安価『カルピス』☆

ピーカン照りの暑い日、あたしたちは蒸し風呂のような部屋で顔を突き合わせていた。
今年の夏は本当に暑くて、意識が朦朧とするようだった。そして、そんなあたしたちに窓から差し込む直射日光は、更に追い討ちをかけてくる。
「しっかしあっついわねー…あー、水月、喉乾かない?」
あたしから見ればあまり丈夫ではない水月を心配して声をかける。
「うん、だいじょいぶ…」
心なしかぐったりした水月はそう答える。勿論大丈夫そうには見えない。
「あんま大丈夫そうじゃないわね…無理しなくてもいいのよ、なんか持ってきてあげる」
「あぅ…ありがと…」
「いーのよ。下手な遠慮なんかしないの」
水月は、色々とあたしに負い目がある所為か、未だに変に遠慮をすることがある。
あたしがそれを気にしていないと言えば嘘になるけど、あの子には、そんなの気にして欲しくないのに…。
「うん…」
そんなやり取りの後、あたしは部屋を後にした。今は少し、水月の顔を見るのが辛い。
そんなことを考えていると、飲み物の準備は異様に時間が掛かった。
「やっぱり、待ってるかな…?」
そんな疑問を誰にともなく一人ごちる。答えはわかってる筈なのに。あの子の気持ちも知っているのに。

…私の気持ちだって、決まっているのに…。――あの子を手放したくなんか、ないのに…。

きっと、あたしは男には勝てない。水月はもう女の子なんだ。誰かあの子の前に男が現れた場合、あたしを忘れてしまうかもしれない。
信じてる。信じなきゃいけない。信じたい。でも――。

ああ、ダメだ。頭が混乱してる。そんな意味で投げ掛けた疑問じゃないのに、一度抱いた疑念は深みを増してあたしを襲う。あたしは、頭を二、三度振るって思考を放棄した。
考えても意味がない。そう必死に唱える。それすらも意味がないと知りながら…。

暑さとさっきまでの思考に酔って、ふらふらしながら部屋に戻った。
「あ、お帰り。遅かったね」
少し憔悴した顔で微笑みながら、水月が振り向く。

とくん…。

あたしの心臓が一つ、大きく脈打った。その表情が可憐で、愛らしくて、愛しくて…。その表情を、心を、身体を、全てあたしのモノにしたくて…。
「ああ、やっぱりあたしは水月が好きなんだ」ってことをまざまざと見せつけられた気がして、急に頬が熱くなっていく。
「ち、ちょっとね。確かあんたはカルピスと水、5:1でよかったわよね。全く、ほとんど原液じゃない。甘党にも程があるわよ」
赤くなった頬を誤魔化すためにやたらとペラペラ喋るあたし。
「だって、甘いのおいしいよ?」
「答えになってないわよ…はい」
「うん、ありがと」と、手渡そうとしたところで、あたしは手を滑らせてグラスを取り落とした。
「あっ…」
「ひゃっ!」
水月の肌が白い液体に汚される。
「あぅ、べとべと…」
「ご、ごめん!」
「うん、だいじょいぶ…」
「大丈夫じゃないわよ、シャワー浴びてきて。着替えも用意しとくから」
「うん…」
冷静に対処しながら、その実あたしは凄く興奮していた。カルピスを被った水月が、とても淫靡だったから。

磨りガラスの向こうで水の弾ける音が聞こえる。あたしは、
「着替え、ここに置いとくわよ」
と、声を掛けつつ服を脱ぎ捨てて、勢い良く風呂場のドアを開けた。染み一つない真っ白な水月の肌が目に飛び込んでくる。
「ぅ…?ぇ、ぁ、あ、あきらちゃん?!」
吃驚して目を丸くしていて、その白い裸身を隠そうともしない。無防備だなぁと思いつつ、あたしは水月を押し倒した。

「…んっ…ふぁ、や、やめてよあきらちゃ…ひゃうっ!」
口ではそう言いつつも、抵抗らしい抵抗がないので、あたしは水月の身体に触れていく。
すべすべの肌にぷにぷにの体躯、なだらかな胸に、その頂きにある蕾。そして…
「ここ、毛、生えてないんだ」
そのぴったりと閉じた縦筋に沿って指を滑らせる。
「や、恥ずかし…んぁっ!」
「ふふ、可愛い…」
更に胸の蕾に舌を這わせていく。
「ふわぁ…あぅ、んんんぅっ…あんっ…!」
あたしの指が、舌が這いずり回る度に水月はリズミカルに矯声を漏らし、ぴくぴく身体を震わせる。
そのまま指を這わせていると、そこは次第に熱を持ってとろとろ蜜を溢れさせた。
「わ、濡れてきたわよ…」
「だ、だって、あきらちゃんが弄るから…んっ?!」
言い終わる前にあたしは唇を塞いだ。それと同時に膣口へと指を滑らせ、中へ沈めた。
「んううぅぅぅぅぅっ!」
水月が今までになく身体を跳ねさせる。あたしは水月の口内を思う様堪能した後、唇を離した。つ――、と銀の橋が架かる。
「もしかして、指入れただけでイッちゃった?」
「はぅ…う、あぅ…」
焦点の合っていない目でボーッとあたしを見つめる水月。どうやら頷く気力もないらしい。
「中もとろとろだし…そろそろいいかな?」
『それ』を取り出しながら呟く。どうせ聞いたところで返答が返ってくるのは期待できないので、これは独り言だ。
水月の頬をぺちぺちと軽く叩きながら問いかける。「水月の初めて…あたしが貰っちゃう、わよ…?」
若干意識を取り戻した水月は、あたしの股間に生えた『それ』、所謂ペニバンに若干怯えた顔を見せつつも、すぐに決意した顔を見せて、一つ頷いた。

