クロス『華の色香』

104 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/07/11(金) 03:00:56.10 ID:bBUQdby+0

女体化というのはこの星に関わらず、様々な世界の文化に広がり問題と繁栄を残している。人間というものは持ち前の 知識でこの女体化を自らのものと取りいれ様々な生活を模様しており、世界によっては長く撲滅と発見を繰り返しながら 女体化と過ごしてきた、通常の世界とは違って遠く果てしなく遠い次元の狭間、幾多なる世界が連なる中で太陽があって 他の惑星がある・・これはそんな世界のお話。

「ふぅ~、終わった終わった」

「お前はいいよな楽天的で、俺なんて今日のテストは散々だったぜ。天才の余裕って奴か?」

「おいおい、俺はいっつもお前の家庭教師をしているからこんなテストぐらいでも成績はぐらつかないだろ」

「ま、まぁな・・」

とある放課後、教室内でただ他愛のない会話をする2人の男女・・2人の名は男の方は中野 翔で女の方は相良 聖。 現在高校2年生を真っ只中、何処かで聞いた名前だと思うのだが知っているお方は目を瞑って欲しい、どこかの世界に 似ているのか聖は今流行の病であるこれまた偶然見事に女体化を果たした人物である・・にも拘らず意外にも2人の 因縁は中学時代にまで遡り、聖の方は今の外見とは裏腹に筋骨隆々で今までの喧嘩は負け知らず。

常に1人で数々の修羅場をくぐり抜けていた事から頂戴したあだ名は“血に飢えた狂犬”当の本人はこのあだ名を 大変気に入っており女体化した今でも度々語っているほどだ。対する翔のほうは聖とは真逆に容姿端麗で 成績優秀、身体の方もどちらかと言えば華奢な方でそういった類は全く当てはまらないと思われるのだが・・これまた 彼も中学時代からガチの殴り合いを日常とし、持ち前の頭脳と人脈のお陰で見事に信頼を勝ちえながら仲間を 増やして素人や筋者を問わずに絶えず喧嘩をしてきた経歴を持ちこれまた頂戴したあだ名は“殺戮の天使”また その華奢な見た目とは違って力の方もそれ相応以上ににあり、集団や単独を問わず様々な修羅場をくぐり抜けていた。

こんな2人が対峙するのはもはや時間の問題なので、その喧嘩は数々の伝説となって今なお語り継がされているの だが、肝心の決着の部分は常に誰かの邪魔が入ったりしていたので今日に至るまで未だについてはいない。

ただ2人に共通しているのが暴走族やチームといったそういった界隈ではお馴染みの存在は気に入らないようで誘いを断っている。

105 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:02:35.28 ID:bBUQdby+0

「しかし女体化するとなんか妙に変な感じがするんだよな?」

「ほー、どんな感じだ?」

「口で言ったってわかんねぇよ。ただ男の時はこんなことなかったんだけどな・・」

2人が付き合うきっかけとなったのは聖の女体化、詳しく語ると面倒なので割合するが様々なドラマを経てこの2人は 心と心から結び合える存在となったのだ。特に聖の女体化はかなりの衝撃で今まで男としての力がまんま女に 変換されていると言っても過言ではない、女性なら誰もが羨むスラッとしている長い髪に化粧を全くしていない スッピンの状態でも透明感があって艶のある肌やすらっとした顔つき部位のほうもバランス良く配置しており、 スタイルの方もどこぞのモデルにも引けを取らないぐらいに見事に整っている。

女が羨み男にとって極上のご馳走に見える聖が一度街を出ればナンパやモデルアイドルと評したスカウトは当たり前で 休む間がないぐらいなほど、しかし力の方は普段の男性の“それ”を明らかに超えておりまず不可能。加えて女体化し てから習得した合気道はもはや師範代級の実力を通り越しているのでそこら辺の筋者でも笑って倒せてしまうぐらい。

もっとも最近は周りの助言もあって本人なりに自重はしているつもりだが攻を奏しているのかは分からない・・

だけども翔と付き合うようになってからはそういった手合いは随分激減したと本人は言っている。それに女体化は 聖の肉体はともかくとして精神的にも様々な変化をもたらす、今まで孤立一辺倒であった聖にも心を許せる友人と 言う存在が出来て男時代によって常に荒れていた精神は徐々に安定の兆しを見せており今では女性特有の 仕草や男時代とはまた違った性格を会得している、このように女体化と言う病のお陰で自分を変えられたかなり 良い例であろう。

106 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:03:37.56 ID:bBUQdby+0

「ま、別にどうでもいいんだけどな。それよりもお前体力テストで握力はどれぐらいだったんだよ?  俺なんて62・65で女子の中ではぶっちぎりだったぜ」

「もはや化け物クラスだな・・」

「うるせぇな!! 本気出せって言われたからこんな数値になったんだよ!!!  だけども男の時と比べて格段に落ちたけどな・・」

「あのなぁ、それだけあれば並の野郎なら何もせずとも充分に倒せるだろ」

「まぁそうだけど、俺達みたいな野郎だとこんな軟な力じゃ足らねぇんだよ! それよりもお前の数値教えろ」

内心で少し苦笑しながらも翔は彼女の変わらぬところに笑みを浮かべる。長年の宿敵であった聖をここまで愛せる のは何も卓越している容姿だけではない、心の底から聖を愛しているからこそ何ら抵抗もなくここまでやってこれたのだ。

107 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:04:45.11 ID:bBUQdby+0

「俺は99・91だったな。意外にも左の方が強かったからびっくりしたけど・・」

「お前左利きだったのか? これからぎっちょ野郎だな!!」

「うるせぇ! これでも昔は右利きだったんだが小さい頃から両利きにやれるように矯正されたんだよ。 今では両手でペンも持てるし食器だって両方でやれる」

「それでもお前はぎっちょ野郎だ!! 右が圧倒的に上な典型的の俺様にひれ伏すがいい!!!」

「へいへい」

「あっ、適当だな!! その身に後悔させてやる!!!」

「おいおい、誓ってやるから格闘技だけはやめろ!!!」

適当にじゃれ合いながら2人は幸せという麻薬にも似た甘美な感覚を心いくまで楽しむ。 ちなみにこのときの翔のダメージはいつもの容量で反射的な手加減もあって大した事はなかったのだが、常人から すれば1日は学校を休まなければならないものだったらしい。(本人談)

