『いちこ、にこ』

494 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:39:50.02 ID:kzZA2RLz0


橘笑顔(たちばな にこ)の学校生活は、机に書かれた落書きを消す作業から始まる。
「死ね」「ヤリマン」「ブス」「消えろ」「何で生きてるの?」
低俗な落書きや卑猥な画が、ニコの机を毎日埋め尽くす。
それらを消し終えた頃、ちょうど朝のHRが始まる。
ニコは十五歳の時女体化した、元男である。
通常は十七歳の誕生日に女体化するのだが、極まれに早期女体化が起こる人間がいる。
それがニコだった。
ニコは早期女体化により、美しい少女になった。
肩まで真っ直ぐ伸びた茶色い髪は、しなやかで艶があり、
小動物のような愛らしい顔つきは子猫を連想させる。
Bカップの胸と美しいくびれのラインが男心をくすぐる。
当然男共はニコを狙い、近づいてくる。






495 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:40:22.61 ID:kzZA2RLz0


ニコはある日クラスの男子から集団でレイプされた。
気の弱いニコはそれを誰にも言えず、味をしめた男子達はその後毎日のようにニコをレイプした。
家に連れ込んで、学校のトイレで、教室で、スーパーのトイレで、公園で。
場所を問わず何度も陵辱した。
学校の男子はニコを便所としか思って無く、女子はニコに近づく者さえいなくなった。
その後間もなくして、ニコへの本格的ないじめが始まる。






497 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:40:58.49 ID:kzZA2RLz0


昼休み、ニコはクラスの女子達に促されるまま、人気の無いトイレに連れてこられた。
女子達は全部で十人以上いる。
ニコは恐怖で足が震えていた。

女子「ニコ、これなーんだ?」

一人の女子が桜色の包みを見せる。
それはニコのお弁当が入っている包みだ。

女子「お腹すいてるでしょ? 食べなよ」

そう言って、その女子はニコのお弁当の包みを開け、お弁当の中身を便器の中にぶちまけた。

女子「残さず食べなよ」
女子「食べ物粗末にしたら駄目だからね」
女子「何固まってんだよ。早く食べろよ」
ニコ「……」

ニコは何も言わず、ただ震えているだけだった。
その様子を見た一人の女子が、ニコのお腹を思い切り殴る。
ニコはあまりの苦しさにお腹を抱え、胃液をはき出した。
その様子を見た女子達は大笑いではやし立てる。

女子「アイムウィナー♪」

ニコを殴った女子が、ニコの頭に足を乗せ勝利のポーズを取ると、そのことでまたどっと笑いが起こった。






498 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:41:44.82 ID:kzZA2RLz0


女子「食べないなら、食べさせてあげるよ」

うずくまって呻いているニコの髪をつかみ上げ、
そのまま強引に顔を便器の中に押し込んだ。
ニコは手足をばたばたさせ必死にもがくが、四人がかりで押さえつけられているので、その抵抗は意味をなさなかった。

女子「もうそろそろやばいよ」
女子「引き上げて」
女子「はいはーい」

便器から引き上げると、ニコは激しく咳き込み、水をはき出した。

ニコ「ゲホッ…ぇ、ゴホッ……あぇ…ケホッ…」
女子「あれ? 全然食べてないじゃん、全部食べるまで終わんないよー?」
ニコ「そんな……無理だよ……」

ニコがそう言うと、先ほどお腹を殴った女が、ニコに背中から蹴りを入れた。
前のめりに倒れたニコを見て、再度笑いが巻き起こる。






499 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:42:09.19 ID:kzZA2RLz0


女子「じゃあ、オナニーしろよ。ここで」
ニコ「え……」
女子「いいじゃんそれーw」
女子「きめえw」
女子「私の携帯ムービー撮れるよーw」
女子「おい、さっさと始めなよ。もう一回殴られたいの?」

