339 名前:
◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 21:07:36.27 ID:pUoBKqBc0
更に日は経って翌日の放課後、辰哉は同級生である柔道部員から伝言を伝えられる。
「え? 五十嵐先輩が俺に話・・」
「ああ、部長がお前を呼んでた。もしかしたら柔道部のスカウトかもな、てことはお前とご同輩か」
「んなわけねぇだろ。ま、行ってくるわ」
そのまま辰哉はカバンを持って指定された場所へと向かう・・指定された場所へと着くとそこには務が笑顔で
待ってくれていた。さきの翔のことがどうも引っかかる辰哉であったが考えるのをやめると務に軽く挨拶をする。
「遅くなりました」
「心配しなくてもいい。こっちも急に呼びつけてすまない」
「どうかしました?」
なんら変哲のない務の対応に辰哉は翔の事とは無関係だと結論付ける。上級生でありながら下級生の自分に
謙遜してくれる務を見ると悪い事が出来る人間とは到底思えない、翔はああ言っていたのだが杞憂だと判断する
のにそう時間は掛からなかった。
340 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 21:08:17.83 ID:pUoBKqBc0
「まぁ、ここじゃ何だし・・我が部室に来てくれないか? 歓迎するよ」
「はい」
務に促されながら辰哉は一緒に柔道部に着いていく、その途中で務が例の件について話し始める。
「君の先輩にはすまない事をした。ああみえても周りは正義感が強くてね・・
現場を見た時は驚いたけど現行犯だから仕方なかったよ」
「・・・」
「だけど君の先輩がそう悪い人間じゃないと思っているのは此間の一件で確かだ、だから私は必死に先生に
減軽を嘆願したんだよ」
「そうだったんですか」
「さっ、そうこうしているうちに着いたよ」
硬柔織り交ぜた務の会話に疑いの余地なしの辰哉、そして柔道部室に入るのだが・・そこでは驚くべき光景を目にする。
341 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 21:10:37.94 ID:pUoBKqBc0
「辰哉!! 来るな!!!」
「お、狼子!! それにこの匂い・・」
部室内は換気扇を廻しているもののシンナーやガスの匂いが充満しており数人の部員がその快楽を
愉しんでいる。そして縛られている狼子・・この光景に辰哉はハッとしながら気が動転してしまうのだが
務は部室の鍵をキッチリと閉めてこの光景を目で愉しむ・・突然の出来事に辰哉は驚きつつも務に
猛烈な抗議をする。
「五十嵐先輩!!! これはどう言う事ですか!!!!」
「見てのままさ・・勿論心配は無用だ、教師にも話をつけてある」
「そう言う事じゃない!! 狼子を・・まさか先輩の事も――ッ!!!!」
「だとしたら?」
「こ、この野郎ォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!」
全てを理解した時には既に遅い、怒りが体中に込み上げ熱くなるのを感じた辰哉は我先にと務に
拳を向けるが・・武道をやっている務はひらりとかわすと返す刀で辰哉の鳩尾に一発放つ、突然の
痛みに辰哉は胸を必死で抑えながら苦情の顔つきのまま務を睨みつける。
342 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 21:11:54.81 ID:pUoBKqBc0
「中野の後輩だけあって少しはやるのかと思ったんだが・・とんだ期待はずれだな」
「畜生ッ!! 狼子を・・狼子を離せ!!!」
「・・おい、少しこいつで遊んでやれ」
「「「「「はい!!!」」」」」
務の指示に5,6人の柔道部員達が我先にと辰哉に牙を向く、辰哉もこのままではやられまいと
必死で抵抗するのだが相手は柔道の有段者で自分より格上・・しかもそれが数人いるとなると
