無題 2008 > 11 > 21(金)

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チャラッチャラ~♪ メールの着信を告げる能天気な曲が聞こえる。 待ち合わせ中の俺は少々面倒くさくなりながらも携帯を開いた。 「あれ・・・?」 メールの送信者は先輩だ。まさしく今、俺が待っている相手である。 約束の時間まであと、5分ほど。わざわざメールをしてくるということは遅刻かね? 『ワリィ、20分ぐらい遅れる。』 意味合い的には想定の範囲内,内容は想像の範囲外。 先輩はまず、遅刻はしない。しても5分以内。20分も遅れるなんて珍しいからだ。 『分かりました,適当に時間潰してます。早く来てくださいね。』 返信すると、ふーと一息つく。 俺が言う、先輩とは、俺が通う大学の一つ上の先輩だ。 男である先輩に言うのは失礼かもしれないが,かわいらしい顔と、行動が特徴的である。 そして、それに反するような傍若無人な振る舞いと, 高校時代に培ったという体育会気質が妙なアンバランスさをもっている。 そのゆえ、男女問わず,先後輩問わず人気のある人なのだ。 もうすぐでメールから20分経つ。 周りをざっと見回すと、さすがに土曜の夕方。 冬も深まり,だいぶ寒くなっているのに、こんな外でも待ち合わせらしき人物が多い。 俺と同年代ぐらいの2~3人組みが多いか。 おそらく飲み会があるのであろう。 そして,俺と同じように一人で待っている奴も多い。 中にはトレンチコートの襟を立て,口もとまでマフラーで覆っている奴もいる。 そんなに寒いならどこか中にでも入っていれば良いのに。 それはさて置き、未だ先輩の姿は見えず。 う~ん、珍しい。何かあったのかね・・・。 そんな時、トントンっと方を叩かれた。 振り向くと,さっきのトレンチコートが俺の後ろにいた。 「えっと・・・。」 どちら様ですか?と聞こうと思ったところでふと気がついた。 意思の強そうな二重まぶた。それでもどこか可愛いく見える目。 「せんぱ・・・い?」 トレンチコートの主はコクリとうなずいた。 「なんだ、もう来てたんですね。」 コクリ。 「随分遅かったじゃないですか。」 コクリ。 「じゃ、早速店にいきましょうか。」 コクリ。 「・・・。なんで、しゃべらないっすか?」 コクリ。 「先輩・・・?」 「・・・ううぅ。 うっせ!とっとと店に行くぞ!」 かたくなに口を閉ざしていた先輩の今日始めての声。 その口は甲高い声で随分と野蛮な言葉を発したのだった。 ふっ~。 先輩は俺の正面で紫煙を曇らせる。 顔は不機嫌極まりない。とはいえ、そんな時はそこまで怒っていないのである。 付き合いも一年となり、更に、ずっと目で追ってきた先輩。 しかも、割と単純な先輩を見切るのは簡単だったりする。 「で、どういうことです?」 先輩が、タバコ1本、ビール3口ほど、そしてもう1本タバコに火をつけたところで聞いてみる。 「あぁっ?」 不機嫌そうに煙を吐き出す。 「なにがだよ。」 そっぽ向いてビールにもう1口。 なぜか、ジョッキを両手でもってクピクピっと飲んでいる。 それだけ見ればいつも通りの先輩だ。 ただ、一つ。 致命的にいつもの先輩と違うところがあった。 う~ん。 でも見た目には対した違いは無いようにも感じる。 やっぱり可愛い人だったのだ。 そう、女性になっても大差ないぐらいに。 「なんだ、その目は。気持ち悪い。」 「言いますね・・・。相変わらず・・・。」 「お前が変な目で俺を見るからだ。」 「先輩を知っている奴なら誰だって見ますよ。気になってしょうがないですもの。」 「気にするな。」 「そりゃ、無理ですよ。」 「うっせい。」 「てか、先輩,童貞だったんですね。」 