クロス『狼と喧嘩と応援と・・』(承)

277 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:06:48.10 ID:pUoBKqBc0

放課後、舞台は再び変わって擬古中学校・・椿と祈美は学校から出るとそのまま一直線に祈美の自宅へと腰を
落ち着ける。椿は初めて見る祈美の自宅に興味津々のようで部屋の内装とかも特に気にしてないようだ。

「まぁ、汚いところだけど適当にくつろいでて。飲み物持ってくるから」

「それじゃお言葉に甘えて」

一旦、祈美が立ち去ると椿はお約束どおりに部屋の周りを物色して見る、部屋の中にはバイブやらアナルビーズ等
の如何わしいものがあったのだが大して気にせずに部屋の物色を続ける。そのまま物色を続ける中でテレビの上に
置いてあったフィギィアに目を止めると、そのまま手に取って触りながらその感触を肌で直に確かめる。

「へー・・テレビでは見た感じとは違うよね。造りも結構細かいし感心ものだよ」

「ほぅ、それに目をつけるとは中々お目が高いと見た!!」

「おかえり~」

祈美が持ってきたジュースとお菓子一式を受け取りながらささやかな談笑が始まる。


278 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:08:40.02 ID:pUoBKqBc0

「それにしてもある程度は予想してたけどまんまだったわ」

「フフフッ・・我基地への見学を歓迎するぞ中野一等兵!!」

「へいへい、そういえばパソコンがあるけど使ってるの?」

「何を言うッ!! 我々にとってパソコンは生命線・・いや、砂漠のオアシス同然!!!」

「あははは・・」

少し苦笑しつつも気持ちを切り替えて椿はパソコンの電源を入れ始める、起動するまで暫く待つ。そして画面が
出てくると椿は“勉強用”と表記されたファイルに目が行ってしまう。

「ねぇ、このファイルって何が入ってるの?」

「へっ? あ、ああ・・何でもない!」

「・・怪しい。よしっ、覗いちゃおう!!」

「やめれ!!!!!!」

「はいはい少し大人しくして頂戴」

椿はてがるく祈美の制止を振りほどくとそのままファイルを開いて中身を確かめる、ファイルは画像が大多数を
占めており動画の方もチラホラと見受けれるが、そのまま画像を見てみると内容は衝撃的なものであった。

280 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:09:53.91 ID:pUoBKqBc0

「何・・これ?」

「だから耐性がない椿には見せたくなかったんだよ・・」

椿が見た画像は異生物と女性の画像・・いわゆる触手モノと呼ばれる画像で初めて見る画像に椿はショックで
隠せない、椿の光景に祈美はただただフォローを入れるしかないが・・

「ま、まぁ・・世の中には人には理解し難いこういった世界があるんだよ」

「う~ん・・なら動画も見ちゃえ!!」

「ちょ!! それは勘弁しる!!!!!」

「この際だからもう怖いものはなし!!」

兄譲りの怖いもの知らずを受け継いでいる椿にはフォローとかは不要なようだ。しかしこのまま自分のパソコンの
中身を見られるのは不味いので話題を別の方に逸らす事にする。

「あっ、そうだ! 椿って音楽に長けているよね、このソフトで・・曲作ってみれば?」

「何これ?」

「音楽ソフトだけど音符打ち込むだけで曲が出来上がるんだよ。椿ならぴったりだと思うけど」

「へー、面白そう」

祈美に勧められるがまま、椿は持ち前の音楽性と発揮して作成に打ち込む、それをみて祈美はほっと
一安心しながらもファイルへの移動方法を模索する。

281 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:11:07.23 ID:pUoBKqBc0

椿が音楽に打ち込んでいる中でこの家の住人である辰哉がようやく家の中に入る。

「ただいま・・って、誰もいないのか。祈美は帰っているようだけど誰か連れて来てるのか」

家に帰ってようやく一息いれると先ほどの一件が頭をよぎる、翔はああいったもののやはり不安で仕方ないし
今流れてる平穏がぶち壊されるのかもしれない・・色々なビジョンが辰哉の頭の中でよぎるがどれもが
ハッピーエンドではなく何かしらの不安が散りばめられたものとなっている。しかし現実にいくら不満があろうが
その先の事は誰も解らないし今自分が感じている不安も単なる杞憂で終わるはずだ、即座に思考を切り替えて
辰哉は自分が作りだした希望へ身を委ねる。