太刀打ちすらできないもので成す術もなく辰哉はやられてしまう。
そんな光景に務はうっすらと笑みを浮かべたまま黙って見つめ続ける、辰哉の方は色々やられて
吐血をしながらも力の限り必死で抵抗するのだが立つのさえ精一杯な状況、そんな光景に狼子は
堪らず目を瞑り現実を忘れようとするのだが務がそれを許すはずもなくゆっくりと狼子の方へと
向かうと顔を無理矢理辰哉の方に向けさせる。
「ちゃんと見てやれよ。彼氏が必死で頑張ってるだろ」
「ッッ!!」
「やめ・・ろ・・狼子に触れるなぁぁぁぁ!!!!」
「辰哉・・」
「いい心がけだ」
残虐な宴は更に続きついに辰哉は朦朧としてしまってついに意識を失う。その光景に務は物足り
なさげな表情をしているのに対し、狼子は余りにもの光景に身体は竦み声すらも出ない。
343 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 21:14:10.70 ID:pUoBKqBc0
「あらら・・台本どおりに粘れよ。骨まで折るつもりだったのに、一応殺してはいないな」
「「「「「はい!!!」」」」」
「辰哉ぁ・・」
狼子はもうすすり泣くことしかできない、その光景に務は愉悦の表情で全てを見回す。
そんな状況が数十分続いただろうか・・突如として部室が轟音をうならせドアがぶち破れる、突然の
光景に務以外は行動をやめてドアの先一点に視線を集中させていたがそこからは2人の美女が現れる。
「・・・刹那、狼子を回収しろ」
「コクッ」
「刹那・・それに聖さん」
刹那を引き連れて現れたのは元不良でその2つ名は血に飢えた狂犬・・相良 聖その人であった。刹那は
聖の指示どおりに狼子の縄を解いて回収するとそのまま出口付近に退避する、対する聖はこの惨状を
見て全てを理解するとゆっくりと務の前まで歩みを進める・・
348 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:04:45.63 ID:pUoBKqBc0
「黒幕はてめぇだな・・部長さんよ」
「予定通りか・・台本どおりに期待を裏切らないね」
何故聖がここに来れたのかと言うとそれは狼子が連れ去られる前にに遡る、狼子の方はというと打ち合わせ
どおりに背後から無理矢理気絶をさせられてこの柔道部の部室へと運び込まれた。しかしこれまた偶然にも
刹那がその光景をバッチリと見ておりそれを聖に知らせここまで来たと言うことだ、ちなみにドアの方はと
言うと鍵が掛かっているのはすぐに分かったため渾身の一蹴りで簡単にぶち破ったのだ。
聖が来てもまだ余裕の表情を保っている務に対して聖の方は怒りに染まった鋭い眼光で務を睨み上げると
ありったけの怒りを込めて咆哮を上げる。
「てめぇ・・ただで帰れるとは思っちゃいないだろうな!!!」
「フフフッ・・フハハハハハハ!!!! 本当に期待を裏切ってくれないな君は」
「・・何が可笑しい」
「悪いが俺はこれから生徒会での会議があってね。少し席を外して貰うよ・・心配しなくても代わりは入る。おい!!」
務の一声によって部室からはぞろぞろと柔道部員が集まり、その数は全て合わせると40人は固い、この学校は
柔道に関してはかなりの人数がいるのでこれでも本の一部と言ったぐらいか・・務は軽く準備を整えると部員達に
一言残す。
350 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:05:24.25 ID:pUoBKqBc0
「逃げるのか・・」
「粋がるなよ、いくらお前が強かろうが所詮は女だ。体力自慢でしかも有段者のこいつらには適わんだろうな・・
お前ら、ここからは自由だ。こいつらに薬を盛ろうが愉しもうが好きにするんだな」
「「「「「「おおおおっ!!!!!!!!」」」」」」
務の一声によって全ての柔道部員は盛りがついた犬のように喚き興奮する、しかし聖はそれらの柔道部員達に
怯える様子もなく静かに務に向けて一言発する。