「・・・。うるせぃ・・・。死ぬか・・・?」 「殺気のこもった目で見ないで下さい・・・。怖いですよ。」 「おまえがしょうも無いことを聞くからだ。」 「涙目にもならないでください。ごめんなさい。」 「ううぅ・・・。」 そういって上目遣いで俺をにらみつける先輩は・・・。 すごく可愛かった。 少々特殊な家庭環境に育った俺は、それを他人に告げることはまず無かった。 小学校時代の話しだ。特に今更、思うところは無い。 しかし、その話しを聞いた奴は俺に同情する。 それが嫌だったからだ。 その点、先輩はさっぱりした人だった。 「ふーん。大変だったな。まっ、誰だって人とはところがあるんだ。そんなもんだ。」 まるで気にしていないようだった。 でも、それは表面上だけで。それから先輩は特に俺の面倒を見てくれるようになった。 それは俺に対してだけでなく、先輩は誰に対しても素っ気無くて、そして優しかった。 いわゆる・・・ツンデレ?使い方違うか? 誰に対してでも、それでも、俺は、その時から先輩に懐くようになったのだ。 「で、これからどうするんです?」 「ん~・・・。まぁ、なるようにしかならんでしょうよ。」 「そんなんでいいんですか?」 「いいさ。」 「まぁ、先輩がそういうなら好きにしてください。」 「お前さ,少しは俺に興味を持てよ。」 「先輩には昔っから、ずっと、十分、興味がありますよ。」 「・・・、そうかい。」 そんなあきれたようなセリフと共に、先輩はいつもように紫煙をくゆらすのだった。 その横顔が心なしか赤くなっているような気がするのは俺と先輩、どちらが飲みすぎたせいだろうか? 一通り呑んで帰宅する。先輩は酒が強い。それはどうやら変わっていないらしい。 酔った頭で今日聞いた話しをまとめてみる。 ・先輩が変わったのは昨日のこと。 ・肩ぐらいの長さの黒髪をポニーテールにしていた。(萌 ・洋服等は母親と,妹に用意されたらしい。 ・今は冬休み中なので、友達にはまだ誰も会っていない。 ・先輩はやっぱり可愛かった。 ぐらいだろうか。 ・・・。酔っ払っていることによりなんだがいらないまとめもした気がするが。 先輩はああ言っていたが、学校にいけば大騒ぎになること間違い無しだ。 そして、それを指をくわえて見ている場合ではないということも良く分かっている。 これはチャンスなのだ。 「さて、どうしようかね・・・。」 ----
チャラッチャラ~♪ メールの着信を告げる能天気な曲が聞こえる。 待ち合わせ中の俺は少々面倒くさくなりながらも携帯を開いた。 「あれ・・・?」 メールの送信者は先輩だ。まさしく今、俺が待っている相手である。 約束の時間まであと、5分ほど。わざわざメールをしてくるということは遅刻かね? 『ワリィ、20分ぐらい遅れる。』 意味合い的には想定の範囲内,内容は想像の範囲外。 先輩はまず、遅刻はしない。しても5分以内。20分も遅れるなんて珍しいからだ。 『分かりました,適当に時間潰してます。早く来てくださいね。』 返信すると、ふーと一息つく。 俺が言う、先輩とは、俺が通う大学の一つ上の先輩だ。 男である先輩に言うのは失礼かもしれないが,かわいらしい顔と、行動が特徴的である。 そして、それに反するような傍若無人な振る舞いと, 高校時代に培ったという体育会気質が妙なアンバランスさをもっている。 そのゆえ、男女問わず,先後輩問わず人気のある人なのだ。 もうすぐでメールから20分経つ。 周りをざっと見回すと、さすがに土曜の夕方。 冬も深まり,だいぶ寒くなっているのに、こんな外でも待ち合わせらしき人物が多い。 俺と同年代ぐらいの2~3人組みが多いか。 おそらく飲み会があるのであろう。 そして,俺と同じように一人で待っている奴も多い。 