「ま、何も起こらなければそれに越したことはないな。祈美の様子でも見てみるか・・」

先ほどのビジョンを掻き消して辰哉は祈美の部屋へと向かう。祈美自身が来客を連れてくるのはたまには
あるが、今回の来客は今までと違いどこか雰囲気が違うような気がする。そう感じた辰哉はゆっくりと祈美の
部屋に向かっていつものようにノックをしながらゆっくりと部屋の扉を開けて中に入る。

「おっす! 元気にやってるか」

「なんだ兄貴か・・」

「何だはないだろ。そちらの子はお前の友達か?」

「どうも・・」

先ほどから夢中になりながらパソコンで曲を打ち込んでいた椿も横から聞こえる祈美の声色や急に感じ始めた
人気などから辰哉の存在を把握して祈美に促されながら椅子から立ち上がり軽く辰哉に礼をして、辰哉の方も
椿の事をまだ知らないためかフランクな口調で椿に話しかける。

282 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:12:04.24 ID:pUoBKqBc0

「椿、これが噂のだらしなくてヘタレのうちの兄貴」

「余計なこと言うな!!!! ・・俺は木村 辰哉。こいつの兄だ、それにしても祈美の友達にしてはまともそうな子だな」

「アハハハ・・」

辰哉の発言に苦笑を隠しきれない椿、流石に兄と言うだけあって妹の特性をよく見抜いている・・椿も自身の兄と
つるんでいる辰哉を見て真面目そうで安心しながらこちらも初対面なので軽く自己紹介を始める。

「私は椿。中野 椿です、いつも兄がご迷惑を掛けています」

「ああ、椿ちゃんね。こちらこそよろs・・・・ってええええええっっ!!!!!!! まさかあの先輩の妹の・・椿ちゃん!!!」

椿の名前は辰哉もよく知っている・・というか後輩との話題にはちょくちょく出てくる人物で影響力も凄まじく、それに
椿の兄とはかなり親しくしているので何かやらかしり機嫌を損ねたりたら自分の明日はない、先ほどのフランクな
口調とは裏腹に歳の差など関係なしの超低姿勢で改めて椿を迎え入れる。

「あ、あああっ!! あの!! ここここ、こちらこそいつも妹がご迷惑を掛けております!!! 
もし妹が何かやらかしたのなら自分に言いつけてください!!!!」

「い、いや・・迷惑だなんて思ってませんよ。それにこっちもそこまでされると・・」

「・・兄貴、椿はこういったのが好きじゃないんだ。さっきみたいに普通にすればいいんだよ」

「そ、そうなのか。あ、アハハハ・・・」

もはや乾いた笑いしか出来ない辰哉であるが、対する椿はもうこんなことは慣れっこなので改めて自分の自己紹介を行う。

283 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:15:10.10 ID:pUoBKqBc0

「改めてよろしくお願いしますね、それに祈美とはよき友人をやらせてもらってます」

「あ、ああ・・祈美がお世話になってこっちも嬉しいよ。でもまさか先輩の妹とは・・」

「兄の事は今まで通りにしてあげてください。これでもあの愚兄には迷惑を掛けられてますから・・」

「でも・・」

「兄貴、椿はねこう見えても苦労してるんだよ。普通にしてくれたら助かるし」

祈美の言葉に辰哉は言葉では表しきれないほどのプレッシャーを感じる、ここは友人である祈美の言う通りにした
方がいいようだ。

「わかった。改めてよろしくな」

「はい。こちらこそ」

何とか挨拶をする辰哉ではあったのだが、少しばかり翔の存在が頭をよぎるのであった。

295 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:46:00.42 ID:pUoBKqBc0

数分後、和気藹々としながら椿は打ち込んだ曲を2人に披露する。

「ふぅ、出来た!!」

「おおっ! どんな曲?」

「へー、俺も興味あるな」

「えっと既存の曲だけどドリカムの未来予想図で~」

椿は音楽を再生させるとオリジナルと寸分変わらないメロディーが部屋に響き、ピアノを主体としたその軽やかな
演奏は見事に落ち着きを与える。もっとも作成をした椿自身は細かい音の微調整や鍵盤とは違った強弱のつけ方に
苦労しつつ試行錯誤を繰り返していたので納得の行くのに時間は掛かったのだが、こうして周りが聞きいってくれる
のをみてると嬉しく感じてしまうものだ。

