あきらめたら そこであらすじ終了だよ
あらすじ
誕生日に女体化してしまった魔王、ジークフリード。
生前の見る者全てに畏怖を与える面影はどこへいったやら。
今では彼は色白の少女。彼女もまた、特別な(ry
さらにジークを追い詰めたのは、女体化の際に自身にふりかかった恐ろしい呪いである。
その効力たるやジークを圧倒し、彼女は魔力が一切使えない体になった。
さしずめ戦えないサイヤ人と言ったところか。
そんな時にタイミング悪く勇者、エル・カインズが城に訪れる。
戦えないジークは「私はさらわれた姫です」と嘘をつき、なんとか誤魔化す。
そんなある日、ジークの付き人のパラディンの提案で、呪いを解く旅に出ることとなる。
ジークはエルに正体を隠したまま、一緒に旅に出ることとなった。
魔界最凶のダンジョン、”嘆きの森”へと……。
嘆きの森、初日。魔界で最も恐ろしいモンスター族である、ツヨースに襲われる。
ツヨースの中でもテラに次いで強いとされるギガツヨースに一同ちりぢりになって逃げる。
命からがらギガから逃れたとき、エルはパラディンが女だと、その時初めて気がつく。
背中に当たるおっぱいの感触を十分に味わった後、エルはパラディンと共にジーク達と合流した。
あまりにも長い一日が、終わりを告げようとしていた。
勝つのはあらすじ 負けるのキャラ紹介 勝つのはあらすじ 負けるのキャラ紹介
【ジークフリード】♀
最強の魔力を誇り、魔族で最高位についていたが、今ではか弱い少女。
透き通った瞳と色白の肌。腰まで伸びた銀髪。華奢な体つきから新しいファンが急増中。
【エル・カインズ】♂
魔法と剣技を融合させた技を扱える男。人間の代表”勇者”として魔界にやってきた。
金髪、ムッツリスケベ。自分の存在と使命を重く受け止めている。
【パラディン】♀
前々話で女だと発覚。いつも黒いローブで、フードを目深に被っている(今は破れてる)。
赤髪、赤目。ジークに強い忠誠を誓っている。何故かエルとフラグが立っている。
【タナトス】♂
魔王軍最強の騎兵隊、クロノスを統括している者。大柄で野蛮。
甲殻類と人の中間のような風貌。今最も死亡フラグが立っていると巷でもっぱらの噂。
~嘆きの森:湖のほとり~
大きなたき火をかこんで、十人の魔族と一人の人間が夕食を食べていた。
たき火の煙が満点の星空が輝いている空へと上っていく。
魔界の月は真っ赤で、禍々しい森の影と相まって余計不気味に見えた。
兵士たちは鎧を脱いで、各々いそいそと夕食を口に運んでいた。
エルはその時初めて兵士たちの顔を見た。
魔族は体格は人間に近いので、鎧をつけていれば人間に見える。
しかし鎧を外すとその風貌の差から、やはり彼らは魔族なんだと改めて認識させられる。
エルはしばらく兵士たちや、スープを何杯もおかわりして兵士たちから非難の目を向けられている
タナトスや、精悍な顔を崩さず上品に食事をしているパラディンをぼーっと見ていたが、やがて
その場に一人いないことに気がついた。
「なあ、ジークがいないみたいなんだが」
きょろきょろと辺りを見回すエルに、傍で食事をしていた兵士の一人が言った。
「ジーク様なら先ほど、辺りを散歩してくると言って、一人で行かれましたが……」
虎のような顔をした兵士の言葉に、エルはスープの入った皿をひっくり返し、仰天していた。
「ば、馬鹿! 一人でいたら危ないだろ!」
「え? ですが……」
「くそ!」
エルは傍の岩に立てかけていた彼の剣を取って、兵士が指さした方へ走り出した。
足が速く、誰かが止める前に既にエルの姿は闇の中へ消えていた。
「あ、あの……」
「放っておけ」
動揺していた兵士をパラディンは一喝した。
エルは人間なので、嘆きの森の魔獣たちは例外無く、夜は活動を停止するということを知らなかったのだ。
残された魔族たちは何事も無かったかのように食事を再開した。
~嘆きの森:湖の大岩の上~
パラディンたちが食事をしている場とは少し離れた所で、ジークは一人夜空を見上げていた。
辺りには岩が散乱していて、その中でも一番大きな岩の上に、ちょこんと腰を下ろしている。
ジークは死んだ者たちのことを考えていた。
今回の旅は、ジークの呪いを解くための旅であり、いわば私用。
自分の都合で隊の者たちの命を殺めてしまった。
ジークはそう思っていた。
しかし”勇者”エルを倒せるのは、”魔王”ジークのみ。
その為この旅は魔界全体の運命がかかっている旅ともいえる。
だからジークが気に病む必要は皆無なのだが、彼女はそこまで割り切ることは出来なかった。
岩から飛び降り、静かに夜空を反射させる湖に近づいていった。
おだやかな表情を見せる湖に、手をついてそっと身を乗り出す。
月光を浴び、水面に映るものは、涙を流す無力な少女の姿。
ジークの頬をつたった涙は、水面に落ち、かすかな水音と小さな波紋をつくった。
~To be continued~
最終更新:2008年09月17日 22:45