「じゃあな・・」
「・・てめぇのシナリオ、いつまで持つかな?」
「恐怖の余り狂言か・・やれ」
務が裏口から消えて行くのと同時に柔道部員達は一斉に聖に向かい始めた。
351 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:06:44.16 ID:pUoBKqBc0
無事に裏口から出た務はそのまま染み付いた制服の匂いを協力な消臭剤で消すと何食わぬ顔で生徒会室へと
向かうが、どうも聖の言葉と余裕の姿勢が一々引っかかってしまう。
(チッ、俺のシナリオは完璧だ・・中野の停学が終わったらそこにはヤク中と化した旧友との再会だ。
アドリブなど要れる隙もない筈だ)
今までに自分がプロデュースしたシナリオは何ら誤差もなく完璧に遂行できたと務は判断している、売春や
いじめ等の黙認を握って脅している教師は3人ほどその中には自身の顧問である柔道部の顧問の名前も
入っている、だから自分には逃げ道はいくらでもあるし手は汚れない。
そう判断した務は生徒会室へと入るのだが・・そこには誰もいなく驚くべき人物が務を出迎えてくれた。
「よぉ・・プロデューサ」
「ききき・・きっ、貴様は中野 翔!!!! それに会議は――ッ!!!!!」
「ああ、それなら急遽中止になったってよ。舞台はここからが本番だ・・」
なんとそこにいたのは停学中で今は家にいるはずの翔本人であった、突然の翔の来訪に務は動揺を隠せず
持っていた資料をばさばさと落としてしまう。しかし翔はそれにも目もくれずそのまま立ち上がるとゆっくりと
務の方へと歩みを進める。
「・・今回は俺を嵌めただけじゃなく、よくもダチまでやってくれたな!!!!」
「今更、言っても遅いよ。今頃は部室で楽しい打ち上げでもやってるんじゃないか?」
動揺していた務ではあるがすぐに今の状況を思い出すとシナリオはまだ修正可能だと判断する。
しかし当の翔は暫くじっと黙っていると・・すぐさま猛スピードで左ストレートを務の顔面にぶつける、務は決して
油断していたわけではないのだが翔のスピードが余りに早すぎたので対処しきれずそのまま綺麗に左ストレートを
貰ってしまったのだ。殴られて出た血を右親指で拭き取ると務はそのまま柔道の構えに写る。
352 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:08:45.50 ID:pUoBKqBc0
「フフフッ!! 少しはやるじゃないか・・だけどさっきの不意打ちはもう効かん!
これでも俺は黒帯を持っているぐらいだからな」
「だからどうした、あいつも言ってたと思うがもうてめぇの書いたシナリオはお終いだ・・こっからはぶっつけ本番のアドリブだけだ!!!!」
「(構えも何もない隙だらけな姿・・勝ったな)強がりを・・俺のシナリオは完璧なんだぁぁぁぁ!!!!!!」
先手必勝と言わんばかりに務は翔に襲い掛かる、そして翔の学ランを掴むとそのままがっちりと構えて柔道の
基本である全身全霊の力を込めて投げようとする。そして務は学ランを持ったままそのまま投げる・・計算では
床の方は固く翔は素人なので受身は絶対に取れないと踏んで更には頭から打つように微妙にコントロールを
しているので務は内心ほくそえむ。
そのままゆっくりと翔の亡骸を見ようと視線を見るが・・務が持っていたのは翔のビリビリに破けた学ランの
残骸、そしてそのまま務の体からは何かに当たった鈍い音が響く。務が気がついた時には自分は倒れてて肩から
体中に掛けて激痛が走りこの世の物とは思えない叫び声を上げる。当の翔はというと椅子を片手に務の様子を
じっと見つめていた・・
353 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:10:07.62 ID:pUoBKqBc0
「ギェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!! 痛い!! 痛ェ!!!!!!!!!!!」
