ペプシマン
「え? なにこれ、走るだけ?」
「いや、ジャンプもできるよ」
「すっげー単調だねぇ……」
「まあまあ、これが面白いんだって」
目の前のテレビ画面には、ただ愚直に走り続けるペプシマン。
それ以外の生き方を知らないみたいだ。
「このゲームの凄い所ってのは、それまでずっとギャルゲーばっか出してた所から急に出たって事なんだよ」
「なんだその無駄知識」
「まあまあ、いつかお前が雑学王とかに出るようになったら使えるかもよ?」
「はっ」
鼻で笑ってやる。
タレント稼業を引退したばかりの俺には皮肉にしか聞こえない。
「ああ! だからそこはスライディングだって!」
「うるせーな、わぁってるよ!」
こいつは、俺を元気づけようとしているのだろう。それぐらいわかる。
だが正直、うっとおしい。
急に女になったぐらいでクビにするあの事務所には確かに失望させられたが、その程度で人に頼るほど弱いつもりはない。
「貸してみな!」
「あ、おいっ」
だけど確かに、友人と一緒にTVゲームをやるだなんて、ゲイノウジンなんかやっていたら手に入れられなかったモノなのだろうと、思う。
だから、本当に少しだけ、ありがとうとは、思っているよ。
最終更新:2008年10月09日 04:57