桃「はー極楽極楽」
しずかちゃんではないけど、お風呂に入ってるときが一番幸せな時間だわ。 今日も悪の軍団をやっつけて、体は疲れ切っていた。
桃「さーてガキの使い見てから寝ますかー」
お風呂からあがったあたしはテレビの電源を入れ、ソファーにぐたーと背を預けた。
あたしは十三歳で悪の組織に捕まり、体を改造された。 あたしの他にも五人、同じような子供がいて、あたしたちは協力して逃げ出すことに成功した。 その後改造されて身につけた超人的な力を日本政府にかわれ、今は悪の組織と戦ってるってワケ。
楽な仕事じゃないし、命を落とす危険もあるけど、まー結構楽しくやってまさぁ。
あたし以外のメンバー全員が、女体化するまでは……。
――日だまり戦隊シックスネイチャーズ
――地球防衛軍本部――
総司令「そろそろ悪の組織がやってきそうな雰囲気だ。みんな、出動準備をしてくれ」
赤「はい! 全力を尽くし、悪の軍団を打ち破って参ります!」
レッドは今日も熱いやつだった。裏表の無いやつで、デリカシーもない。 でも素直で純粋で、あたしは結構気に入ってる。一応リーダーだしね。
青「フッ……僕にかかれば悪の軍団など、赤子の手をひねるようなものさ」
ブルーは自信過剰のナルシスト。顔はまあ、格好いいとは思うけどね。 でもそのくせ女の子に弱くてウブだったりする、ちょっと可愛いやつ。
黄「えと、あと、ボク頑張りますっ」
イエローはあたしのお気に入り! 笑った時のえくぼとか昇天しそう! みんなと同い年の十六歳のくせに、まるで小学生みたい。ヤラせろ!
黒「……敵殲滅命令……了解」
ブラックは今日もくらーい感じ。男前なんだからもっと明るくすればモテるだろうに。 まあブラックのファンはそういうところがいいそうだし、あたしも慣れたからいいけどね。
桃「がんばりまーす」
んでピンクがあたし。紅一点って感じ? まあ萌え担当はあたしっつーことで。
ビーン! ビーン! ビーン!
無線「ジジ……ジ……こちら麻布地区! 敵発見! レンジャー出動お願いします!」
総司令「うむ。みんな、出動だ!」
赤「はい!」
青「はい」
黄「は、はい!」
黒「はい……」
桃「はいはーい」
今日もあたしたちは戦う。日本の平和の為に――。
――次の日――。
桃「ありゃりゃ?」
何故か緊急の作戦会議を行うとMLが来ていたので、作戦会議室にやってきたのだが、誰もいない。 とりあえず座って待つことにしたが、十分経っても二十分経っても誰もこなかった。
あたしをナメとんのんかい。帰ってもう一度寝ようとした時、ドアが開いた。
ここで部屋の構造を説明しておこう。 この部屋は六角形になっていて、六角形の辺の部分に一つずつドアがある。 あたしはピンク専用のドアからしかここに入れない。
で、今そのドアがいっせいに開いたの。つまり、一度に全員来たってワケ。
桃「みんなおそ……い……」
あれ……? 女……?
入ってきたのは全員女だった。 なんでレンジャー専用の部屋に他のやつが来るの? おかしくね? これ。
あたしが入ってきた女たちをきょろきょろ見てるのと同じように、その女たちも きょろきょろと周りを見渡して、互いの顔を見て驚いているようだった。
赤から入ってきた人「まさかお前ら……」
青から入ってきた人「ひょっとして……」
黄から入ってきた人「う、うそでしょ……?」
黒から入ってきた人「……」
何なのこいつら。なんかあたしたちレンジャーのユニフォームとか着てるし。 女はあたし一人で十分だっつーの、全く。
桃「あのさ、ここはレンジャー以外立ち入り禁止なの。出てってくれない?」
あたしがそう言うと、赤の扉から入ってきた女が言った。
赤「ピンク……俺だ。レッドだ」
……ぱーどぅん?
青「僕だピンク……ブルーだ」
黄「ボクはイエローだよぅ……」
黒「……ブラックだ」
お母さん。元気にしていますか? あたしは元気です。 昨日まで共に戦ってきた仲間たちが、全員女になってました。 何が何だか、わからないワケで……。
総司令「私が説明しよう!」
全員「そ、総司令!」桃「ヒゲ!」
いつの間にか部屋にいた総司令が、この不可思議な現象を説明してくれた。
総司令「ヒ、ヒゲ!? ごほん! いいか、君たちが女になったのは女体(中略)という訳だ」
すごくはしょられた気がするが、とにかく事情はわかった。 そういや全員誕生日同じだったね。
赤「総司令……私は……私は一体どうすべきなのですか!」
おいおいレッドさーん。一人称が女になってますぜ。 その巨乳でヒロイン狙ってるんスかー?