中にはトレンチコートの襟を立て,口もとまでマフラーで覆っている奴もいる。 そんなに寒いならどこか中にでも入っていれば良いのに。 それはさて置き、未だ先輩の姿は見えず。 う~ん、珍しい。何かあったのかね・・・。 そんな時、トントンっと方を叩かれた。 振り向くと,さっきのトレンチコートが俺の後ろにいた。 「えっと・・・。」 どちら様ですか?と聞こうと思ったところでふと気がついた。 意思の強そうな二重まぶた。それでもどこか可愛いく見える目。 「せんぱ・・・い?」 トレンチコートの主はコクリとうなずいた。 「なんだ、もう来てたんですね。」 コクリ。 「随分遅かったじゃないですか。」 コクリ。 「じゃ、早速店にいきましょうか。」 コクリ。 「・・・。なんで、しゃべらないっすか?」 コクリ。 「先輩・・・?」 「・・・ううぅ。 うっせ!とっとと店に行くぞ!」 かたくなに口を閉ざしていた先輩の今日始めての声。 その口は甲高い声で随分と野蛮な言葉を発したのだった。 ふっ~。 先輩は俺の正面で紫煙を曇らせる。 顔は不機嫌極まりない。とはいえ、そんな時はそこまで怒っていないのである。 付き合いも一年となり、更に、ずっと目で追ってきた先輩。 しかも、割と単純な先輩を見切るのは簡単だったりする。 「で、どういうことです?」 先輩が、タバコ1本、ビール3口ほど、そしてもう1本タバコに火をつけたところで聞いてみる。 「あぁっ?」 不機嫌そうに煙を吐き出す。 「なにがだよ。」 そっぽ向いてビールにもう1口。 なぜか、ジョッキを両手でもってクピクピっと飲んでいる。 それだけ見ればいつも通りの先輩だ。 ただ、一つ。 致命的にいつもの先輩と違うところがあった。 う~ん。 でも見た目には対した違いは無いようにも感じる。 やっぱり可愛い人だったのだ。 そう、女性になっても大差ないぐらいに。 「なんだ、その目は。気持ち悪い。」 「言いますね・・・。相変わらず・・・。」 「お前が変な目で俺を見るからだ。」 「先輩を知っている奴なら誰だって見ますよ。気になってしょうがないですもの。」 「気にするな。」 「そりゃ、無理ですよ。」 「うっせい。」 「てか、先輩,童貞だったんですね。」 「・・・。うるせぃ・・・。死ぬか・・・?」 「殺気のこもった目で見ないで下さい・・・。怖いですよ。」 「おまえがしょうも無いことを聞くからだ。」 「涙目にもならないでください。ごめんなさい。」 「ううぅ・・・。」 そういって上目遣いで俺をにらみつける先輩は・・・。 すごく可愛かった。 少々特殊な家庭環境に育った俺は、それを他人に告げることはまず無かった。 小学校時代の話しだ。特に今更、思うところは無い。 しかし、その話しを聞いた奴は俺に同情する。 それが嫌だったからだ。 その点、先輩はさっぱりした人だった。 「ふーん。大変だったな。まっ、誰だって人とはところがあるんだ。そんなもんだ。」 まるで気にしていないようだった。 でも、それは表面上だけで。それから先輩は特に俺の面倒を見てくれるようになった。 それは俺に対してだけでなく、先輩は誰に対しても素っ気無くて、そして優しかった。 いわゆる・・・ツンデレ?使い方違うか? 誰に対してでも、それでも、俺は、その時から先輩に懐くようになったのだ。 「で、これからどうするんです?」 「ん~・・・。まぁ、なるようにしかならんでしょうよ。」 「そんなんでいいんですか?」 「いいさ。」 「まぁ、先輩がそういうなら好きにしてください。」 「お前さ,少しは俺に興味を持てよ。」 「先輩には昔っから、ずっと、十分、興味がありますよ。」 「・・・、そうかい。」 そんなあきれたようなセリフと共に、先輩はいつもように紫煙をくゆらすのだった。 