を心配したであろうこいつの前に「女」になった俺が現れたんだから、それは混乱だってするだろう。
だから、俺はこいつが落ち着くまで待ってやろうと思っていた、けれどだ。そう。けれど、だ。流石に一時間近くこんなんでは、こっちも困ってしまう。
――叩けば直るだろうか?
ふと頭にそんな考えがよぎり、実行に移そうとすると。
――壊れた。
当然、目の前のこいつが、だ。
「ほっ……ほ、ほ、ほっ……ほ」
あっ、百回目なんて考えていられる程度には、まだ余裕がある。
何故なら、こいつがこんな風にテンパるのはそんなに珍しいことじゃないからだ。
けれど、そんな俺の余裕も一瞬で奪い去られた。
「惚れたっ! たのむ、俺と結婚してくれぇ!!」
いつの間にか顔を真っ赤にしたこいつは、真剣な表情であり得ないことを叫びやがった。
え、なに? 俺に何をしてくれって?
突然のこの状況に思考が追い付かない。俺が朝おきたら女になっていたときより、混乱しているかもしれない。
そう、そうだ。俺は女体化した、そうしたら、こいつが惚れて、結婚を申し込んできた。
なるほど、そう言うことか。
うんうん。今の俺はなかなか可愛いから仕方ないな。
「ってなんでじゃあぁあぁぁぁぁ!!」
思わず一人ノリ突っ込み。うんやっぱり俺も混乱してるな。
「おかしいだろ? なんだお前いきなり結婚て。馬鹿か? ほんとに!
ここで付き合ってくれならまだしも、いやそれでも早いのに、それどころか結婚! ありえないから!
お前もっとこう、フラグたてようとは思わんのか? 好感度あげてやろうとは思わんのか?
恋愛をっナメるなあぁぁぁぁ!」
こんなんで終わり
最終更新:2008年12月14日 00:21