「なんだよさっきから、溜息ばかりついて」
「いやさぁ、今日、ウチに兄貴が帰って来るんだよね」
「ああ、そういやお前、兄貴が苦手なんだっけ?」
そいう言うと浜村は机に突っ伏して、より一層暗い声を出した。
「もう苦手なんてもんじゃねーよ、なんつーか天敵! 害悪だっつーの!」
「そこまで言うこたないだろ」
茶化そうとしてみたが、逆にすごい形相で睨まれた。
「お前は他人だからわからねーんだよ! ちくしょう、軽く言いやがって!」
「ああ、分かったよ。悪かったって」
ホントこいつ、兄貴のことになるとダメだな。
「っつーわけでだな」
「な、なんだよ?」
「今日、泊めて!」
「はあ?!」
な、何を言い出すんだこいつは!
「今日だけでいいからさ!」
「いやいやいや、何いってんの!? だってお前は………」
そう、こいつはもう男じゃない。
立派な女だ。
今月の頭に女体化したばかりとはいえ、女を俺の家に泊めるって……。
「な、なんだよ! 親友の頼みがきけないってのかよ! 昔は普通に泊まってただろ?!」
「その時とはもう事情が違うだろうがよっ」
「そんなぁ! 私と過ごした夜なんて、アナタにとって無かったも同然なの?!」
「こんな時だけ『女』になるなあ!!」
「ふん! 俺が兄貴に寝取られても知らねーぞ!」
クラス中に不穏当な空気が流れる。
「ごごご、誤解されるようなことを言うんじゃねえええええ!!!!」
「最低っ」
泣きまねをしながら教室を出て行く浜村。(もちろん女の子走り)
「ざわざわ」「ええ、坂本さんて……」「最低……」「あんなヤツだったとはな……」「ざわざわ」「人間のクズ」「女の子を泣かすなんて」「どうしてあんな言い方しか」「ざわざわ……」
クラスの皆の視線が俺という一点に集まっているのがわかる。
「…………………………………………のヤロォッ」
最終更新:2008年11月02日 21:44