「てめぇが俺の学ランに掴む事は予測済みだ。だから俺は予め学ランにお前が投げたら切れるように細工をして
学ランが切れたらその隙にこの椅子でお前の方をブッ叩いたんだよ。俺は昔から喧嘩ばっかしてたがてめぇの
ような格闘技経験者とも何度も喧嘩したから癖が分かるんだ。
ま、その様子だと多分神経の2本ぐらいは切れてるようだな・・」
「ごのやどう・・・」
「・・てめぇのした事はこんなんじゃ足りねぇんだよ!!!!!!!!!」
「ぎ、ギギャァァァァァァァァ!!!!」
そのまま翔は手に持った椅子を振るい、務の体中にこれでもかと言うぐらいに椅子を思いっきり叩きつける。
普通なら骨が折れそうな感じだが務の場合は柔道を嗜んでいたともあってか骨は折れず全身打撲程度で済んだ。
数分後、務は動くことさえも精一杯で全てが終わったと判断した翔はそのまま椅子を放り投げる。
354 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:11:10.44 ID:pUoBKqBc0
「アガガ・・ガガッ・・・」
「フンッ、これぐらいじゃまだ足りんが・・人殺しにはなりたくないからな」
そのまま翔は目を瞑ると・・誰かに向かって声を掛ける。
「おいっ!! いい加減出て来たらどうだ・・ナンバー2さんよ」
「流石だ・・中野 翔君。いや殺戮の天使だったかな・・」
翔の声に合わせるように生徒会室の窓から現れたのは3年生、応援団参謀役副長の宗像 巌。
筋骨隆々でいかにもな感じだが性格は仏を具現化したようなもので別名、仏の宗像・・彼ら応援団の活動は
部活内外で有名であり時には他の部活での揉め事も片付けるといった荒行事を行う事もある。
「こいつ・・五十嵐 務は前々から応援団でもマークをしていた人物だったんだが中々手を出せなくてな。
尻尾を出す機会をずっと伺ってたのだ」
「そんなにこいつは有名だったのか・・」
「ああ、OBや辞めた連中に聞いたが・・柔道部の実情は本当に酷かったらしい。会員制の乱交や売春や
援助交際の手引きは当たり前、さらには薬や色々な事まで手を出してたらしいからな。さらに生徒だけではなく
教師も意図的に巻き込んでいたのだから余計に始末が悪い」
巌から実情を聞かされた翔であったがまさかこれほどまでとは驚きを隠せないものだ、しかしながら何故、務は
自分にこうまでして恨みを持っているのかは解らない・・だけども今はそんな事より聖達の安全が第一だ。
355 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:12:39.98 ID:pUoBKqBc0
「あいつらは・・」
「・・心配しなくてもさっき柔道部に乗り込むために応援を引き連れた桃井から連絡があった。
一応全員無事だそうだ、しかも駆けつけた時には女1人で柔道部全員倒した後だったみたいだぞ」
「あいつらしいな・・そこまで強くなってたのかよ」
「後はこっちの仕事だ。こいつから色々吐き出して全ての事実を明るみにする、こればかりは学校の
問題を大きく逸脱してるしな・・」
巌の言う通り、ここまで来れば学校問題だけでは済まされないだろう。一応務たちは未成年と言う事で
それなりには甘くしてもらえるのだろうが、それでも全校生徒達に与える衝撃は凄まじいものだと容易に
想像できる。巌は務を抱えるとこのまま職員室へ連行してこの後予定されている職員会議で務の実態を
ありとあらゆる所からいぶり出すつもりだ。
しかし翔は巌を見てるととある事を思い出す。
356 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:13:35.17 ID:pUoBKqBc0
「んなことより、早く団長とくっつけよ。もういい加減、何回ぐらい振られてるんだ?」
「それは君には関係ない話だ・・」
「全く、そんな逃げ腰だから振られるんだよ。あっ、そうだ・・学ラン代持ってくれないか?