女子達は携帯を取り出し、ニコの姿を撮影する気でいる。
周り中からはやし立てられたニコは、泣きながらスカートをたくし上げた…。






500 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:42:43.52 ID:kzZA2RLz0


放課後、ニコは体育の教師に体育教官室に呼び出された。
体育館の二階にあるこの部屋は、中から鍵がかかるようになっている。
部屋をノックすると、教師はニコを部屋に招き入れ、ニコに気付かれないように鍵をロックした。
教師はタバコを取り出し火をつけると、無精ヒゲをさすりながらニコに言った。

教師「今日お前を呼んだのは、お前に聞きたいことがあるからだ。
   橘、お前売春してるんじゃないのか?」

教師の言ったことは当たっていた。
ニコはクラスの女子から幾度となく売春を強要させられていた。






501 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:43:07.04 ID:kzZA2RLz0


教師「もしこれが本当なら、お前は退学ということになるな」
ニコ「……」

教師がまるで品定めをするように、ニコの体を見ている。

教師「俺はお前を信じたいんだ。だから……」
ニコ「はい……」
教師「お前の体が綺麗かどうか、確かめさせてくれ」

ニコは既に覚悟していたように、そっと頷いた。
教師はニコを仰向けに寝かせ、性急に服を脱がす。
ニコの白い肌が露出すると、興奮した教師は犬のように全身をなめ回していった。
唾液の匂いと体臭が、ニコの鼻をつく。
雨が降り始めたようで、ぱらぱらと天井に雨粒が落ちる音が聞こえる。
薄まっていく現実感の中、雨の音と教師の荒い鼻息だけが聞こえた…。






502 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:43:35.65 ID:kzZA2RLz0





橘市子(たちばな いちこ)はごく普通の女子大生だ。
一つだけ違うのは、顔にコンプレックスがあるということ。
ニキビが一つできるだけで一時間以上も鏡とにらみ合い、
手鏡を携帯し二時間に一回くらいのペースで化粧を直す。
一般的に見ればさして不美人という訳ではなく、むしろ綺麗な方だろう。
しかし本人はそうは思っていなかった。
そして、そのコンプレックスは弟が女体化することで一層強くなった。
それは弟への憎しみを彼女に植え付けることにもなる。

ニコ「ただいま…」

学校から帰ってきたのだろう。
ニコの声が玄関の方から聞こえてきた。
市子は雨で崩れた化粧を直している最中で、帰ってきたニコに返事はしない。
居間にいる市子の元に雨でびしょ濡れになったニコが入ってきた。






504 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:44:15.52 ID:kzZA2RLz0


ニコ「あ、お姉ちゃん…お母さんはまだ仕事なの?」
市子「じゃないの?」

市子は鏡を見たまま、ニコの方を見ずに返事をする。

ニコ「また出かけるの? 雨止まないみたいだよ」
市子「ああそう」

依然鏡を見続けたまま、気だるそうに市子は言った。

市子「夕ご飯いらないって、お母さんにいっといて」

鏡をしまうと、ニコと目を合わせることなく市子は居間を出ようとした。

ニコ「あ、お姉ちゃん」

ニコの呼びかけを無視して、市子は家を出る。

ニコ(今日ぼく…誕生日だよ……)

一人残されたニコは、誰もいない居間で立ちつくしていた。
今日はニコの十七歳の誕生日だ。






505 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 04:44:59.88 ID:kzZA2RLz0


ニコは近所のケーキ屋に行き、ショートケーキを一つ買った。
家に帰るとケーキ用の蝋燭を一つ取り出し、ケーキに差す。
ニコの両親は共働きで、今父親は単身赴任で家にいない。
その日は母親も遅いらしく、九時になっても帰ってこなかったので、ニコはケーキを一人で食べた。
その日ニコは一つの賭をしていた。
もしも誰か一人でもニコに「誕生日おめでとう」と言ったら、賭はニコの勝ち。
もし、その賭に負けたときは――。






517 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 05:05:19.29 ID:kzZA2RLz0