108 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:05:32.45 ID:bBUQdby+0

翌日、いつものような日常が繰り広げられる中で学校内では様々なドラマが潜んでいたり展開されている。

「でだ、俺はこれからの進路はどうすれば良いのかよくわかんねぇんだよ」

「あんたね・・そういった事は進路の先生に聞くべきであって私が分かるわけないでしょ」

「おいおい俺はこれでも悩んでいるんだぞツン・・」

「はいはい、立派な悩みね」

聖は隣のクラスに移動して友人の一人であるツンといつもの日課である些細な会話を楽しむ。元のきっかけは ツンの彼氏を救ったのがキッカケで仲良くはなり続いている、聖に関しては同姓の好なのか話をよく聞いて投げかけて くれている良妻賢母(?)だ。恒例となった聖のはちゃめちゃな提案にも顔色悪くせずいつもの口調で話を切り出す。

「悪いけど私はあんたのアドバイザーじゃないの。そうね・・主婦なんてどう?」

「俺が主婦って・・でで、出来るわけねぇだろ!!」

「そう? 何だかんだ言っても飽きもせずに彼氏と一緒にいるし私から見てもあんた意外と家庭的よ」

「そっ、そうなのか?」

“所帯持てば落ち着くでしょ・・”っと心の中で呟きながらツンは机の上に置いていたペットボトルに入っている自家製の いちご牛乳を一口飲みながら一息つける。 この隙に聖はツンにも自分と同じようにそういった話を持ちかける、これでも友人をしているのだから何が弱点なの かも心得ているものだ。

109 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:06:15.21 ID:bBUQdby+0

「そういや内藤はここ最近は強くなっている。ドクオも並んでいるしな」

「あんたの指導もあってめきめきと伸びているのは確かなようね」

「まぁ、あっちの方はまだまだ見たいだけどな」

「なっ・・あんた!! 何言ってるのよ!!!」

「フフフッ、その態度だと図星みたいだな」

先ほどの立場から一気に形勢は逆転、女揃えばなんとやら・・もはや身も心も女性として染まりつつある聖にツンは 内心は苦笑しつつも友人とはいえ女の戦いは負けられないもので尚更、生まれて女の歴は聖よりもツンのほうが ずっと長くそういった事も手馴れてる、イチゴ牛乳をがぶ飲みしながらツンも負けてはいない。

「でも、あんたその後はちゃんとしてないように見えるけど。私達みたいにしっかりしないと後で困るものよねぇ」

「こ、こっちだってなぁ!! 底ナシで・・てててっ、テクニックは凄いんだぞ!!!!」

「こここっ、こっちだって相性は抜群よ!!!! そ、それに私はブーンが一番的な・・」

「ま、まだまだ俺達には・・」

傍から聞くときわどいを通り越していっている2人の会話であるが当の本人は女の戦いと称している。 次の授業が始まるまでの10分余り・・周りの生徒は沈黙したりするもの、他の人と話をして気を紛らせるもの、その ままあたふたしながら時間の経過をただひたすら待つものなど三者三様で結局話は平行線と辿ったまま決着は つかず、そのまま当人達はいつもの日常で幕を閉じる。

110 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:07:29.31 ID:bBUQdby+0

次の授業は数学・・後少しでお昼になるものだが、毎回この時間になると翔は卒業と単位のために参加は しているのだが、彼女である聖の席は空白だ。どうも聖は昼前の授業になると必ずサボってどこかへ散策するのが 恒例となっているようで、こんなことも今に始まった事ではない。それに彼女が毎回こうして学校の授業に参加して いることが奇跡に近いものだった。

数学の担当でもある女教師鈴木はいつもの光景とはいえ、言葉より先に溜息が出てしまう。

「相変わらずこの時間は欠席なのね。全く困ったものだわ、それじゃこの式を・・中野君」

「(毎回この時間になると高確率で俺が指されるのは何でだ?)は、はい。xイコール・・」

これも宿命である、聖はと言うと自由奔放にしながらのんびりと屋上で空を見上げている。最初の頃は屋上にいる 不良達が様々な手段で聖に襲い掛かったのだが当然返り討ちにあい、全員が惨めなぐらいの姿にさせられている。 それに彼氏もかなり名が通っているのでここ最近は聖に喧嘩を売る輩はそうそういない。そんな自由気ままで 退屈な生活を送っている聖にある男子生徒が目に付く、その顔は良く見知った顔だった。

「おっ、辰哉じゃねぇか! お前、自分の彼女放ってだしてこんなところで何してるんだ?」

「さ、相良さん!!」

首のほうにやや噛み傷が目立つ子の青年の名はは木村 辰哉・・歳は生達よりも一つ下で彼もまた女体化経験の 彼女がおり自分達になりに絆を深め合っている。

辰哉は突然の聖の来訪に驚きつつもこの屋上にいる理由を語り始める。

112 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:08:07.48 ID:bBUQdby+0

「屋上にいる理由は・・まぁ、聖さんと同じ理由です。それよりも中野先輩は?」

「あいつなら真面目に授業受けてるよ。全く授業だけじゃあつまらねぇんだよな」

「(俺はちゃんと自分の単位や出席日数を計算してるからいいけどこの人は毎日ここにいるからな)ハハハ・・」

辰哉は自分の計画と聖を照らし合わせながら少し苦笑しながらものんびりと空を仰ぐ、本音を言うと彼にとって 聖と2人きりでいるのは非常に気まずく後々の事を考えても余計な誤解を産んで自分の身を滅ぼしてしまう可能性を 秘めているのだ、今の自分の彼女とその彼女が慕っている聖が自分の目の前に立たれたら動けなくなるのは必然だろう。

「それよりもあいつは授業なのかよ? 俺みたいにサボれば良いのに勿体ねぇな」

「ああみえても狼子の場合はそこら辺が厳しくて結構進級が危ぶまれているんですよ」

「それだとまるで俺が怠け者みたいだな・・」

「い、いえ!! 相良さんは相良さんでちゃんとやってると俺は思いますよ・・」

慌てて聖をフォローしながら辰哉はホッと一息をつく。自分はもう既に彼女がいるのでそういった面では普通に耐えら れるのだが、やはり普段から世話になっている先輩の彼女となると別の意味で緊張してくる。

114 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:09:59.29 ID:bBUQdby+0

「そういや最近は狼子に構ってやってなかったな。よし、明日でもいいから少し貸せ」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 仮にも俺の彼女ですからここは・・」

