2008 > 10 > 08(水) ID:bGFUDmqa0

コミックマーケット


最近気づいたことがある。
いや、本当は以前から気づいていたことだが、やっと理解した。
所詮人間は見た目が全てだ。
性格とか、人間性は後からついてくる。
だからこそ、今俺はこんな目にあっている。

「な、頼む!3時間でいいから!なっ?」
ある休日の昼下がり、裕樹が頭を下げて俺に頼みごとをしてきた。
色々と会話の後のこの言葉だが、それを語るのは面倒なので一言でまとめよう。
「なんで、俺が、コミケにいかなきゃならないんだよ」
そう、誘われたのだ、コミックマーケットに。

裕樹が『そっち系』に興味があり、そういった場所に行っているのは知っていた。
だが、俺は興味がない、まったく。
故にこの答えだ。
「必要なんだって、どうしても!」
「だーかーら、その理由を教えろって、さっきから言ってるだろうが…」
どうしても連れて行きたいらしく、彼是30分も俺を勧誘してる…。
困ったものだ、本当に。
俺にはそういったものに対しての興味がまったく、ない。
そして噂じゃ、相当な人が行くとかも聞く。
ということは、『人込み+興味がないもの大集合=行く必要性0%』になる。


「第一、今までだって一人で行ってたんだろ?」
「それはそうだ…が、今回は事情が違う!!」
突然、大声と共に裕樹が立ち上がる。
わざわざ俺の家まで来たからには、よっぽどの理由があるのだろうとは思っていた。
そして今、裕樹はそれを語ろうとしている。
そう、政治家のおっさんのような演説が始まるのだ。
そう思った…。
「翔!今回はなんと15万円の軍資金がある!」

……は?
椅子に座りに肘をついて聞いていた俺にとってその言葉は理解から程遠い場所に位置していた。
15万円の軍資金がある、つまり沢山買う、だから俺を…誘う?
「えっと…、それはあれですか、荷物持ちとか言う…」
「ん~、まぁそんなか、」
「帰れ」
一瞬俺の部屋に静寂が訪れる。
そして笑顔の裕樹の顔が、5秒で困惑のものになった。
「ど、どうして?なんで?間違ったこと言ったか?」
いや、一つもいってないが、自分の趣味には自分の労力を使え。
俺は困惑している裕樹の目にそう訴えかけた。
すると裕樹も理解したのか、再び笑顔を取戻し俺に向かって言った。
「よ、よし、わかった、一緒に買うのを決めよう!それならい、」
「帰れ」

伝わらなかった。


その後も必死に裕樹は俺に説明をしていた。
15万もあれば、どこだかの東○の同人誌が買えるやら、一緒に○ン○ムの纏め買いできるとか。
しかし俺は聞く耳を持たないまま、P○Pのモ○スター・○ンター2nd○をはじめた。
こういうのなら別にいいんだがな…。

別に俺は裕樹の趣味を否定するつもりはない。
それぞれの個性だし、見ず知らずの他人でもない。
だから理解もしているさ。
だが俺に興味がわかない事に変わりはない。
それに俺達は高校2年生になった、俗に言う中弛みの学年だ。
正直、勉強を俺は優先している…。

「…ん?」
いつの間にか静かになっていた。
裕樹はベットに座り込んで俯いていた。
ちょっと無視しすぎたかな?
「いや、まぁ、お前の熱意は伝わったが、」
「本当はさ、違うんだ…」
俯いたまま裕樹は俺の言葉を遮った。
「違うって、…何が?」
PS○を置いてベットの方を向く。
どうやら本当の理由がやっと聞けるようだ。


「んで、その理由って?」
「ん、いや、ほら、なんていうのかな…」
どうもはっきりしない、何が言いたいんだ?
「あ~もう、はっきり一言で、はいっ、3、2、1、どうぞ」
「一緒に、さ、いて欲しいんだ」
いや、そりゃそうなんだろうよ、荷物持ちだろ?
「ごめんだね、まったく、自分で持てよな…」
「違うんだ、そうじゃない…」

裕樹はやっと俯いていた顔を上げて俺の目をまっすぐ見た。
さっきのお喋り野郎とは違う目をしていた。
「前のままなら、別に誘わなかったんだ」
前のままなら?
…あ、なるほどね。
「なんだ、そういうことか」
「あれ、わかった?」
少し驚いたような顔で俺を見ながら裕樹が言った。
さすがにここまでくればわかる、というか分からなかったら鈍感すぎるだろう…。

89 名前:コミックマーケット[] 投稿日:2008/10/08(水) 19:27:04.34 ID:bGFUDmqa0
「つまり『男女』のペア、としていたい訳か」
ズバリ核心を突いてみた。
そして思ったとおり、裕樹は顔を赤らめた。
「いや、か?」
「…ううん、いいさ。こんな俺、というより『私』でよければね」
まさかの告白に案外と動揺はしなかった自分に驚いた。
正直俺もそうしたいと思っていたのかもね。
でも、まさかデートでコミケに行くとは…。
いや二人ならいいか、周りは気にしないさ。

「じゃあ、行ってくれる?」
「ああ、もちろん。できるだけ女らしくしてみるよ」
「やった~~!いやーよかったよかったー」
「でも荷物はしないよ?」
「もちろん、アレは適当な口実だしね」
「まったくもう…。それで、いつ?」
「あ、ああ。次の土曜日さ。あ、でも…」
「でも?」
「並ぶからね、早い時間から…」
「ん~。いいよ、一緒にいるよ。で、何時から並ぶの?」
「そうだね~、午前1時前には着き、」
「やっぱり帰れ」


終わった~。うまく男と女が逆に見えたかなー…。まぁ、許しておくれ、これで。


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最終更新:2008年10月08日 22:29
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