十一時半になり、ようやく母親が帰宅した。
母親は酔っぱらっているらしく、赤い顔にふらふらとした足取りで居間に入ってきた。

ニコ「おかえり。今日は遅かったね」
母「うん、飲み会があったから。明日の仕事に差し支えるから、もう寝るよ。おやすみね、ニコ」

頭を抱えて、二階に上がろうとする母親。
ニコが呼び止めようとしたとき、思い出したように母親は足を止めた。

母親「あ、そうそう…」
ニコ「な、なに…?」

母親を見上げるニコの目は、期待に満ちていた。
だが……

母親「市子はどこ行ったの? 靴が無かったけど」
ニコ「あ……うん…どこか出かけたみたい」
母親「ふぅん……まあいいわ。じゃあね、おやすみ」
そのまま母親はよたよたとした足取りで、二階に上がってしまった。
時間が過ぎていき、ニコの誕生日は、誰にも祝われることなく、終わった。






520 名前: いちこ、にこ [ようやく投下できるぜ] 投稿日: 2007/07/22(日) 05:08:30.71 ID:kzZA2RLz0




市子「お疲れ様。送ってくれてありがとう」
男「お疲れ様。今度は二人で遊ぼうよ」
市子「うん、考えとく。じゃあねー」

家の前まで送ってくれた友達に手を振りながら、市子が帰宅した。
時刻は深夜一時。
玄関に上がると、居間の電気がついていることに気付いた。

市子(うわ…怒られるかな…)

市子は母親がまだ起きていて、自分を待っているのだと思った。

市子「ただい…」

居間の戸を開け、市子が見たものは、手首から血を流し倒れているニコだった。






521 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 05:09:15.19 ID:kzZA2RLz0



――う…うぅ…
――こいつ本当にオナニーしてるよ
――うわあエグ
――カシャ
――この写メ、クラスの全員に転送しとくからね
――プリントして、掲示板に貼り出しとこうか?
――あはは、いいねそれー
――お願い…許して…
――はぁ? 今更何言ってんだよグズ
――人間の言葉喋んじゃねーよブタ
――許してください…お願いします……お願いします………







ニコ「……」

意識を取り戻したニコが見たのは、病室の天井と繋がれた点滴だった。






523 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 05:11:38.78 ID:kzZA2RLz0


ニコ(そうか…まだ死んでないんだ…)

辺りを見回すと、空のベッドがあるだけで、病室に自分しかいないのだとわかった。
時計の針は五時を指していて、窓のカーテンの隙間からうっすらと明るくなっている空が見えた。
相当な量を失血したのか、酷く頭痛がして、上手く動けない。
しばらくして誰か病室に入ってきた音がした。

ニコ「……! お姉ちゃん…」
市子「あ、ニコ…気がついたんだね」

市子は手に持っていたアクエリアスを開け、ストローを差してニコの口元に持っていった。

市子「吐き気がするかもしれないけど、少しでも飲んだ方がいいよ」
ニコ「うん…」

小さな口でストローをくわえるニコを見て、猫にミルクをやっているみたいだと市子は思った。






524 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 05:12:12.11 ID:kzZA2RLz0


三分の一程飲み、ニコはストローから口を離した。

ニコ「ありがとうお姉ちゃん」
市子「ん、どういたしまして」
ニコ「あの……お母さんは?」
市子「えっと…今病院の先生と話してる」

嘘だった。
本当は家で寝ているのだ。
救急車の手配、救急隊員との対応、付き添いまで全て市子がやった。
母親は市子が何を言っても、ベッドから出ようとはしなかった。

――病院には明日行くから、代わりにあんたがニコに付き添って…

自分の娘が死ぬかもしれないという時に、母親は取り乱すこともなく、そう言った。
市子と母親は元々あまり仲が良くないが、今回の件で市子は完璧に母親を見限った。






526 名前: いちこ、にこ 投稿日: 2007/07/22(日) 05:14:07.09 ID:kzZA2RLz0


市子「学校には私の方から適当に欠席の届け出しとくよ。
   アンタは何も心配しなくていいから、ゆっくり休みな。
   ……ねえ、アンタどうして、こんなことしたの?」

