18 名前:
◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:46:50.73 ID:Vav2XUb40
両親と言うものは職業やどんな人柄関係なしにつくづく偉大だと思う、アメリカで育ってはいるが両親の教育の
成果からか日本語も習わされていたのでどちらとも解することは可能だ。だけどもアメリカで育ったので
本能的に英語が出てしまうがそれはまぁ、致し方ないことだろう。
それにしても両親・・というよりも母親に関する思い出で生涯忘れられないものは俺、平塚 慶太にも一つだけある。
あれはそう・・俺が16歳の頃で前の彼女で女体化をうまく回避しつつ車の免許を取ったばかりの頃だった。
「なぁ、慶太」
「どうしたんだよ、母さん?」
前の彼女と馬雨具合に別れる事が出来て安心し切っていたこの日、女優業で多忙な母さんが久方ぶりの休み
を満喫していた頃だった。俺も免許の手続きやスクールでの勉強が一段落付いていた頃なのでちょうど
のんびりと休日らしい休日を過ごしていた頃だ。それにしても母さんから何か言ってくるのは珍しい事だな、何か
あったのかはたまた家族のんびりとすごしていたいのか・・とりあえず母さんの話に耳を傾ける事にする。
「何かあった?」
「たまには2人で一緒に出かけないか?」
「えっ!!」
母さんからの意外な誘いに俺は驚きを通り越して少しばかり体が竦んでしまう、親父ならともかくとしてなんで
俺なんだろうかと思うと少しばかり変な感じだ。
19 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:47:56.22 ID:Vav2XUb40
「免許も取ったのだろ? 取得記念として一緒にどこかへ行こう」
「まぁ、俺は構わないけどどうせなら來夢達も誘うか? 余計に楽しめそうだし・・」
「お前とだけでいい。色々話したい事もあるしな」
「そ、そうか・・」
珍しく強固な母さんに俺もたじろく事しか出来なかったが、考えて見れば別に悪い事ではなかったしここ最近は
親父や母さんとも一緒に過ごした事がなかったのでたまにはいい機会なのかもしれない。だけども母さんと
ドライブするに当たって懸念すべき問題が2つだけある・・
「ところで車はどうするんだ? 親父のを無断で使うわけにもいかないし・・」
「あいつには私から言っておくから別に構わんさ」
「じゃあ、母さんは免許持ってるのか?」
これが俺にとって尤も重要な事、車については母さんから承諾が得られなくても家にある親父の車を使えば
いい事だし適当に理由をつければ親父も納得はするだろう。そして俺が一番懸念している事と言えば母さんが
免許を持っているか否かだ、これによって俺の疲労度が大きく変わっていくもので免許を持っていることを
祈りたいのだが・・母さんはそんな俺の期待を裏切るかのように自信たっぷりげにこう言い放つ。
「持ってるわけないだろ。それに自慢じゃないが私は車が乗ったことはあるけども車は運転した事がない・・どうした、顔色が悪いぞ?」
「・・何でもないよ。行こう」
こうして自分の体力を賭けた俺の戦いは始まった。
22 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:50:35.01 ID:Vav2XUb40
ドライブに行く前、母さんと一緒じゃかなり目立つのは必然なので俺は母さんを出来るだけ一般人に近づけるために
ナチュラルな格好を施した。あれだけテレビで目立っているのにも関わらず化粧を全くしていないスッピン状態でも
かなりの美形なので目立たなくするだけでもかなり苦労させられる。
「行く前にここまで準備しなくてもいいんじゃないのか?」
「まぁ、事前準備みたいなものだよ。・・よし、これでなんとかなった」
ようやく母さんの準備を完了する、今の母さんは変に言葉がややこしいが素をかなり素にした状態で誰もが見たら
あの大女優のSAORIだとは気付くまい、どんな格好をしてもかなり目立つ母さんをここまで地味に施した自分の
才能が誇らしい。
「大分時間が掛かったな」
「まぁ、そんなものだよ。さて・・行くか」
「それじゃ、付き合うか」
ようやく全ての準備が終わって庭にある親父の車に乗り込むと、エンジンを掛けてアクセルを踏む。
これから外にも出ずにどれだけ母さんを退屈させないことを考えながら運転する、これが父さんだったら何とか
なっていたのだろうけども俺でどこまで行くか少し不安だ。だけども母さんと一緒にドライブするのは楽しいもので
自然と会話も弾むし、こうしてこのままのんびりと気ままに旅をするのも悪くはない。
「まさか自分の息子が運転する車に乗るとはな」
「こっちだって始めて車に乗った同乗者が母さんだと思いもよらなかったよ」
初めての同乗者はどうせなら來夢が良かったのだが、学校の友達と一緒に遊んでいるらしい・・どうなってるのか
気になってしまう。