「おいおい、女同士の付き合いを妨害するのか? てめぇだってあいつと遊んでいるらしいじゃねぇか」

「そ、それはその・・」

「まぁそんなに心配するな。別に取って食おうとは思っちゃいねぇよ」

「・・・」

安堵していいのか解らない辰哉であった。

117 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:11:00.58 ID:bBUQdby+0

「てなことがさっきあったんだよ」

「何だよ、別に大した事ないじゃないじゃないか」

「そうなのか・・」

所変わってここは2年生の教室、辰哉と喋っているのは彼女の月島 狼子。 彼女も女体化経験者ではあるのだが、彼女のとは他の人と一味違ってファンタジーを象徴させる獣耳と尻尾が 生えている、彼女のこの症状は医学的には女体化によって引き起こされた突然変異であり確率的にも1万人のうち 1人出るか出ないかのものだ。

この国にも彼女と同じ突然変異の女体化者の存在を確認している、だけどもそれ以外は人間と何ら変わりないもの なので彼女なりにそれなりの生活を営みながら日々を楽しく過ごしている、ちなみに彼女も男時代の頃はそっち系 だったので男時代の名残が未だに残っている。

「俺も考えて見れば聖さんと最近遊んでなかったな」

「まぁ、狼子がそれでいいなら俺は別に構わないけど・・あの人と一緒にいるとなんか緊張するんだよな」

「何でだよ? あっ、お前いつ殺されるかと思ってるんだろ。馬鹿だなぁ」

「そんなわけないだろ。自分でもよく解らないけどな」

彼らの出会いは辰哉がたまたま翔と仲が良かったという繋がりから始まる、辰哉がまだ入学して間もない頃に翔が 色々と面倒を掛けていた頃からなり崩してきに付き合うようになり、今では先輩と後輩と言った感じを通り抜け一種の 兄弟みたいな感じで2人とも家庭環境かすこぶる似ていたのでそれもあってか仲良くなった要因ともいえよう。

それに狼子のほうも中学時代から聖に憧れを抱いていたのもあったので2人の関係もすこぶる良好だ。

118 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:11:53.19 ID:bBUQdby+0

「それよりもあの2人は凄いよな。噂じゃ一緒に住んでるって言うぐらいだし・・」

「俺達だって家族ぐるみで付き合っているようなもんだし似てるじゃん。俺達は俺達でいいんだよ」

「辰哉の癖に生意気な、ちょっと噛ませせろ!!」

「いでででででで!!!!!!! やっぱり俺達はこうなるのかぁぁ!!!!!!!!」

これも1つの愛情表現・・だと思いたい、いつの時代でも女は強し、男は黙って耐えろは続くのかもしれない。 狼子が辰哉に噛み着くのもクラスメートにとって見れば日常と一緒なので誰も突っ込まず背景の一部として 成り立っている、これも幸せか。

「いででで・・あっ、刹那ちゃん」

「黙れ! 殺すぞ!!」

「こらっ、前にも言っただろう。ちゃんと挨拶しろって」

「・・うん」

突然現れたのは人形みたいな綺麗な容姿を持つ女性の名は円城寺 刹那、この前にこの学校に転校してきた 女子で狼子とは色々問題があったものの友人としての関係を築いている。成績は優秀であるがやや語尾に問題が あるので転校初日から周りに一歩置かれた状態で敬遠れていたのだが、狼子や辰哉の尽力によりクラスメートの 立場を守っている、突然現れた刹那に狼子はじっと見つめると何やら一計思いつく。

120 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:12:42.95 ID:bBUQdby+0

「そうだ!! 今度聖さんと会うときに刹那も連れて行こう!!!」

「「!!!」」

突然の狼子の提案にたじろく2人、同姓の友人がまだ少ない刹那のためをと思い狼子はこの案を思いついたのだが 辰哉にはある懸念が頭に思い描かれる。

「お、おい・・大丈夫なのか? 相手はあの相良さんだぜ。そんじょそこらの女とは違うんだぞ?」

「大丈夫だろ。あの人は男には手を上げるけど女性には優しいぞ。俺なんていつも優しくしてもらってるんだ」

“それは狼子だからだろ・・”っと内心少し毒つきながら辰哉は平静を何とか装う。狼子の言っている事は紛れもない 事実で聖はああ見えても男性に対しては何ら躊躇なく腕を振るうが女性に対しては絶対に振るわない、しかし辰哉は 前に翔との会話で聖についてこんな事を言われた覚えがある。

“前にな、あいつ女と揉めた事があったんだよ。 その時は俺はボロボロで立つのもやっとだったが、あいつは何ら抵抗もな女にご自慢の合気道を披露したんだよ。

多分あいつは何かあったら同姓に対しても拳を振るうぞ・・”

その時は辰哉も冗談混じりに笑いで返したが、あの言葉を思い出してしまい後の地獄絵図をくっきりと思い浮かべて しまう・・そんな辰哉を他所に狼子は坦々としながら自身の計画を具体的に発展させる。

121 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:14:01.00 ID:bBUQdby+0

(先輩の話、嘘だといいんだけど。もし刹那ちゃんが相良さんにあの態度を取ったら・・怖くて想像できん)

「刹那、お前も女なんだからちょっとは一緒に遊ばないとダメだぞ」

「・・でもどうしていいのか」

「大丈夫、フォローは任せとけ!!」

そう言って狼子は携帯を取り出すとメ-ルで自身の計画打ちながら聖の携帯に送信した。

123 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:14:52.61 ID:bBUQdby+0

同時刻、聖の携帯に狼子からメールが届く。聖は内容を見ると先ほどの数学を教えてくれている翔をよそに にんまりと笑いながら心を躍らせていた。

「ンフフフ・・」

「おい、何があったんだ?」

「ちょっとな♪」

聖の微笑みにぐらっと来そうになった翔ではあるが先の数学を簡単に講師する。今まで赤ギリギリで下を一気に 独走していた聖の成績であるが翔の家庭教師により何とか人並み以上の成績を取り戻しつつあった、教師陣も この出来事に改めて神という存在を信じざる得なかったらしい。