その横顔が心なしか赤くなっているような気がするのは俺と先輩、どちらが飲みすぎたせいだろうか? 一通り呑んで帰宅する。先輩は酒が強い。それはどうやら変わっていないらしい。 酔った頭で今日聞いた話しをまとめてみる。 ・先輩が変わったのは昨日のこと。 ・肩ぐらいの長さの黒髪をポニーテールにしていた。(萌 ・洋服等は母親と,妹に用意されたらしい。 ・今は冬休み中なので、友達にはまだ誰も会っていない。 ・先輩はやっぱり可愛かった。 ぐらいだろうか。 ・・・。酔っ払っていることによりなんだがいらないまとめもした気がするが。 先輩はああ言っていたが、学校にいけば大騒ぎになること間違い無しだ。 そして、それを指をくわえて見ている場合ではないということも良く分かっている。 これはチャンスなのだ。 「さて、どうしようかね・・・。」 さて、俺の悪いんだが、良いんだが分からない予想は見事的中した。 まさに,老若男女問わず,先輩の周りは大騒ぎだった。 そもそも、女体化は15~16歳に起こること多い。 それを超えてから、ましてや20歳超えてから女体化するのは大変珍しいことなのである。 それだけでも、人を集めるのには十分過ぎる。 加えて,あの容姿。 まさに可憐な美少女っと言ったところか。 人が集まらないわけが無い。 元から可愛い見た目とツンデレな性格。惜しいのは性別だけと俺が思っていた先輩が ついに女性としての性別を手に入れた以上、まさに向かうところ敵無し!っと言ったところか。 それはどうやら俺だけではなかったようで、 今まで以上に先輩の周りには人が。いや、男が集まっている。 気に入らない。 先輩のことを好きだったのは奴らより俺のほうが早かったはずだ。 このまま奴らに譲るわけにはいかない。 だって、俺の先輩なのだから。そうすると決めたから。 ---- 3限終わり、4限までの中休み。 校舎の間にある喫煙所に向かう。 禁煙の波に押され、うちの大学でも喫煙スペースは少ない。 その中でも特に、目立たず、人が少ないところだ。 先輩はその喫煙所を好んで使っていた。 そこには俺の目論見どおり、静かにタバコをふかしている先輩がいた。 ---- あの日からすでに一ヶ月の月日が流れた。 サークルが同じなので、会う機会は多かった。 がっ、二人っきりというのはまるで無し。 どうやらチャンスは自らの手で掴まなければならないようだ。 そんなわけで、授業がないのにわざわざ3限終わりまで居残りしたのだ。 「お疲れ様です。」 「あっ・・・。お疲れ様。」 「なんか、女っぽい言葉遣いになりましたね。」 「そうか?自分じゃよく分からんよ。で、なんで、いるの?」 「といいますと?」 「お前この時間授業ないだろう?」 「ちょっと野暮用で。そだ、これ。どうぞ。」 「缶コーヒー?どうした?」 「いえ。寒いですから。」 「ふ~ん・・・。まっいいか。ありがとう。」 「お気になさらずに。」 受け取った先輩は、やはりどうして、両手で缶を持ち、コクコクとコーヒーを飲みだした。 「タバコ。辞めたらどうです?」 「なんで?」 「肌に悪いらしいですよ。もう女の娘なんですから。」 「女の子って・・・。キモッ。」 「・・・。」 「肌に悪いのかぁ・・・。初めて知った。」 「らしいっすよ。」 「まぁ、今は特に必要性を感じないな。」 「そうですか?」 「そうだよ。」 そういいつつもみ消したタバコは、いつもより長めだったような気がした。 「なんか、二人で話すの久しぶりですね。」 「だな。なんか、最近いろんな人に囲まれて、疲れたよ。」 「しょうがないんじゃないですか?落ち着くまでは時間かかりそうですし。」 「まぁな・・・。珍しいんだろうしなぁ。」 