いつもは冷たい姉が、自分のことを心配してくれている。
ニコは随分と久しぶりに、人とちゃんとした会話をしている気がした。
ニコは全てを話した。
レイプされたこと、いじめられたこと、売春をしていること、教師に見捨てられたこと。
話し終えたとき、市子はニコを抱きしめて泣いていた。
市子はニコに何度も謝っていた。
ニコは市子を、まるで子供をあやすように頭を撫でながら、一緒に泣いた。






528 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [>>525thx] 投稿日: 2007/07/22(日) 05:16:12.76 ID:kzZA2RLz0


退院したニコは、学校には行かずに家にいた。
市子が学校に行かせなかった為だ。
市子はニコに転校を勧めた。
ニコと同じように女体化した人が同学年にいる学校だった。

市子「いい? 新しい学校で今度何かあったときは、絶対私にいうんだよ。わかった?」
ニコ「うん」

市子は転校の手続きを全て一人でやった。
手際よく済ませたので、ニコは来週から新しい高校に通えることになった。
ちなみに、市子は母親にニコが学校で何をされたかを言ってはいない。

市子「だって聞かれてないし?」

だそうだ。
市子は学校の講義をさぼりまくって、ニコと一緒に家にいた。
その事について母親に散々怒鳴られたが、市子は全く気にしていなかった。






529 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [おまいらの優しさに泣ける…] 投稿日: 2007/07/22(日) 05:18:45.86 ID:kzZA2RLz0


転校に関しての全ての準備が整った。
日曜日、ついに明日からニコにとって新しい学校生活が始まる。
ニコは鏡の前で新しい制服に着替えていた。

ニコ「お姉ちゃん、どう?」
市子「うん、いいんじゃない? 流石我が妹ってところか」
ニコ「えへへ」

市子はこの時、自分のコンプレックスが綺麗さっぱり無くなっていることに気がついた。

ニコ「髪黒く染めた方がいいかなあ? お姉ちゃん、どう思う?」
市子「へ? あ、ああ…今のままでいいと思うよ。地毛なんだし」
ニコ「うん、そうだね!」

ニコはよく笑うようになった。
ニコの笑顔を見たのは何年ぶりだろうかと、そう思ったとき
改めて市子はニコが追い詰められていたことに、強く憤りを感じた。
そしてそれを気付かず、安っぽいプライドでニコを敵視していた自分にも。






530 名前: いちこ、にこ [題名入れ忘れた…] 投稿日: 2007/07/22(日) 05:19:51.50 ID:kzZA2RLz0


市子「ニコ…」

市子はぎゅっとニコを抱きしめた。
ニコは背が低く、百七十近い市子と比べると子供のようだった。

市子「もう誰にも、アンタを傷つけさせないから…」
ニコ「……」

市子の胸の中で、ニコは涙を流した。
悲しい時に出る涙でも、痛いときに出る涙でも、あくびの時に出る涙でもない。
傷だらけのニコを包む、優しい涙だ。

市子「あ、そうだ」
ニコ「え、あれ?」

市子がくるっと後ろを振り向いたせいで、ニコはバランスを崩しこけてしまった。






531 名前: いちこ、にこ 終 投稿日: 2007/07/22(日) 05:21:05.79 ID:kzZA2RLz0


ニコ「お、お姉ちゃんひどい…」
市子「ごめんごめん。はい、これ」

市子は手に小さく、四角い包みを持っていた。
綺麗に包装されて、赤いリボンがついている。

市子「遅れちゃったけど、十七歳の誕生日おめでとう、ニコ」

一瞬何が起こったのかわからなかった。
おずおずと手を出してプレゼントを受け取る。
それから間もなくして、目の前の景色が滲み始めた頃に、ようやくニコは言った。

ニコ「……ありがとう」





ニコは、賭に勝った。








532 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/07/22(日) 05:21:35.46 ID:kzZA2RLz0


  ~終わり~

















576 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/07/22(日) 12:13:50.17 ID:kzZA2RLz0
(    )  `・ω・´ ボガーン


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最終更新:2008年09月17日 21:00
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