くちり。膣口にそれを押し当てると、甲高い水音が鳴った。
「それじゃ、いくわよ…」
「うん…」
ぎゅっと目を閉じて、あたしの首に絡められた腕に力が入る。
「…怖い?」
「うん…でも、ボクは大丈夫だから…つ、続けて?」
「わかった。ダメなら早く言うのよ、すぐにでもやめるから」
そして、あたしはゆっくり腰を進めていった。少しづつ、『それ』が埋まっていく。
「んっ、痛ぁっ…ああっ…!」
やめてと言わないことをいいことに、そのまま続けて行く。すると、すぐにそこに辿り着いた。水月の、純潔を表す部分に。そして、あたしはそこで一度侵入を止めた。
「…はぁ、は…んうぅ…」
相変わらず荒い息を吐いている水月は、あたしの目を真剣な眼差しで見つめて、こくりと頷く。一息にやれと言いたいらしい。あたしはそれに頷き返し、一気に貫いた。
「あっ!ああぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」
唐突に最奥まで届いたそれに、水月は大きな声を上げる。そして、股間からは破瓜の血が一筋、流れ落ちていった。
「はぁ、はぁ…は、挿入った、わよ…」
胸が早鐘のように脈打つ。息が苦しくて、何がなんだか分からない。でも、あたしはその中に充足を感じていて、何かが『填まった』ような感じがした。

「あ、あきらちゃん…いいよ、動いて…?」
しばらくそのままでいると、水月がそう告げてきた。
「わかった。…でも、あたしもう我慢なんか出来ないから、水月を、滅茶苦茶にしちゃうから…」
「いいよ、あきらちゃんなら…ボクを、滅茶苦茶に…して?」
その言葉を聞いた瞬間、あたしの中で何かが弾けた。そして、遠慮会釈なしに抽挿を開始していった。
「ふわっ…ん、んうぅぅぅぅぅぅぅっ…ひゃん…っ!」
まだ痛みの多分に混じった甲高い声が、どこか遠くから響くように聞こえる。それすらも愛しくて、水月を抱く腕に力を込める。
「ふぁ!あっ!あぅっ!」
膣奥を叩く度に漏れる刹那気な声を聞きながら、ただただ出し入れを繰り返す。気付けばその声には甘さと艶が混じり始めていて…。
「ひゃ…ん、んっ…あ、ああぁぁぁああ!」水月の膣奥からこんこんと溢れてくる愛液が、血を洗い流していく。
「あっ、あきらちゃん…ボク…ボク…も、もぉ…」
次第に声は切羽詰まったものへと変化していって…。
「イッて!…ほら、水月の恥ずかしい顔、あたしに見せて!」
腰の動きを更に激しいものへと変え、ラストスパートをかける。
「ふぁ…ぅ…んんぅぅっ!…イッ…イッちゃ…あぁぅっ!」
「あっ!あっ…い、イく、ひく…あ…ああぁぁぁああぁぁぁ――っ!!」
水月の身体がびくびく痙攣し、そしてぐったりと倒れ伏した。あたしは水月と身体を入れ換えて胸の上に乗せ、しばらく頭を撫で続けていた。

「ごめんね――……」
お風呂から上がって、水月の長い絹の黒髪を鋤きながらぽつりと漏らす。
「うぅん、あきらちゃんは気にしなくていいんだよ?賭けはボクの勝ちだし…」
満面の笑みでそう答える水月。
「へ?え…か、賭けって、なによ?」
笑みを変化させる水月。そう、まさに悪戯が成功した子供みたいに。
「あきらちゃんがボクを抱いたらボクの勝ち、って」
「え?!そ、それって…」
その言葉に狼狽えるあたしを余所に、だからね、と人差し指を立てて解説を始める水月。
「気付いてたんだ、あきらちゃんが女の子になったボクを受け入れきれてないって。
スキンシップはあっても、抱かないのはそういうことなんだな…って。
だから、きっかけを作ろうって考えた。チップはボクの身体。そしてボクは見事賭けに買って、あきらちゃんの心を手に入れた。
…ごめんねっていいながら、満足そうにしてたしね。どぉ?」
どこか間違ってる?と続ける水月。やられた。あたしは水月の手のひらで踊ってたわけか。
「完全にあたしの負け。ホントあんたは賢いわねー」
あたしは嬉しそうに笑う水月を後ろから抱き寄せて、その頬にそっと口付けた。


そうだ、あたしは怖かったんだ。変わってしまった水月が、周囲の目が、何より、変わってしまいそうになるあたしの心が。
だから一歩踏み出せずにいた。水月との、甘い恋人ゴッコを壊したくなくて。
でも、その一歩を踏み込んだ今ならわかる。なぁんだって言えるくらい簡単なことだったんだ、って。
今の関係は、今までよりももっと甘くて、優しくて、そして爽やかだと思う。それは、水月の好きなカルピスみたいな、そんな感じなんだ。

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最終更新:2008年06月14日 09:48
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