「それよりも式は解ってるのか? ここちゃんとやってないと後で後悔するぞ」

「うるせぇな。勉強って気分じゃないんだよ」

「おいおい。そうだ、明日は店が休みだから勉強会をしてその後・・」

「あ~・・悪ぃ、明日ちょっと予定があるんだよ。またにしてくれ」

「あ、ああ・・」

聖の言葉に中野は平静を装っていたものの内心は愕然としてしまう、今まで聖は余程の事がない限りは翔の誘いを 断ることはなかったのでこんな風にストレートに断られたのは初めてに近い。とは言いつつもここ最近は自分の 所持している別荘で夜遅くまでいた事もあったし互いの同意だけで成り立たせた無断の外泊等もあったので それらを懸念しているのかもしれない。

126 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:16:30.71 ID:bBUQdby+0

(なるほどな・・ならこっちもツンも連れて行くか)

「ところで明日は何するんだ?」

「まぁ、ちょっとな」

「ちょっとって何だよ? 気になるじゃねぇか」

「たまにはダチと遊ぶのもいいもんだからな。まぁ、お前もたまには友情に興じろよ」

普通の彼氏ならここはぐっと引き下がる物なのだが、こと翔に関しては少しばかり独占欲が強くこれで 引き下がるはずがない。

127 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:17:34.52 ID:bBUQdby+0

場所は変わってここは擬古中学校、今回はテストだったので生徒達の帰宅時間もすこぶる早い。 そんな中で2人の女子生徒がのんびりと校門を出ながら帰路へと向かう。

「ふぅ、終わった終わった」

「これで2ちゃんが出来る」

「相変わらず祈美は元気ね。私なんかテスト終わっても色々と大変よ・・」

彼女達の名は中野 椿に木村 祈美。性格は違えど凹凸が合うこの2人は良き友人で通っている、この2人の兄も 似たような感じなのだがこっちは普通の付き合いのようだ。

「椿は色々有名だもんね」

「それは言わないで頂戴・・全くあんな兄の妹に生まれて苦労するのは私の方なんだから」

椿の兄はあの中野 翔であったので入学当初から別の意味で色々と騒がれており、中学校にいるそこらへんの ごろ付きには上級生下級生を問わず普通に挨拶をかましてこられるし、せっかく出来かけた恋人も兄の存在を 知ったとたんに脱兎の如く逃げ去る。

それに翔に関しても小学生から続く有難くない経歴の揉み消しを手伝わされる羽目にもなるし両親に対する根回しも ほとんど椿が担当される羽目になっているのだ。それ故に翔は椿には頭が上がらないのだがここ最近は少し調子に 乗っているようだ。

129 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:18:20.34 ID:bBUQdby+0

「全く、聖さんと会える機会が増えたのはいいけど最近は調子に乗りすぎね。・・聞いてる?」

「このスレテラカオス・・う、うん。まぁ、こう言うときは憂さ晴らしが一番だよ、付き合って」

「どうせアニメとかゲームとかの所ばっかでしょ。ま、何もしないよりマシよね」

「おk、把握。それじゃあ行こう」

友人に引き連れられ椿たちは街へと消える、やはりこのコンビはどこか噛みあうようだ。

「よっしゃぁ、これで連勝!」

「うは、相変わらずゲームは強いな。オラワクワクして来たぞ!!」

「こればっかりはお兄ちゃんよりも自信があるからね。じゃんじゃん行くわ」

それから小一時間後、ゲームの結果は椿の連戦連勝で祈美の予算が底をつきかけた所で勝負は終了。 こう見えても椿はゲームに関してはそれなりに実力はあるもので全国ランキング20位にまでこぎつけれる ぐらいの実績を誇る、とはいっても祈美の付き合いからによる単なる暇潰しから成り上がってきたものなので 本人はどうも微妙な感じだ。

130 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:19:24.74 ID:bBUQdby+0

「ギャルゲーだったら負けないのに・・」

「そんなものあるわけないでしょ」

「何をギャルゲーに対する冒涜だ。皆! オラに小銭を分けてくれ!!」

「ストリートで歌えばくれるかもよ」

「mjd? なら真赤な誓いや渇いた叫びを」

祈美の特徴についても嫌な顔一つせずに普通に笑顔で接しながら買っておいたジュースを一気飲み。祈美と 一緒にいられることで椿自信も全てを忘れられ落ち着く事が出来るようだ、兄についてはもう少しばかり大人しく してくれればこのような平和な生活が享受できるのだが・・それは叶わぬ願いだろう。

「次は・・あそこ行こ」

「どこ?」

「フフフ・・とってもいいところだよ」

少しばかり怪しげな笑みを浮かべる祈美に椿はたじろきながらも長年の友人の好として付き合う事にした。

138 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:27:15.65 ID:bBUQdby+0

コスプレと言うものをご存知であろうか? その紀元は古く元は煩悩から生み出されたものなのだが、限られた 先人達はそれらをうまく昇華し独自の文化を築き上げた。彼女達がいるのはその専門店、少々怪しげな雰囲気は あるものの兄の影響を若干受けている怖いもの知らずの椿とヲタ根性丸出しで常連の祈美は何ら抵抗なくお店に 入って行く。

「あっ、あったあった。椿、これを着る事を団長命令で命ずる」

「何なのよこれ。何ら変哲もない学園服じゃん」

「これはとあるエロg・・ではなくアニメに出る学園服。あそこの試着室でこれ着て」

「仕方ないわね」

普通ならここで断る所なのだが幸い椿は慣れているので何ら抵抗もなく試着室へと向かう。 数分後、試着室から出た椿を見た祈美はヲタ特有の興奮を感じながらもとある注文も着けるのも忘れない。

140 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:28:09.54 ID:bBUQdby+0

「こんな感じ?」

「うは、テラモエス。あ、後ね“べ、別にあんたの事・・嫌いじゃない”ってセリフも宜しく」

「わかったわよ。ふぅ・・べ、別にあんたの事・・嫌いじゃない!!」

「ktkr。最高!! 嫁光臨!!!」

「こんな感じ?」

携帯のカメラで写真を取り巻くって妙に興奮していいる祈美は置いて椿はとある事を考えていた。

(お兄ちゃんに制裁として1日中こういったの着させれば効果はありそうね)

妹と言うのは幻想の中で生かしておくのが一番なのかもしれない・・

141 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:28:52.45 ID:bBUQdby+0

保健室、そこは癒しの空間であり気軽に休める事が出来る唯一のオアシス。時には生徒の心の悩みや女体化に 関するものなど様々な問題を一緒に解決とは言わないが後押しをしてくれるのが保健室の先生、少しでも生徒の 力になってやりたいと思いながら日々の業務を続ける。そんな保健室に来客が訪れる・・

「よぉ、礼子先生」

「何? 今度はどうしたの」

艶びやかな黒髪と均等の取れたスタイルが特徴的なここの保健室の春日 礼子。 保健室の先生をやって×年・・ベテランとは言えないがそれなりに年季は経っているので経験もある。彼女の過去は 壮絶すぎるのでここでは割合させて貰うが簡単に言えば聖と翔を合わせた形で立派な大人になった感じか? 

