10 :スパンキーと片耳の猫:2007/10/08(月) 15:40:16.72 ID:pCcAu2/b0
バジリスクの襲撃から一夜が明けました。
まちは異様な雰囲気に包まれています。
クレイヴの命令により、一匹で行動するのをやめたまちの猫たちは
みな複数でかたまっています。
その中でもやっぱりスパンキーは一人ぼっちでした。
一匹でいて襲われたらひとたまりもありませんので、夜の集会まで
スパンキーはアリストテレスの家で過ごすことに決めました。
アリストテレスがいる家につくと、いつものように庭の塀を跳び越え、中に入りました。
庭を見渡すと、せっせと穴を掘るアリストテレスがいました。
「何をしているにゃ?」
スパンキーが話しかけると、アリストテレスは泥のついた顔で振り向きました。
「宝物を埋める穴を掘っているのさ」
その言葉にスパンキーは首をかしげます。
「宝物って何にゃ?」
「まだない」
「にゃあ?」
アリストテレスは不思議そうな顔をするスパンキーを無視して、また穴を掘り始めました。
スパンキーはそれ以上質問することはせず、縁側の下でお昼寝していました。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/08(月) 15:40:40.22 ID:G64QkLw/O
しかし過疎だな
にんきないのか?
そんなことはどうでもいいか
うなぎたべたい
らほ
12 :スパンキーと片耳の猫:2007/10/08(月) 15:40:41.07 ID:pCcAu2/b0
日が落ち、夜が来ました。
今日の集会は早めに行うということなので、そろそろ行かなくてはなりません。
まだ穴を掘り続けているアリストテレスに、スパンキーは集会には行かないのかと
尋ねますが、アリストテレスはちょっと首を振っただけで、また穴を掘り始めます。
仕方ないのでスパンキーは一匹で集会へ向かいました。
集会には既に大勢の猫が集まっていました。
みな引きつった顔をして、ぴりぴりとした空気が漂っています。
クレイヴが土管の上から全員集まっているか確認しています。
その空き地に一匹の猫、いや、子猫を口でくわえているので二匹の猫が、
ふらふらとした足取りでやってきました。
全身が傷だらけで、白い毛が血で赤く染まっています。
「誰だ」
クレイヴがその猫に問います。
そう、その血だらけの猫はまちの猫ではありませんでした。
血だらけの猫は、口にくわえた子猫をそっと地面に下ろすと、クレイヴに言いました。
「て、手短に話すぞ。俺は隣町の猫で、隣町は、バジリスクに襲われ、た……」
空き地にいた猫たちが一気にざわめき始めました。
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/10/08(月) 15:41:15.71 ID:CAMy3hzt0
1乙
14 :スパンキーと片耳の猫:2007/10/08(月) 15:41:22.22 ID:pCcAu2/b0
クレイヴは土管から飛び降り、血だらけの猫の前まで一足飛びでやってきました。
「話してくれ」
荒い呼吸をしているその猫は、もう長くないことがわかりました。
「す、数日前、やつらがやってきた。お、俺たちのまちは、一週間ほどで、全滅だ……。
バジリスクは全員で十三匹。リーダーはたぶん……ノエルっていう三毛猫だ」
「何故連絡をよこさなかった! ヴィラルは何をしていたんだ!」
ヴィラルとは、隣町の猫たちをまとめているリーダーで、クレイヴの親友でもある猫です。
血だらけの猫は、息も絶え絶え続きを話しました。
「このまちと提携していることを、やつらは知っていた……。
だから使者を送っても、みんな殺されたんだ。ヴィラルさんは……殺されたよ。
ノエルは、強いぞ。お前よりも……強いぞ……」
血だらけの猫はばたんと横向きに倒れ込むと、口から血を吐き出しました。
「しっかりしろ!」
「ク、クレイヴ……頼みがある……」
目を閉じた猫は、最後の力を振り絞って言いました。
「お、俺の妹……ニーナ……ろしく…頼む……このまちも……やつら……」
クレイヴはそのまま待ちましたが、血だらけの猫はもう喋りませんでした。
15 :スパンキーと片耳の猫:2007/10/08(月) 15:41:44.44 ID:pCcAu2/b0
血だらけの猫がくちにくわえていた子猫は、すやすやと寝息をたてて眠っていました。
この猫が、血だらけの猫の妹、ニーナなのでしょう。
「ヴィラル……くそ……ちくしょう……」
親友を殺されたクレイヴは、怒りと悔しさで心が壊れそうになりました。
なんとかそれを抑えて、無理矢理心を落ち着かせると、クレイヴは言いました。
「……みんな、今のを聞いただろう。隣町はバジリスクにやられた。
こっちにももうすぐ来る。逃げたいやつは逃げてもいいんだ。戦う気があるなら……」
空き地にいる猫は、みな同じ事を考えているようです。
それぞれが牙をむき出しにし、爪をたて触覚を揺らし、怒りを露わにしています。
彼らは、戦うことを決意しました。
続く
最終更新:2008年09月17日 22:58