青「まあ、わたくしの美しさに変わりは無かったけどね……ふ」
アンタは何も変わってないよ。もともと中性的な顔だったし。 髪が伸びて輪郭が丸くなったくらいか。性格も丸くなれば良かったのにね。
黄「ぼ、ボク……ヒック……どうしよう……」
かわひいいいいい! 女になってさらに幼くなってるじゃん。小学生じゃん。 幼女じゃん。ふにふにさせろ!
黒「幸い……身体能力や特殊能力はそのままだ……私たちは戦える……」
見た目が一番変化したのは黒だな。 筋肉隆々だった体が、スタイル抜群のモデル体型になってる。 ていうか長門かそのしゃべり方は。もっとはきはき喋れ。
レッドが巨乳だったらブラックは美乳だね。 ちなみにブルーは貧乳で、イエローはつるぺったん。
あたし? 教えねー。
総司令「うむ。君たちは女になってしまったが、これからもレンジャーとして活躍してもらいたい。そこでだ、急遽新しいユニフォームを作ることに決めた。でき次第それを着てくれ」
赤「はい!」
青「わかりましたわ」
黄「はいです」
黒「……了解」
桃「へーいへいへい」
なんか総司令はりきってるなー。つーかもうあたし紅一点じゃねーじゃん。 なんで女体化するとみんなカワイクなんのー? 不公平だぜチクショー。
それから一週間の間、悪の軍団たちは何故か攻めてこなかった。 その間に新しいユニフォームが出来たらしく、今日お披露目だ。
桃「……ナニコレ」
新ユニフォームを見て、絶句してしまった。 詳しくは言わないけど、すんげー露出しててめっさ際どいよコレ。 なんていうか、メイド+魔女っ娘+レンジャー、みたいな。分かる?
総司令「さあ着るんだ! 着れ!」
桃「……あのさー。これってヒゲさんの趣味じゃないんですか?」
あたしがつっこむと総司令は口をつぐんだ。当たってたんかい。
総司令「文句があるなら君だけは前のユニフォームでいいぞ。君に何も期待していない」
桃「抜くぞ」
総司令「ぬ、抜く!? あ、ヒゲをか!」
ヒゲに突っ込んでいる中、女になった他のメンバーたちはさっさと着替え始めていた。
総司令「ムッハー!」
着替えを見ていたダメヒゲが興奮し出したので、抜いてから放り投げておいた。
着替えは終わった。なんだこの恥ずかしいユニフォーム。 巨乳のレッドなんて少しだけ下乳見えてるよ。 ていうかなんでレンジャーなのにヘソ出しルックなんだよ。
大体スカートの下がビキニパンツとか、ありえなくね? ちゃんと処理してるあたしはいいけど、他のみんなは……あ、処理してるっぽい。何故?
黄「わーい! これ動きやすいねえ!」
イエローがぴょんぴょんはね回っている。あ、ブラックに抱きついた。 二人は前から仲が良いんだよね。
黄「ユニフォーム似合ってるよ、ブラック!」
黒「……ありがとう」
な、何コレ。なんか神聖な領域が出来ている気がする。気のせいか光があふれ出した! これが……絶対領域!
赤「うーん、胸がはみ出てしまう。これどうしよう」
青「……」
赤「ねえ、ブルー。これ大丈夫かな?」
青「……え? あ、ああ……別にそのままでいいでしょう。無いよりは……」
赤「? そ、そうね」
青「……」
ブルー胸気にしてるぅぅ! レッドと並ぶと天と地の差があるよ。 この二人はこの二人で……いい!
総司令「自分のフェロモンに気がつかない巨乳。胸を気にする貧乳。二つがかけ合わさったときの破壊力、計り知れない……!」
放り投げておいた。
ビーン! ビーン! ビーン!
無線「ジジ……麻布地区に敵出現!」
桃「また麻布地区かよ!」
無線「至急、レンジャーを要請!」
総司令「さあみんな! 出番だ!」
赤「はい!……?」
青「任せてくだ……さい」
黄「ボクがんばりますっ。ありゃ?」
黒「りょ、了解……」
桃「はいはい」
(ヒゲを片方だけむしったのはまずかったか……)
レンジャー全員が女になってからの出動は、今回が初めてだ。 うまく行けばいいけど……。
――麻布地区――
悪『グハハ! 逃げまどえ人間共! 闇にくっするがいい!』
一般人「う、うわあああ!!!」
悪『どうだあ! 熱々のおでんを背中に入れられた気分は!?』
一般人「熱い! 誰か助けてくれえ!」
あたしたちが駆けつけると、おでんの大根っぽいフォルムをした怪物が、 なんかおでんばらまいてた。なんかやる気無くなった。
赤「やめなさい! 大根魔神!」
レッド、勝手に名前をつけるな!