礼子は手馴れた感じで聖を招き入れるとそのままいつものように静かに話を聞くのであった。

「実はさ、薬の方がなくなったんだけど・・」

「はぁ~・・5日前に2週間分は渡したわね。あれからそんなに日は経って居ないはずよ」

「ハハハ・・流石の俺も若さゆえの欲望には適わないぜ」

礼子は少し頭を抱えながら話を続ける。

142 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:29:54.30 ID:bBUQdby+0

「いい、確かに若いときは盛るわ。私だってそうだったし否定はしない、ただ物事には限度ってものがあるのよ。 それはわかってるの?」

「ま、まぁ・・な」

「・・あのね、少しは自重するとかそういった事も考えるのは必要よ。わかる?」

「う~ん・・そうだな。ちょっと考えるようにする」

一応安堵の溜息をつきながら礼子は机の引き出しからピルを取り出す、このピルは医者を勤めている旦那から 譲って貰っているものなので効き目は市販のものよりもすこぶる高い、7日分の薬を聖に手渡すと一息つきながら 警告と成長を願い言葉を残す。

「いい、今度はちゃんと考えて使うのよ。本当に後のことはちゃんとしておかないと取り返しのつかないことになるの、わかった?」

「ああ・・ちゃんとする。ありがとな!」

「しっかりするのよ。女なら旦那をうまく操縦しなさい」

「ああ!!」

元気良く保健室から立ち去る聖を見納めると周囲をしっかり確認して部屋の換気を徹底的にしながら懐に置いてある タバコを1本取り出すと口に加えて火をつける。長年の慣習なので禁煙とは無縁である礼子、喫煙者に無駄に厳しい 中でも職場での一服は欠かせないと本人は豪語する。聖が立ち去った後、とある人物が高確率で来るのは目に見え ている、その人物は学校の中でも自分の本性も無論知っている唯一の人物だ。

ゆっくりとタバコの煙を肺に取り込んでそのまま吐き出すと同時に翔が扉を力強く開ける。

144 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:30:36.62 ID:bBUQdby+0

「礼子先生! 大変なんだ!!!」

「はぁ~・・さっさと閉めろ。話はそれからだ」

「あ、ああ・・」

礼子の鋭い眼光には流石の翔もたじたじだ、教師陣の中でも礼子は唯一問題児である聖と翔を抑えられる 存在として評価されている。まぁ、本人はそんなものは切り捨てているのだが・・先ほどとは違ってゆっくりと 扉を閉める翔はゆっくりと椅子に座る。

「何の用だ」

「いやさ、さっきあいつを誘ったんだけど見事に断られてな。今まではこんなことなかったんだけど・・理由を聞いて も教えてくれないんだよ」

「あのなぁ、誰だって話したくないことは話したくないもんなんだよ。彼氏だったらそれを弁えろ」

礼子はタバコを灰皿に押し付けるとそのまま2本目のタバコを吸い始める。これが本来の彼女の姿、親しい人物 以外は誰も知らないのだが翔の場合はなぜかこれが出てしまう。

146 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:32:24.36 ID:bBUQdby+0

「だってよぉ・・」

「だっても糞もねぇだろ! それにお前ら2週間分のピルを5日で使い果たすなんてどういった神経してるんだ!!」

「あ、あれは・・若さ故の事だからな。礼子先生だって経験あるだろ」

「バカ野郎!!! お前らは異常なんだよ! 大体俺が若い頃だってそこまでした覚えはねぇぞ!!!」

灰皿に置いていたタバコの灰すら容易に落ち、教室中に響き渡るいつもの怒声に翔はたじろきながらも何とか反論を 切り出す。

「だってやっぱさぁ・・あいつは男に取っちゃ極上の蜜みたいなもんだぜ? あれに飛びつかない奴はホモだな」

「やっぱり8割方はお前が原因か。相良がもし妊娠したらどうするつもりだ!!  甘ったるい責任や覚悟じゃ互いに滅びるぞ!!!」

「そんな事するわけねぇだろ!!! 全てを敵に廻しても俺はアイツを守る!!!」

翔の熱い想いに礼子は一息置きながらもこう忠告する。翔の場合は男としての自覚や責任感を徹底的にしなければ まずい事になるだろう、それに自分が踏んだ過去の轍を絶対に踏ませたくはないと言う想いが彼女の中ではあった。

147 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:33:17.99 ID:bBUQdby+0

「・・全く、正真正銘のバカだな。兎に角そうならないためにもまずは自重しろ、でなきゃまずお前が滅ぶ事になる!!」

「わかった」

「いいか、お前は男なんだ。守るべき人がいるなら守れ。そうしたら強さは自ずとついてくる」

タバコを吸い終えると、再びタバコを取り出す礼子。自分の経験に基づいた言葉であるので通用するかは分から ないがそれでもこの2人には通用すると頑なに信じている、タバコを吸いながら礼子はゆっくりと翔の返事を待つ。

「俺頑張って見せる」

「ま、ほどほどにな。んじゃさっさと帰れ」

「冷たいな。・・ま、わかったよ」

ゆっくりと椅子から立ち上がり翔は保健室を後にする、しかし本当の悩みはまだ解決されてなかったのだ。

(ゲッ! あいつの行動について進展なかったな。・・仕方ない、自分で考えるか)

翔はとあることを閃く、これが吉と出るか凶と出るか・・それは彼の運命次第。

149 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:34:17.47 ID:bBUQdby+0

翌日、聖にツンそして狼子と刹那を含めた4人が周りの視線を独占しながらここモナー象に集結をしていた。

「さてここで全員が一同に揃ったな」

「ええ、狼子ちゃんと会うのは久しぶりだけど・・そっちの子は?」

「えっとこの子は最近友人になった円城寺 刹那。ほら聖さんとツンさんに挨拶しろ」

狼子に促されて後ろに隠れていた刹那がちょこんと2人の前に現れる、やっぱり緊張しているのか刹那は なかなか言葉がでない。そんな彼女達の様子を遠くから見守る影が4つ・・

