がらんとした店内。これだけ客がいないのならば、多少のお喋りは許されるだろうと思い、手近にいた女の店員さんに声をかけてみる。
「あの、崎村って人、ここで働いてますよね?」
「え? ………は、はあ」
「最近アイツ、学校に顔出してなくて……あ、いや、辞めさせろって意味じゃないっすよ? それで、バイト先には顔出してるのかなーって」
「崎村、さん、ですか……」
んん? なんだこの意味ありげなどもり方は。
「知ってるんですか?」
「いや、全然知らないです!!」
ぜ、全力で否定しなくても……。
ますます怪しいと思ってきた所に、カウンターの奥から店長みたいな人が、女の店員さんに呼びかけた。
「崎村くーん、ちょっといいー?」
「………!」
店員さんの「しまった」といった顔。
「さ、崎村……くん? って、お前……まさか」
「じゃ、じゃあ俺は……じゃない、私は仕事がありますんで!!」
言い捨てるとカウンター奥に引っ込んでしまった。
「あいつ……そういや16になったんだっけか」
後日の話である。
「あ、あのお、ご注文は何になさいますかぁ?」
再び相まみえる俺と店員さん。完全に顔が引きつっている。
「スマイル」
「……は?」
「スマイルだよ、スマイル」
「ええーとぉ、お客様あ?」
「ほらほら、メニューの端っこにも書いてあるだろ。スマイル0円ってな。はやくしてくれよ」
「(ぶちっ)…………てめえ、いい加減にしやがれよコラアアアアアア!!!!」
「ぼぼ、暴力反対ぃぃーーー!!」
最終更新:2008年10月25日 12:20