「それもあるでしょうが。・・・。」 「ん?」 「なんでもないです。で、あれです。」 「なに?」 「土曜日暇ですか?」 「何だ、改まって・・・?特に予定は無いけど・・・。」 小首をかしげて不思議そうな顔をする先輩に萌えながらも、 なんとか一ヶ月ぶりの約束を取り付けることに成功したのだった。 冬の朝の日差しと青空は、まるでどこまでも続くようにさわやかで。 隣からは白い煙が漂う。とはいえ、それはタバコで無し。 今日はまた、とびっきり冷える。 はぁ~とやっても、ふっ~とやっても白い息が出る。 でも、心がピンとなって、なかなか心地よい。 何かを成すには良い一日だ。 そんな俺の隣で。 「さぶい・・・。」 白い息を吐き続ける先輩には情緒が欠けていると思う。 「寒すぎる・・・。」 「ちょっとは我慢してください。」 「寒い・・・。室内に。早く暖房の所に・・・。」 「いい天気じゃないですか。」 「天気と気温は関係ない。」 「体感温度には関係あると思いますよ。」 「そんなもんは、知らん。」 「てか、そんな格好してるから寒いんじゃないんですか?」 「・・・。うるさい・・・。」 生足、ブーツに短めのスカート。そりゃ。寒いでしょうよ。 久々の二人はやはり楽しかった。 何をしたわけでは無いが。 ぶらっと駅近くの店を回り、カラオケして、ラーメン食って。 それなりの覚悟と共に今日を迎えたはずが、気分は昔と何も変わっていなかった。 夜飯どうする?の先輩に、行きたいところがあると、地下鉄に乗り込む。 「おぉっ!」 「その反応は親父臭いのでは?」 「お前はいちいちうるさいヤツだね。」 「しかし、まぁ、イルミネーションだっけ?なかなか綺麗なものだな。」 「そうですね。」 クリスマスを目前に迎えた街では何処に行ってもネオンが輝く。 男と女が二人で灯りを見ることにはそれなりの意味がある。 少なくとも俺はそう思っているのだが。 「なぁ。」 「何ですか?」 「おまえさっ。変わらないな。」 「・・・?なにがですか?」 「いや、女になっても、お・・・私に対する態度が。」 「ふっ。」 「なに、笑ってやがる・・・。」 「そうですかね。少しは対応変えてるつもりですよ。」 「そうかね。」 「そうです。」 「・・・。いや、やっぱり変わってない。」 「何で言い切るんですか?」 「俺にはわかる。」 「“私”は辞めたんですか?」 「・・・社会人に向けての練習だ。気にするな。」 「へぇ~。」 「うるさぃ。そんなんはどうでもいい。・・・で、なんで?」 「なにが?」 「・・・。態度。」 「だって変わらないですから。」 「何が?」 「変わってませんもん。」 俺の気持ちは昔から。 思えば、俺は先輩が男だった時にはこの感情に正確な名前をつける事ができていなかっただけなんだと思う。 「だから何が?」 「気持ちが。」 「気持ち?」 「気持ちが。です。」 「どういう意味?」 今はちゃんとした名前をつけられる。 「好きです。」 「・・・。最近良く言われた。」 「ずっと前から。」 「それは・・・気持ち悪いな。」 「付き合ってください。俺と。」 「本気で?」 「本気で。」 くるっとこちらを向く先輩。随分小さくなってしまった。 でも、そのおかげで、俺の想いは大きく。はっきりとした形を持った。 にっと笑うと、タバコを取り出し、そして火をつける。 「今日。ずっと吸ってなかった。」 「知ってます。」 「コレが。うん。最後の一本にする。」 「何でですか?」 「“俺”にお別れするから。」 そういって、にっと笑う。 ふっと、紫煙がたなびき空に消えていった。 おしまい。 ----

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