『穴掘りシモン』

 緊張している。
 それは何故かっていうとホラ、アレだ。決死の告白の返事を待っているからだ。
『明日まで待ってくれ!』
 そう言って走り去って行ったアイツ。正直、張り倒されるかと予測していた俺にとっては、意外な行動だった。
 黒い瞳、赤い唇、白い肌、艶やかな髪。どれを取っても最高だ。だからこそ、俺なんか相手にされないと思っていたのに……。いやいや待て、すぐに断られなかっただけであって、OKの返事をもらったわけではない。思い上がるな、俺……!

「よ、よう」
 校舎裏で一人悶えているところに、とうとう現れた。
「木崎……」
「その、なんだ、昨日一晩かけて考えてみたんだが………」
「お、おう」
 う、うわー! 緊張してきたあ!
「こんな俺なんかで、えと、良ければ………」
 え? え? えええ?!!
「つ、付き合おう………ぜ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
 咆哮。
「わわっ、何だよ急に?!」
「あ、あ、あ、ありがとうございます! こここちらこそよろしくお願いします!!」
「そ、そんなに嬉しいのかよ……」
「すっげえ嬉しい!! 生まれてきてよかったあ!!」
「は、恥ずかしいこと言うなよ…」
「本心なんだから仕方ないだろぉ!」
「………しかし、よく分かったな」
「…………ん? 何が?」
「今までずっと隠してきて、誰にもバレなかったのに」
「だから、何がさ」
「だから、俺が女体化したってコト」
「………………………………………………………………………………………………」
「胸だってサラシ巻いてさ、体育だってシャツ脱がないで着替えてたし、学校じゃあトイレに行かないようにまでしてたってのに……」
「………………………………………………………………………………………………」
「やっぱ、そのぉ、……愛のチカラってやつ? 言ってて恥ずかしいけどさっ」
「………………………………………………………………………………………………」
「訊くけど、いつから分かってたんだ?」
「もう会った瞬間からにきまってるだろう!!!!」
「や、やっぱか?! へへ……」
 な、なぁに。別に何もおかしくなんかない。何も間違っちゃいないぞ。何も勘違いなんかしてねぇよ。
 これでいい、これでいいんだ………。



 このとき木崎は知らなかったが、この男、志門は一部の男子生徒からは「穴掘り志門」と呼ばれ恐れられている生粋のゲイなのであった―――。


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最終更新:2008年10月24日 22:29
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