150 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:34:55.17 ID:bBUQdby+0

「うわぁ、刹那ちゃん余計なこと言わなければいいんだけど・・」

「まぁ、あいつはそう易々とは切れねぇよ」

「確かにツンがいれば一安心かもしれないお」

「なんで俺までこんな事になるんだよ・・」

上から辰哉、翔、内藤、ドクオの順。何故こんなことになったのかと言うと時間は昨日の夜に遡る、いつもの要領で バイトを終えた翔は自宅に戻るとそのまま辰哉の携帯に電話を掛けて呼び出した事から始まり、数分後に翔の 自宅に着いた辰哉から狼子の計画を聞くと翔は持ち前の頭脳を武器にどうすべきなのかを考え始める。

「先輩、どうするんですか?」

「そうだな・・こうなったらあいつ等をつける。お前も知りたいだろ?」

「ま、まぁ・・」

辰哉も狼子の計画を聞いた時は内心驚きつつも様子を観て見たいと言う気持ちに駆られてしまう、なんだかんだ 言いつつも彼女の行動は気になるものだし自分の目で確かめたいと言う想いはある。

151 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 03:35:19.09 ID:bBUQdby+0

「よし、内藤たちにも話して見るか・・」

「先輩・・それはちょっと不味いんじゃないんですか?」

「何、こう言うときは仲間が多い方がやり易いじゃねぇか」

「は、はぁ・・」

翔は携帯でツンの彼氏である内藤とドクオを呼び出して、2人が自分の家に着くと丁重に出迎えながら自分の 部屋に入れると事の内容を話す。

「・・と言うわけだ。お前らもやってみるか?」

「確かにツンたちの行動も気になるけど・・やっぱり当人同士で任せるのは一番だお」

「てか俺は関係ないと思うんだが・・」

「まぁ、連れないこと言うなよドクオ。内藤だって気になるなら行動すればいいだろう?」

翔の提案に内藤は頭を抱えているがこの中で一番の部外者であるドクオは尤もらしい意見を切り出す。

175 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:30:12.69 ID:bBUQdby+0

「仮に失敗したらどうすんだ? 相手は普通の奴とは違うんだぞ」

「そ、そうだ・・狼子もいるんだっけ。何されるかわからんな・・」

ドクオの意見に辰哉は失敗した場合の事を考えるが、恐ろしくて声すら出ない。それにもしばれてしまえば 4人ともただでは済まないのは誰が考えたって解ることだ、誰だって命は惜しい。そんなドクオの意見に翔は更なる 具体案を打ち出す。

「まぁ、俺だってそこら辺は重々承知だ。失敗したら命はまずないと言っても過言ではない、だけどあいつらの 気がつかないぐらいまで遠くから様子を見れば済む話だ」

「でもあの中では相良の方が武道派だからそういったのには一番長けているお」

内藤の意見に翔は待ってましたの勢いで机の引き出しから4つの双眼鏡を取り出す。

「そこでこいつの出番だ。こいつは結構遠くの距離からでもピンポイントで見れる優れものでな、これさえあれば ばれる心配はない」

「ほぉ、確かにこれは有名な奴だ。確かにこれさえあればなんとかなるだろうな」

「流石ドクオだ。お墨付きも貰えた所でどうする?」

翔の言葉に3人は頷きながら考えるとようやく結論に達する。

176 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:31:16.42 ID:bBUQdby+0

「よし、俺はやる。狼子の様子も知りたいところだしな」

「やってみるかお」

「お、俺は・・」

「よし、決まりだな。明日に決行だ!!」

それが昨日から遡って今日に至る、4人とも双眼鏡を片手にじっとその場の様子を伺う。当人達の様子はと言うと・・

177 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:32:58.41 ID:bBUQdby+0

「まっ、仲良くやりましょう」

「そうだな」

「・・黙れ殺すぞ」

刹那の一言に場の空気は凍る、聖とツンは事前に狼子から聞かされていたのでそれほど驚きはしなかったものの 聖の方はツンと違ってこれで容赦するほど寛大な心は余り持ち合わせていない。

「ほぉ・・この俺様に向かって大層な口を叩けるな」

「せせせっ、聖さん・・刹那も悪気があってやったんじゃ」

「そうよ、ここは頑張って堪えるのよ!!」

「どうやらこの俺の怖さをまだ知らないとはな・・」

「ッ・・」

本能的に刹那は聖の出す緩やかな殺気を受け止め恐怖する、聖は顔は笑っているが目は全然笑っていない。 どうやら相手を間違えてしまったようだ、しかし後悔しても後の祭り・・ゆっくりと一歩下がる刹那に聖はじりじりと 距離を詰める。辰哉の予感していた地獄絵図がくりひげられようとしたその時!! 刹那が下がったとたんに 男2人のグループと接触してしまう。

178 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:34:14.89 ID:bBUQdby+0

「あっ・・」

「あららら・・痛ェな。こりゃ骨折したわ」

「本当か、こりゃお嬢ちゃんが俺達に落とし前をつけなきゃいかんな」

「だだっ、黙れ! 殺すぞ!!」

刹那は抵抗するがいかせん男と女だと力の差と体力の差もあって簡単に男達に取り押さえられてしまう。 そんな光景を狼子は黙っているはずもなく抵抗を試みる。

「お~、怖い怖い。だけど所詮は女だな」

「さっじゃんじゃん遊んでやるよ」

「お前達!! 刹那を離せ!!!」

狼子の存在に男達は振り向き刹那の手を振り解くが更に下卑た考えを思いつく。

179 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:34:35.16 ID:bBUQdby+0

「おいおい、友達の方も美人だぜ。俺貰っちゃおうかな」

「賛成!!」

「この野郎!!」

狼子も元男、伊達に喧嘩はそれなりに手馴れているので男達に抵抗をしてパンチやら蹴りを出すが力の差は歴然で 簡単に捌かれてしまう、どうやらこの男達もそういった事には手馴れているようで少なくとも狼子よりかは場数を踏ん でいるようだった。