俺のお陰でそいつ捕まえられたもんだし・・」
「・・図々しい奴だ。ま、今回ばかりは特別にいいだろう」
「さすが応援団の仏様だ!」
巌は財布から万札2枚取り出すとそっと翔に手渡す、これで新しい学ランが買えると踏んで喜んでいた
翔であったが巌が一言。
「釣りはちゃんと返せよ」
「・・ケチ野郎」
「それと早く保健室に行って来い」
「お前そんなんだから女にモテないんだよ」
最後の翔の言葉を無視して巌は務を抱えながら生徒会室へと消えていった・・
357 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 22:16:15.97 ID:pUoBKqBc0
エピローグ
巌から言われて翔は保健室に行くとベッドには意識を失ったまま倒れてた辰哉とそれに付き添って眠っていた
狼子の姿があり、心配させられたものだが辰哉の方は命に別状はないらしく後もう少ししたら目を覚ますそうな。
それとなぜかその横のベッドには応援団の補佐である桃井 国仁が眠っていたのだがその理由は聖が全ての
柔道部員を倒した後にその巻き添えを見事に喰らって気絶・・とかなり不幸な偶然である。
その聖はと言うと向かってくる柔道部員を片っ端からなぎ倒し本人は無傷の状態でピンピンしていた。
本人曰く、こういった異種格闘戦はもう手馴れているようで準備運動にも満たないぐらいだったようで動き足りない
ようだ。礼子の方はと言うとこれから行われる職員会議の準備で忙しいらしい、怪我人をたったと手当てすると
そのまま保健室から立ち去ってしまったようだ。
「しかし、柔道部全員なぎ倒すとか・・お前らしいと言えばお前らしいな」
「でもあんなので俺を倒そうと思ってたなんてあの部長も思ってたより頭悪いんだな」
「♪♪」
それで刹那の方はと言うと柄にもなく狼子を心配しながらも狼子が眠ってしまったと判断するとそのままいつもの
ように聖に懐き至福の一時を過ごしている。
365 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 23:01:44.87 ID:pUoBKqBc0
「で・・あの、刹那ちゃんだっけ? こいつは俺の彼女なんだけど・・」
「黙れ・・殺すぞ!」
「だそうだ。こいつは頭が固くてバカだもんな刹那~♪」
「♪♪~」
(俺って・・一体)
翔が隅で凹んでのの字を書いている中で長らく眠っていた辰哉がようやく意識を取り戻す。
「狼子!!! ・・ハッ、ここは保健室か。狼子起きろ」
「う、う~ん・・あっ、辰哉!! 目が覚めたのか」
「ああ・・怖い思いさせてゴメンな」
「バカッ!! でも辰哉が無事で良かった・・なんか噛みたくなってきた、噛ませろ!!」
「いででででで!!!! お、俺はまだ怪我してるんだぞ・・」
しかし辰哉はこれも悪くはないなと思いながら今までの経緯を狼子に尋ねる。
366 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 23:02:26.38 ID:pUoBKqBc0
「と、ところで・・あれからどうしたんだ?」
「お前が気絶した後、あれから聖さんが助けてくれて柔道部全員をなぎ倒してくれた」
「そうだったのか・・相良さん、ありがとうございます」
「俺よりも刹那や狼子に感謝しろ。お前が眠ってる間、ずっと付き添っていたんだぞ」
ちょっぴり先輩の威厳を見せつつ聖は刹那を離すとゆっくりとまだ落ち込んでいる翔の方へと向かって蹴りを入れる。
「痛ッ! 何すんだよ!!」
「うるせぇな!! いつまでもボサッとするな!!」
「ったく・・おっ、目が覚めたのか」
「先輩!! どうしてここに・・それにあいつは!!!」
辰哉が一番気になるのは務の行方、それに何故停学中の翔がこんなところにいるか謎であったが翔は順を折って
今までの経緯とこれまでの行動を説明する。
367 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 23:06:52.25 ID:pUoBKqBc0
「まぁ、落ち着け・・奴は俺がブッ倒した後、応援団に引き払った。そんで俺が何故こんな所に入るのかと言うと・・長年の勘だ」
「はぁ・・」
という訳でもなく、これは翔が思いついたの策の内。あの時、友に頼んだのは完全なフェイクで務に友と打ち合わせを
して時間稼ぎを立案しているように思わせるため。務の配下の柔道部員に聞こえるようにわざと目立ったような
