「お前、理想のタイプとかいねーの」
「んーそうだな……ツンデレ美少女にして僕っ娘とか最高だな。プログラマーだ
と尚良し」
「わかった、お前救いようのない馬鹿だろ」
夕陽がキャンパスを茜に塗り潰す。
視界一面が鮮やかに彩られる様は、何度目にしても飽きることがない。
その中で、顔を一際紅潮させる美少女がひとり。
吉岡綾、俺の親友である。
「馬鹿とはなんだ。俺は自分の理想に正直なだけだ」
「うるせー死ね馬鹿」
「…ひどくね?」
しかしまあ、夕陽に染まる美少女というのもなかなかオツなものだ。
絵画から抜け出してきたかのような美貌をたたえた綾の背中を眺めていると、自
然と口元が緩むのがわかる。
惜しむらくは、コイツが先月まで元気に男をしていたということだろうかね。
『15、16歳までに童貞を捨てなかったら女体化する』
発症する割合なんぞ三割にも満たないが、とかくそういう現象がこの世には存在
する。
およそ1/3にも満たないほど荒い確率の網だが、コイツは見事に引っかかって
くれた。
人間ってのは不思議なもので、体が女になると精神もどことなく女々しくなるよ
うだ。
「……何見てんだ。殺すぞテメェ」
…尤も、口の悪さだけは男女がひっくり返ったくらいじゃ変わらないようだが。
「そう怒るな。カルシウムが不足してるんじゃないのか?」
「うるせぇ!滅殺!!!」
「ちょ、いたいいたいいたいマジ痛いから!ミョルニルが無いからって投石はヤ
バいって!!」
…前言撤回。手の早さも、性別には左右されないらしい。
ちなみにこれは余談だが、翌日から綾はC言語とやらの勉強を始めたようだ。
いじらしい奴め。
最終更新:2008年10月26日 03:33