「糞ッ!!」

「お前はそれなりにやるようだけど相手が悪かったな」

「ちょっと解らせてやるか」

「畜生!!」

1人の男の右拳が狼子の顔めがけて飛んでくる、狼子は目を瞑り全てを悟る・・数分後、なにやら男のうめき声が 聞こえるのでゆっくりとその目を開けると狼子に飛んでくるはずであった男の拳が誰かの左手によって右手首を 掴まされる。男の右手首を尋常ではないほどの力で握っている人物はこの中で唯一人・・

180 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:35:12.35 ID:bBUQdby+0

「痛デデデデデ!!!!」

「おい、そのくらいで勘弁しろ」

「聖さん!!」

聖は手を振り解くと男は腫れあがった右手首を左手でなんとか抑える。刹那を拘束していた男も思わぬ出来事に 呆気に取られた表情をしながらついその力を緩めてしまう、刹那の方も思わぬ出来事に顔をキョトンとさせてしまう。 ツンの方はと言うと慣れっこなのでこの隙に狼子と刹那の方を助けると後は聖に全てを託す。

「てめぇ・・何者だ!!」

「おいおい、怪我人にしては元気なこったな」

「うるせぇ!!!」

刹那を拘束していた男の方は聖の顔に向けて左拳を放つが、聖はそれに動じずに男の左拳を右手の掌で受け止めると 力一杯に男の左拳を握り締める。男の方は聖のその力にただただ悲鳴を上げるに他がない・・

181 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:36:16.67 ID:bBUQdby+0

「痛ェ!! こいつ本当に女なのか・・」

「女だからって舐めるな!!」

聖は空いていた左拳に力を込めると男の鳩尾に拳を振り上げて綺麗にヒットさせる、その尋常ではない力に男は 当たった鳩尾を必死に抑えながら呻き声を上げるしかない。

「あ、あががががが・・」

「おい! さっさとこいつ連れてとっとと消えろ。もし消えなかったらこいつと同じ運命を辿る事になるぞ!!!」

「ヒッ、ヒィィィィ!!!!」

聖の言葉にもう一人の男は屈するほかがなく、倒れていた男を抱えてそそくさと立ち去る。それを確認した聖は 一息つくと刹那に振り向き一言・・

「今度からは相手をちゃんと見定めろよ」

「コク・・」

主従関係をご存知だろうか? 犬は自分よりも力の上の者を判断するとそれに屈する生まれ持って備わった 野性的本能・・刹那は聖の行動に感服して急激に懐き始める、そんな刹那の行動に聖は少し戸惑いながらも 髪を撫でるなどして満更ではないようだ。

「♪♪」

「お、おいおい・・こんなものか」

突然の刹那の行動に狼子は驚きながらも聖の強さに願望の眼差しを込めながら礼を言う。

182 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 12:37:32.91 ID:bBUQdby+0

「聖さん。ありがとうございました」

「あんな雑魚なんざ相手にすらなんねぇよ」

「全くあんたといるといっつもこんな事になるわね。もう慣れたけど」

「ま、そう言うなよ。改めて行くぜ!!!」

こうして仲良し4人組は改めて行動を開始する、一連の行動を見ていた残りはようやくのんびりする。

「ま、あいつらしいといっちゃあいつらしいな」

「相良は容赦しないな・・」

「ツンも手馴れてるお」

「ふぅ~・・刹那ちゃんのお陰でどうなるかと思ってたけど何とかなって助かった」

辰哉は自分の想像が杞憂に終わりホッと胸を撫で下ろす、不安材料はなくなったので双眼鏡で周りの様子を見ると とある光景が目に付く。

186 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:00:52.20 ID:bBUQdby+0

「あっ、あいつら・・先輩!!」

「ん? どうした」

「これ見てください!!」

辰哉の目にしたのは先ほど聖にやられた男の2人組み、しかも人数を増やして復讐する腹らしい。 それを目撃した翔は即座に内藤とドクオに伝えると行動に移す、こういった奴らの考えていることは非常に容易い ので力の差を分からせて牙を徹底的に潰すのが一番だ、男達は何も知らずに行動を開始するが4人が立ち塞がる。

「なんだてめぇら!!」

「悪いが俺達は今日は気が立ってるんだ。徹底的にやらせて貰うぜ」

「やっちまえ!!!」

男達は行動という名の無駄な抵抗をするがその後は割合させて貰う。

187 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:04:10.21 ID:bBUQdby+0

仲良し4人組は定番のスポットを満喫した後にファミレスで休憩中、席の配置は聖と刹那で向かい側に狼子とツンで 4人とも簡単な飲み物を注文したようで順にテーブルに置かれる。

「ふぅ、遊んだわね」

「いや~、俺もここまで遊んだのは久々だよ」

隣にいる刹那にスリスリされながら聖はゆっくりとジュースを飲みながらのんびりとくつろぐ。

「・・♪」

「まさか聖さんに刹那が懐くなんて驚いたけど良かった良かった」

「それにしてもあんたよく懐かれてるわね。やっぱり家庭的なとこあるわよ」

「そうか?」

「ええっ、聖さん結婚するんですか!!」

「そんなわけねぇだろ。ツンも余計なこと言うなよ!!」

「別に実質上夫婦みたいなもんじゃない」

話に華が咲いて盛り上がりを見せる、そんな席をじっと見つめているのがこちらの4人。少し傷が目立つのだが そこら辺は会えて突っ込まない、4人は彼女達とは対照的に料理が沢山あるのが印象的だ。

189 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:07:30.57 ID:bBUQdby+0

「ふぅ~、ここまで来て何もなしだな」

「しかしあの4人はいろいろな意味で目立っているお」

「それにしても裏でナンパ目的の男達撃破したのも骨が折れる。中野もうここいらで引き上げてもいいんじゃないか?」

「そうだな。それにしてもここって辰哉のバイト先だったのか」

「ええ、向こうには俺達のこと黙って貰うように手回しはしましたよ」

そう言って辰哉はオムライスを食べながらのんびり狼子達の様子を見守る、尤も辰哉本人はまさか狼子達が自分の バイト先へと入るとは思っていなかったので内心ヒヤヒヤしているのと自分のバイト先で飯を食べるのは少しばかり 勇気がいるものだ。

