『まおっこ』7

57 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:14:45.45 ID:qkkRIpP20

あらすじ
あ、どうも。あらすじ する男(34)です。 女体化したジークは、同時に魔力を失ってしまいました。 そんなときタイミング悪く、勇者のエルが城に来てしまいます。
ジークはエルに自分は囚われた姫と嘘をつき、魔王であることを隠します。 そんなある日、ジークの付き人のパラディン(2863)が、魔力喪失の謎を解明しました。 そしてジーク達は、魔力を取り戻す為旅に出ることにしたらしいです。
ジーク達はエルを連れて旅に出る為、一芝居うつようです。 いやはやこの作戦は成功するのでしょうか。
余談ですが、先日うちの猫が子供を生みました。 パラノイアと名付け、かわいがっています。 いやあ、猫ってなんで可愛いんでしょうか。不思議です。


――まおっこ7





58 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:15:58.18 ID:qkkRIpP20
エルは城の中庭で、日課である剣の修行に励んでいた。 ジークの城に来て一ヶ月近く経つ。 依然ジークは影も形も無く、平和な時が過ぎていた。
と、思っているのは実はエルだけで、ジーク達魔王軍にとっては、心休まる日など無かった。 なにせ人類最強の男と、その宿敵である魔王が、一つ屋根の下で生活をしているのだから。

何も知らないのはエルだけだった。



「た、大変だー!」
「ん?」

中庭にローブに身を隠した魔族が駆け込んできた。 フードを目深に被り、長髪ということもあって顔はほとんど見えない。 魔王軍参謀兼、ジークの付き人のパラディンだった。




59 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:17:31.41 ID:qkkRIpP20

「勇者殿、実はジーク姫が大変なことにー!」
ジークは名前はそのまま、身分は囚われの姫とエルに偽っている。
「どうした?」
「早くこちらへー!」

妙に棒読みのパラディンに何の不審も持たないエル。 普通何か気付くと思うのだが、ナレーションの私がとやかく言えた話では無かった。


エルはジークが寝泊まりしている部屋まで連れてこられた。 中にはいると、白衣に身を包んだ魔族の男女の姿があった。 魔界の医者だとエルにもわかった。
ベッドの上には、長い銀髪の魔族の少女、ジークが横たわっている。




60 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:18:39.27 ID:qkkRIpP20
エルに気がつくと、男の方の医者がパラディンに言った。
「うーむこれは呪いですな」
「ナ、ナンダッテー!」


示し合わせたようにパラディンが反応する。


「ふむ。どうやらかなり強力な呪いらしく、このままでは命に関わる」
「そ、そんな馬鹿なー!」
緊迫した(?)部屋の様子に、エルは息を呑んだ。

「どうすれば呪いが解けるんだ?」
食いついてきたエルに、医者は一瞬ガッツポーズしたが、エルはそれには気付いていなかった。




61 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:19:59.67 ID:qkkRIpP20

「方法は一つだけあります。嘆きの森の魔女、リリージョの元へジーク様を連れて行くのです。  リリージョなら、呪いを解く方法を知っているでしょう」
「なら、今すぐ連れ……」
「ああなんてことだー!」


パラディンの叫びでエルの言葉が遮られた。 芝居がかった仕草でパラディンが頭を抱えている。


「おい、お前どうしたんだ?」
「勇者殿、嘆きの森を知らないのですか!」
「知るわけ無いだろ。俺は地上育ちなんだから」


当然だろ、という風にエルは応える。




62 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:21:03.72 ID:qkkRIpP20

「嘆きの森とは、恐ろしい森なのです。凶悪なモンスター共がうじゃうじゃ。  巨大な食肉植物が巣をはり、魔界一険しいダンジョンとして有名な観光スポットなのです……」
「観光スポットなのか……」
「観光スポットなのです……ああジーク姫はもう終わりだー!」


エルは考え込むように顎に手を置き、黙りこんだまましばらく何も喋らなかった。

沈黙が流れる。医者もパラディンもジークも、エルの返答を待っていた。 数分後、決心したようにエルは言った。


「城を離れたくは無いが、緊急事態なら仕方無い。俺がジークを連れて行く」
パラディン達は心の中で「よし!」と叫んでいた。




63 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:22:33.62 ID:qkkRIpP20

「勇者殿一人に任せる訳にはいきません。魔王軍の精鋭をお供につけましょう」 「ああ、そうしてくれ」
「では明朝出発ということで……」



「待ってくれ」


ベッドから上半身だけを起こしたジークが、複雑そうな表情を浮かべて言った。
「エル……何故貴様が、魔族の私の為に、そこまでしてくれるのだ」


部屋の中がしんと静まりかえった。 パラディンはせっかく上手くいった作戦がばれないかと、ローブの下で冷や汗を流していた。

エルはそれを聞いてきょとんとした顔になったが、次の瞬間には大笑いを始めた。 ジーク達は訳がわからず、涙を流して笑うエルを呆然と見つめていた。




64 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:23:36.58 ID:qkkRIpP20
ひとしきり笑うと、エルは言った。
「何故って、パラディン達だって、自分たちと何の関係も無い他国のお姫様のことで、大慌てしてるじゃないか」
ジークは本当は魔王なので、関係大ありだった。


「それに、種族が違ったからって、命の重みに違いがある訳ではないさ」
戦争中である魔族に対し、こんなことを言えば地上では死罪に等しい。 魔界にいるからこそ言える、エルの本音の言葉だった。



「そうか……わかった」
ジークは再びベッドに横になり、エル達がいる方の反対側を向きそれ以上喋ることは無かった。


「……行きましょう、勇者殿。明日の準備もありますので」
パラディンに促され、エルは半ば追い出されるように部屋から出された。




65 名前: まおっこ7 投稿日: 2007/09/06(木) 01:24:43.76 ID:qkkRIpP20
後ろ手にドアを閉めたパラディンは、エルにわからないように小さくため息をついた。
(ジーク様……貴方は何をお考えなのですか)

最近様子のおかしいジークに、パラディンは不安と違和感を覚えていた。
(……まあいい、今はジーク様の魔力を取り戻し、戦争に勝利することが最優先。何も迷うことなどない)


それでもパラディンは、先のことに対し漠然とした不安を感じずにはいられなかった。

~to be continued~


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年09月17日 22:41
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。