すっかり日の暮れた放課後。>>231は教室の自分の席で窓の外を眺めていた。
もうじき来るであろう、自分自身との別れを惜しんで。
雨が降っていた。二階のこの教室に頭を覗かせている、裏庭のイチョウの木は、闇の中でも目立つ
明るい黄色の葉をこちらに伸ばしていた。ベランダに出て手を差し出せば、届きそうだ。
目を凝らすと、壁に掛った時計の短針が、もうすぐ6の数字と重なるのが見えた。再び裏庭に視線を戻す。
「>>231」
女の声に、>>231は窓から視線を剥がした。気の強そうな女子が一人、入口に立っている。
「誰?」
>>231は問いかけた。見たことのない生徒だった。同じクラスではない。同学年かどうかも判断がつきかねる。
「そんなの、これから話すわ」
こちらの目を見ないまま、女子は続ける。
「都合よく一人でぼんやりしてるのを見かけたんで、今言っておこうかなってなんていうか……その、
一目ぼれよ。ちょっと前に、廊下で見てからずっと。私の彼氏になってよ」
時計の針を見る。長針は12の上にきているが、あの時計は1,2分進んでいる。どちらにせよ時間はない。
「じゃあ、今すぐ僕とHしよう。すぐ本番に入らないと」
ズボンのベルトと上着のボタンを同時に外しながら女子に詰め寄ると、彼女は後ずさりした。
「ちょっと、何言ってんのよ、いくらなんでも、そんなの急ぎすぎよ……」
「いやいやそんなこと言ってる場合じゃ」
ブラウスのボタンに手をかけると、女子は怯えた様子で>>231の指を払った。
「そんなの。できるわけないじゃない。お互いもっと仲良くなってから……で、も……?」
女子の表情が、みるみるひきつっていく。始まったようだった。胸に圧迫感を覚え、制服のボタンを全開にしてシャツも第三ボタンまで外す。
一端女体化が起これば、完了は一瞬だった。すっかり伸びた肩にかかった髪を手で搔きあげ、>>231は艶然と女子に微笑みかけた。
「お互い、運とタイミングが悪かったね」
終わり
最終更新:2008年10月25日 12:21