曲が終わって辰哉は純粋に感心してしまい、製作者である椿に拍手を送る。


296 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:47:19.74 ID:pUoBKqBc0

「すげぇ・・すげぇよ!!」

「あまり褒められた事はないけど・・ありがとうございます」

「椿ちゃんってもしかしたら自分で作曲とか出来るの?」

「いえ、自分の曲を作るのは結構難しいんですよ。それにそこまでうまいとも思ってないし音楽を真剣にやってませんから・・それにこの曲はいつも弾いていたのでたまたま出来ただけですよ」

椿もピアノをやっていたときは一時的ではあるが音楽に関わる仕事をして見たいと思っていたし将来的には音大に
通って本格的な活動をしたいと思ってはいたのだが、自分が意志とは裏腹にそこまで音楽に真剣じゃないのと周りの
熱意が尋常じゃないことを肌で感じてからは一線置いて趣味程度に留めている。

自分は基礎は出来てもその次の応用はできないことを嫌でも痛感させられたので将来は家庭を持って余裕があれば
ピアノの教師をしたいと思っているようだ。

297 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:48:09.49 ID:pUoBKqBc0

「さて、んじゃ次はハルヒの曲を希望しようか」

「ちょっと、無茶言わないでよ。やってみてわかったけどこれは楽譜や曲が頭に入ってないといけないから
リズムだけ覚えていてもできないわ」

「何を言う! 我同志なら気合で・・」

「おいおい、祈美。椿ちゃんが困ってるじゃないか。余り無茶言うな」

「この兄貴は!! ・・あっ、そうだ。あれがあったような」

辰哉の助け舟によってホッとする椿ではあるが、祈美のほうも何か思い出したのか部屋をごそごそと
探し始め、小一時間後に祈美は1台のキーボードを探し当て机の上に置く。キーボードは見た目は少し型が古くて
動くのかどうか不安なのだがコンセントを挿すと見事に動き始める。

「何・・これ?」

「それは・・前に親父の親戚が置いていった奴か」

「そうそう、譲り受けたのはいいけど誰も音楽しなかったから物置に置かれて埃を被っていた代物だけど椿なら大丈夫だよ」

しかしながらこのキーボードが椿の前に置かれたとなると答えは一つしない。

298 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:48:32.05 ID:pUoBKqBc0

「んで、これ使って私に何か弾けと・・」

「ご名答」

「散々、音楽室で弾いてあげてるでしょ」

「お前な・・」

椿は当然の事として辰哉の方も少しばかり呆れ気味だ、しかしながら祈美のお陰で鈍りかけてたピアノの感覚も
昔と変わらずにいるのは感謝はしている椿ではあったのだが・・こればっかりは祈美の執念に折らざる得ないものだ。

「わかったわよ。今日は付き合ってあげる」

「さすが椿! 話が早い!!」

(まぁ、椿ちゃんのお陰で祈美も人並みの付き合いは出来ているようだな・・)

キーボードの感触を確かめると椿は再び記憶を頼りに曲を弾き始める。そんな姿に辰哉は自分の妹が普通であると
安心してしまうのであった・・

302 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 18:59:47.95 ID:pUoBKqBc0

誰もいない自宅、一見すると羽目を外せていい気分になるのだろうがこれが長時間に渡って続くとペースが崩れて
しまってどこか不気味だ。この家の住人である翔は今まさにそんな心境のままゆっくりと自分の部屋でのんびり
くつろぐ・・

「親父達が旅行に行ったのはいいが・・椿がいないとなんだかなぁ」

誰も居ない部屋で一人翔は自分を嗤ったのだがこんなこと考えても家には誰も居ないので仕方がない。
本来なら翔はバイトが休みなのを利用して恋人である聖と一緒に帰宅しながらそのままいつものように甘い甘美に
浸る予定だったのだが、今日は聖のほうが家の都合で一緒にいられないらしい。

それにここ最近は自宅にも帰っていないので両親からの小言も増える一方なので自宅に帰っていないと自分の
立場も少しばかり危うい。それに妹である椿にはなんだかんだ言いつつも最近は自分の不始末をさせているので
流石に拙いと感じている、なんだかんだと言いつつも妹である椿の存在がなければ今の翔はなかったと最近に
なってよく思う。

「俺もそろそろ落ち着かなきゃいけないかも知れんな」

今までは後先考えずに突っ走ってきた自分ではあるが現実はそろりそろりと息を潜めて自分に近づいてきている
のを最近よく感じている翔・・今まで無茶して来た分、それ相応のツケが一気に回ってきたようにも考えられるが
別の意味で考えたら自分はもうある程度は引き下がらなければ行けないというサインなのかもしれないと
ごちる翔であった。

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最終更新:2008年09月22日 23:41
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