大根『だ、誰が大根魔神だ! わしの名前は大根イーターじゃ!』
それただの大根好きだろ! まだ大根魔神の方がよかったぞ!
赤「みんな! 心を一つにして攻撃よ!」
女になってもそのノリっすか。
青「貴方に言われなくとも、わかっていますわ」
ブルーさんもノリノリっすね。
黄「ボクたちの攻撃受けてみろー!」
たどたどしい口調……ああ、いいわ。
黒「……さあ、アレをやりましょう」
アンタは戦う時もそのテンションだよね。
大根『わしに勝てると思っているのかシックスネイチャーズ!』
桃「勝てるに決まってんでしょ」
大根『なにぃ!?』
大根イーターは怒りを露わにして蒸気を噴き出している。今だ!
桃「レッド!」
赤「ええ!」
レッドが大根イーターの方へ駆けていく。レッドに続くのはイエロー。 次にブラック、ブルーときて、最期にピンクのあたしが攻撃。 この連携が破られたことはないし、これからも破られることはないだろう。
大根『な、何をする気だ!』
なぜならあたしたちのコンビネーションは、正義と友情で繋がっているものだから。……あたしもレッドに感化されてるかもね。でもたまには、ね?
赤「行くわよみんな!」
赤「赤きたぎるは血の宿命! 真っ赤に燃ゆる魂が! 悪を散らせと燃えさかる! 懺悔なさい! レッドヒートブレェェイク!」
大根『ぐわあああ! 熱い! 大根のわしでさえ熱いぃぃ!』
黄「清く正しく明るく真っ直ぐ! 降り注ぐは正義の光! 全てを照らす浄化の輝き! 後悔しないでねっ! サンライトイエローウェェイブ!」
大根『光があああ! 私の体がぁぁ!』
黒「光あるなら闇がある…闇をけちらす闇もある…闇におぼれし者よ…闇に還るがいい…。裁かれなさい――! ブラックジャッジフォッグ!」
大根『ぐおおお! 何だこの霧は!? 力が、吸い取られるぅぅ!』
青「命を産みし母なる海が! 我が子を守る為あらば! 邪悪を飲み込む津波を起こす! どこまでも溺れるがいい! ブルーウォータースプラァァッシュ!」
大根『ゲボゲボゲボ……ガボ……』
桃「さあとどめよ大根野郎! 可愛いだけが花じゃない! 甘い香りは罠の味!
フ ァ イ ナ ル デ ス ジ ェ ノ サ イ ド ク ラ ッ シ ュ ギ ア ァ ァ!!!」
大根『一人だけ異様に派手ー!! ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!』
大根イーターは二、三歩後ろによろけると、大爆発を起こし跡形も無くなった。
一般人「ありがとうシックスネイチャーズ!」
一般人「何かよくわからんけど、美人になったね!」
一般人「ママー! ネイチャーズだよー!」
一般人「いつもご苦労様です」
一般人「レッドの下乳……ハァハァ……」
一般人「兄者、自重しろ」
今日の戦いで、わかったことがある。
赤「皆さん! 私たちは必ず悪の組織を倒し、平和を手に入れてみせます!」
青「はい押さないで。サインは順番待ちよ」
黄「みんなー! 応援よろしくー!」
黒「イエロー……スカートめくれてる……」
女になって、変わったところも確かにある。 でも、いつまでも変わらないところもあって、一番大事なのは、その部分なんだなって。
私たちはこれからも戦い続ける。悪が滅びるその日まで。
ていうか何であたしのところには誰もサインに来ないワケ!? ちょっと前まではあたしが一番人気だったじゃん! もういい! お前ら滅びろ!
終わり
おまけ
――作戦会議室・レンジャー反省会――
緑「なんで集まったかわかるよな」
赤黄青黒桃「……はい」
緑「お前ら俺のこと忘れてたろ」
赤「いえ、決してそんなことは……」
緑「嘘付け! ていうかシックスネイチャーズだろ俺ら! なんで五人で敵を倒すんだよ!」
青「敵が弱すぎたのよ……」
緑「ありえないじゃん! もう何かお前らファイブネイチャーズじゃん!」
黄「ごめんよぅグリーン。後ろの方でちらちら見えてたけど、何がしたいのかわからなかったんだよぅ」
緑「戦いたかったんだよおお! 俺のグリーンパルスハリケーンくらわせたかったんだよおお!」
黒「落ち着いてグリーン……貴方の気持ちはわかるわ……」
緑「だったら登場させろよ! あれか、俺の存在は文字列の間から推測しなきゃいけねえのか!?」
桃「大丈夫だって。今男はアンタ一人なんだから、目立ってる目立ってる」
緑「絶対だな! 次は絶対登場させろよ!」
赤黄青黒桃「……」
緑「返事しろおおお!!!」
――(気分次第で)続く……。
最終更新:2008年09月17日 20:49