行動をしながら友に辰哉の事を頼み込む。しかし本当の頼みは友は役員をしているのでその伝で生徒会の
スケジュールを聞き出して務の日程表だけを改ざんして生徒会の会議がない日を会議のある日と書いて
その日程表を友にすり替えてもらう。
こうして翔は誰も居ない生徒会室に務を待ち伏せて襲撃する事が出来たのだ、例え友が日程表のすり替えが
失敗しても停学届けを出す時に職員室から頂戴した原本の日程表は務のファックス番号と一緒に友に渡して
あったので絶対に成功すると確証があったのだ。
368 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 23:08:15.68 ID:pUoBKqBc0
「ちょっと待ってください。それだと友ちゃんが予め翔さんと綿密に打ち合わせしているのが絶対条件じゃないですか!! いつの間に・・」
「確かに最初お前を呼び出した後、俺は友ちゃんにお前を止めるように頼んだ。
しかしそれは俺が奴らに時間稼ぎをしているように思わせるための芝居・・その後、俺は携帯のメールで本当の
用件を友ちゃんに頼み込んだんだ。
流石にこればかりはお前の事の後だから引き受けてくれるのか不安だったけど・・友ちゃんは引き受けてくれた。
こうして俺の策は完成して」
「あいつは自分で書いたシナリオどおりに動いていると思っていたが実態はてめぇが書いたシナリオ通りに事は
進んでいた・・ってことだな」
「おおっ、お前にしてはよくわかったな!」
「気にいらねぇな、そんな女々しいことしなくても直接ぶっ潰せばよかったじゃねぇか!!!」
「それができねぇからこの策を思いついたんだよ・・」
策を好まず正面から潰す聖らしい意見でもあるが、しかしながら翔の方法でも無事に務を潰す事が出来たので
これも良しと考えるのも悪くはないと思うのであった。
369 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 23:12:15.62 ID:pUoBKqBc0
翌日、全校生徒や保護者を交えた集会が開かれ重苦しい雰囲気の中で校長が事後報告を始める。
今回の件で処分者はかなりの物となり柔道部に関しては務も含めて約半数に上り、そのうちの8割方が
部活は退部させられ中にはその中には退学者もありこの学校で一大勢力を誇っていた柔道部はものの
見事に崩壊する。
教師に関しても務に握らされた者は全員懲戒免職処分となり教育委員会の厳しい取調べや社会的責任を
下されるのは間違いなく、いくら務に脅されてたとはいえ事実は事実なのでそれに対する処分は
相当きつい物となるだろう。
務に関しては退学処分は無論の事、更には押収された数々の証拠を警察に突き出され刑事処分を待つ身と
なっている、更に昨日の柔道部室の様子をビデオで録画した映像が全校集会に流され会場にいた生徒は
無論の事、保護者からも普段の務のギャップをかなり感じかなりのショックを受けたようで終始無言のまま
事の流れをただただ聞いている。
このような証拠を誰がどのように集めたのかは語る必要はないとも思うので流しておく、非常に重苦しい
雰囲気のまま波乱の全校集会そのまま幕を閉じた。
370 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/08/05(火) 23:13:48.40 ID:pUoBKqBc0
「しかし、あいつの動機があんなしょうもなかったものだったとはな・・お前覚えてるか?」
「全然。それに振った奴の事なんて一々覚えてねぇよ」
全校集会が終わった後、当事者である聖と翔は務の動機を聞くことができたのだが・・その動機はあまりにも
下らない物で聖に関しては女体化した時に一番に告白したのだがあっさりと振られたのと翔の場合は昔に
翔が中学生の時に徹底的にやられたのを恨みに思いこの事件を起こしたそうな。
2人とも動機を聞かされた時には昔の務の事など点で覚えているはずもなく、余りにものアホらしい動機で
何度もお互いの顔を見合わせたほどだ。
「そういや、椿が珍しく遅く帰った事があったな。何をしてるのやら」
「お前と違って健全な方だろ。お前も少しは家族は労れよ」
「へいへい」
さっきの2人の会話で務の存在は綺麗さっぱりと消え去る、元々2人にとっては務などそのような存在なのだ。
青々とした空が2人をじっと見守り時は進む・・
―fin―
最終更新:2008年09月22日 23:43