「先輩、これからどうします?」

「そうさな・・各自のんびり家に帰っててめぇの女待ちながらごろごろするのもいいんじゃないか?」

「でも今日はめちゃくちゃ疲れたお。今日は当然中野が持ってくれるのかお?」

「当たり前だ、俺が言い出して付き合って貰ったんだから」

「ハハハッ、俺もブーンと同じ気持ちだ。ちょっと手洗い行かせてくれ」

そう言ってドクオは立ち上がるとトイレに向かう、トイレに入りながらドクオは散々文句を言いながらもなんだかんだ 言って付き合っている自分に内心少し微笑しながら用を足し終えて手を洗う。トイレから出てそのまま自分の席に 戻ろうとしたその矢先、ドクオはとんでもない人物と相対してしまう。

192 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:23:58.89 ID:bBUQdby+0

「つ、ツン・・」

「ドクオ? あんたこんなところで何してるの??」

「い、いや・・別に連れと飯食っているだけだよ。お前こそこんなところで何してるんだよ?」

「こっちも似たような感じね」

偶然出会ってしまったツンの存在にドクオは内心ヒヤヒヤしながら冷静に対処をする。 ここで万が一自分達の存在がばれてしまえば何されるか解らない、最悪な事態を何とか回避するために何とか 相手に疑われないように当たり障りのない最善の言葉で相手を納得させる。

「まぁ、偶然会っちゃたがそっちもブーンとうまくやれよ」

「う、うるさいわね///」

一安心して安堵の息を吐くドクオであったが・・そんな彼の行動は水泡に帰してしまう。

193 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:26:38.66 ID:bBUQdby+0

「ドクオ、遅いお。何しているんだお、中野たちも・・」

「ブーン!? ちょっと何、どう言うこと!!」

「い、いやだから・・」

突然の内藤の出現に驚く2人、特にドクオの方は心音がピークに達している。

「さっき中野って言葉が出たわね。まさかあんたたち!!!」

「つ、ツン!! 冷静になって落ち着くお!!! 確かに中野と一緒にいるけど別につけてたわけじゃ・・」

「バカ野郎・・」

「どうやら詳しく話を聞く必要があるようね・・」

いつもは見慣れたツンの表情とは違って今は般若だと確信する2人であった。 ドクオたちがツンに捕まって数分後、もはや自分達の身が風前の灯と言う事を知らない2人はのんびりと料理を 食べながら帰るはずのない2人の帰りを待っている。

194 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:27:42.26 ID:bBUQdby+0

「あいつら遅いな・・」

「2人とも何してるんですかね?」

「ま、目の前にある料理でも楽しむかな」

「ほうほう、そりゃ幸せなこったな」

「まぁな。どうだ、お前も一緒に・・」

椅子から振り向いた翔は驚愕した表情のままその場に佇む、多分向かいの席にいる辰哉の方も同じ心境だろう。 翔の目の前にいる人物・・それは自分の彼女で永遠の好敵手でもある相良 聖その人であった。聖だけではない 周りには狼子とパフェを食べている刹那、そしてルンルン気分のツンとその横にはげんなりしている男2人・・翔達が 全ての顛末を知るのにそう時間は掛からなかった。

聖はにんまりとした表情を保ったまま絶対零度のような冷たい空気の中でゆっくりと言葉を発する。

195 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:29:28.11 ID:bBUQdby+0

「お前も粋なことしてくれるな。愛されるって罪なんだよな?」

「あ、ああ・・そうだな。俺も飛んだ奴だよ・・」

聖と同様に狼子の方も辰哉に哀悼に近い言葉を投げかける。

「俺達の様子はどうだった?」

「ききききっ、綺麗だったぞ・・」

時間だけが無常に流れる中で彼女達は大人数用の席へと料理を運び男達は成す術もなくそれに従う。 よく女性は笑顔がよく似合うと言うが、時にそれはどんな物質よりも鋭利で身体を突き刺すような凶器と化す。

問答無用の席替えが無事に終了したところでそれぞれの彼女達は凶器の笑顔を保ったまま更に言葉を発する。

196 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:30:25.09 ID:bBUQdby+0

「そういや、お前今月はかなり給料入ったんだよな」

「まぁな・・」

「よし。・・お前ら!! 今日の会計は全部俺の彼に奢らせるから好きなだけ食ってくれ!!!!」

「な、何だとぉぉぉ!!!!!!」

この言葉に翔は絶望のどん底へと突き落とされた心境に陥ってしまう。確かに翔はバイトもして沢山給料が入って いるので金銭には余裕があるのだが、このような大人数とてもじゃないが賄いきれない・・しかしここにいる自分は 文句は愚か行動する権利すら認めて貰えないので大人しくした方が無難だ。もし逆らったりすればどんな事が 起こるか想像できないししたくはないのが心情と言うものだ。

それはここにいる男達も同意見、下手な行動は身を滅ぼすこととなるのを場の空気が彼らの身体に伝えてくる。

「あっ、悪いわね。でも私達もお言葉に甘えてご馳走になりましょ」

「♪♪」

「奢ってもらってすみません。辰哉、ここお前のバイト先だったよな、勿論それ相応のサービスもついてくるだろうな?」

「あ、ああ・・」

辰哉はここの店でバイトをしているので割引がある程度利くようになっている。しかしそれも限度があるのでどれぐらい 利くがどうか自分でもよく解らない、店長の方もこれだけの大人数を抱えれば割引という言葉は耳に入らないだろう。 そんな辰哉の心境を他所に彼女達は店員を呼び出して聖を筆頭に地獄の注文を始める・・

197 名前: ◆Zsc8I5zA3U? 投稿日: 2008/07/11(金) 13:32:25.00 ID:bBUQdby+0

「んじゃ、俺はゴージャスハンバーグにドリア!! それにサンドイッチ!!!」

「私はグラタン! あっ、後は和風セットをお願い」

「・・ジャンボパフェ」

「俺は500gのサーロインステーキ2人前にドリア1つ!!」

「かしこまりました。少々お待ちください・・」

店員はそそくさと立ち去ると彼女達はルンルン気分で料理を待っているが、男達は地獄の待ち時間と成り果てる。 ある者は罵倒、またある者は殴る蹴る、そしてまたある者は噛まれる・・と言った所業のほうがまだ良かったと 後悔させられる。

「あ、そうそう。椿もここに来るってよ」

「祈美も一緒らしいぞ? あの2人お腹空いてたみたいだからな」

「「あっ・・そう・・・」」

4人の男達は命綱である懐具合を充分に確かめながら今まで彼女達の頼んだメニューを頭の中で計算に 入れながらこの時間を何とか切り抜ける。そしていつもの落ちの重要さを改めて認識するのであった・・

―fin―


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月17日 20:39
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。