安価『VIP見てる暇でもあったら同級生にありがとうの一言でも言ってこい』

「うわあ、すごい久しぶりだね!」
「おっ、お前変わったな!」
 至る所から、同級生との再会を懐かしむ声が聞こえてくる。

 中学を卒業してから、早5年。俺達は同窓会を開いていた。
 大前とかつつじとか、同じ高校に進学して地元に残った奴らだったら久しくも何もないのだが、5年ぶりに顔を合わせる人も結構いる。
 地元に残っている奴らからすれば、懐かしいという感覚が薄い。
 だが、東京を離れて就職したり、遠方の大学へ進学し一人暮らしをしてる奴らにとっては、とても懐かしいと感じている。
 高校とかは、多少遠方の奴もいたけど、ほとんどが自分の家から通ってた人ばかりだったし、いつでも会う気になれば会えた。
 だけど、今となっては会いたくても時間が合わなかったり、距離が遠かったりと、こういった機会でないと顔を合わせることすらできない。

 いやぁ、それにしても皆変わってねぇな。
 大前は相変わらず馬鹿だし、水上さんは相変わらず元気でかわいいし。
 ああ、水上さんかわいいなぁ~。
「コラッ、つばさ! 何水上さんのことジロジロ見てるのよ。」
 鼻の下を伸ばしながら水上さんのことを見ていたら、いきなり頬を抓られた。
 イテテと言いながら、抓っているその手をパチンと叩く。
「つつじ、俺そんなにいやらしい目で見てた?」
「うん、すっごくいやらしい目で見てた。 このケダモノ。 変態。 包茎野郎。」
 以前はこんなことを言うような人じゃなかったような気がしたんだけど、これも俺の影響なんでしょうかね?
「ごめんごめん、俺はつつじだけしか見ないから。」
 そう言ってギュッと抱きしめる。周りから熱いねぇと囃し立てる声が聞こえてくるが、気にしない。
 こいつはこうでもしないと、すぐに拗ねてしまうから大変だ。独占欲が強いというか何というか・・・。

「おう、つばさに言いたいことがあったんだけど・・・」
 同窓会も中盤に差し掛かり、皆いい感じに出来上がって来たくらいの頃、突然大前が真面目な顔で話しかけてきた。
「おう、どした?」
「いや・・・その・・・ありがとな。」
 大前は、酒に酔っているのか恥ずかしいからなのか、全身茹でダコのように真っ赤だ。
 鳥山は、意味が分からずポカーンとしていた。



同窓会前日、大前はいつものようにVIPのスレを徘徊していた。
 中学の頃にどっぷりとハマりだし、今に至る。
 今では一端のヴィッパーとして活躍している。
「ちょwどう考えても釣りだろwwwww(だけどクリックしちゃうんだな)」
 いつも釣られてばかりの大前。だがこの釣られた時の快感が癖になってしまっているんだとか。

 言うまでもなく、釣りでしたけどね。

「やっぱり釣られたwwwwwwwスレでも立てるかwwwwwww」
 にやにやしながらスレのタイトルを考える。
 少し悩みながら、パッととあることを思い出す。
「そういえば、明日同窓会だったよな・・・」
 カチャカチャとキーボードを打つ手に、いつも以上に力が入る。
「よし、これでいいか。」
 大前が立てたスレのタイトルは「同窓会で、安価行動する」
「ま、どうせ安価するだけで何もしないんだけどなwwwwwwww」
 ククク、どんなことを書いてくれるのかと少し期待をする。
 そしてすぐに、>>2に書き込みがきた。

「VIP見てる暇があったら同級生にありがとうの一言でも言ってこい」

 なんだかすごく寂しい気分になってきた。ついでに目から塩水が出てきた。
 明日同窓会だって言うのに、俺は何でVIPなんかに入り浸ってるんだ?
 >>2の言うことはごもっともだ。明日俺は皆にありがとうと言おう。

 大前は涙を袖で拭いながら、>>2に対するレスをする。
 何て書こうか悩む。すごく悩む。眠くなるほど悩む。

 数分後、机に突っ伏して寝ていたというのは言うまでもない。<終>


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最終更新:2008年10月15日 00:30
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