23 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:51:36.64 ID:Vav2XUb40
「昔を思い出す」
「何を?」
「・・お前を妊娠してる時な、あいつがこうして運転してくれて産婦人科まで通ったんだよ。
あの頃はお互いに忙しかったが妊娠してる頃は何故かあいつが車で私を送ってくれた」
「へぇ~、親父も意外なところでまめなんだな」
「あの時もこうして色々話したものだ」
まさか親父があんな事をしていたなんて驚きではあったが母さんの表情を見ていると本当なのだろう、我が
両親ながらへんてこな夫婦だ。
「そういえば母さん、最近仕事の方は順調なのか?」
「お前からとは珍しいな・・」
「たまにはいいだろ」
流石の母さんもまさか俺から仕事の話を切り出されるとは思っても見ないだろうと踏んでいたのだが・・母さんは
いつものように語ってくれる。
24 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:52:36.03 ID:Vav2XUb40
「今の所はドラマはレギュラーも含め映画の撮影も一段落ついたところだ、舞台の方は最終の稽古も
終わっていよいよ各国の劇場に足を運ぶ予定だし・・次も新たなドラマや映画の撮影に雑誌の取材や
舞台の打ち合わせなどが入ってるな」
「忙しいんだな。それにしてはよく休みが取れたもんだ・・」
やっぱり母さんの仕事量は昔と余り変わらない、というか日に日に増え続けていると言った感じだ。
母さん以上の仕事量を持つ親父も俺達が小さい頃に過労で倒れてしまったのだが母さんは疲れを全然見せず
むしろ楽しんでいるようにも見える。
「まぁ、仕事量に比べればあいつよりかはマシだ。それに今回の休みは部長が色々と手回しをしてくれたからな」
「でも母さんは親父と違って体調は崩さないよな」
「そういった管理は昔から部長によって厳しくされているから心配はない。
さすがにお前達を妊娠した時は育児休暇を取ったけどな」
母さんは俺達を妊娠した時は育児休暇を取ってくれている、やっぱり妊娠と言うのはそこまで体力の掛かるもの
なのだろうか?
「まぁ、母さんは凄いよ」
「フフフ・・」
薄ら笑いされると何だかバカにされている気がするが母さんに関しては何を言っても仕方ないので深く言及しなくてもいいだろう、車はのんびりと進む・・
25 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:53:24.66 ID:Vav2XUb40
車に乗り続けて早数時間・・お腹が減ってきた俺、多分母さんも同じだろう。
「母さん、腹減った」
「おいおい・・まだ早くないか?」
「実はと言うと朝飯も食ってないんだよ」
朝飯はゆっくりと食べるつもりだったし、母さんの準備に手間取ってしまってお金を持ってくるのを忘れてしまったのだ。
「全く、仕方ない奴だ。・・いいぞ」
「助かった。んじゃ、適当でいいな」
「お、おい・・」
母さんの許しが出たので俺は目に付いたレストランに車を向けるとそのまま駐車場に止める、珍しく母さんが乗って
こないのが少し目に付いてしまうが流石の俺も空腹には勝てないのでそのまま母さんと一緒にファミレスへと向い、
店内へと入る。店内に入るとファミレスにしては珍しくまったりとした落ち着いた感じで騒がしいアメリカとはまるで
無縁のような感じだ。
26 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:55:23.70 ID:Vav2XUb40
「さて、喰うぞ!!」
「ま、好きにしてくれ」
「じゃ、遠慮なく行くぜ」
朝飯を食べていない俺の食欲は凄まじいもので気がつけばこの店にあるメニューを殆ど制覇していた、母さんの
方も軽く食べてはいるのだが軽くコーヒーを啜りながら俺の喰いっぷりをじっと見つめている。
「どうした? なんか付いてる」
「・・いや、私とあいつは小食だからそんなに食わないが。息子のお前はよくもまぁ、そんなに沢山食えるな」
「そっか?」
いつもは少し気に掛かる母さんの言葉だが食事中の時はオマケみたいなものだ、最後に出てきた分厚いステーキを
食べ切ると俺もコーラを飲んで一息つく。
「プハァ~・・喰った喰った」
「よく食ったな。大丈夫なのか?」
「朝抜いたから・・んなもんだろ」
これでも俺なりに結構抑えているものだ、尤も家族の中では俺とあいつが一番よく食べる方なのでよく小さい頃は
食い物の取り争いをしたものだ、まぁ喰った分だけ動くので太る心配はない。考えて見れば親父と母さんはどちらかと
言えば小食でがつがつ食べるよりものんびりとゆっくり食べるタイプだ、そんな両親の元で産まれた俺は少しばかり
変なのかもしれない。
28 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:57:08.82 ID:Vav2XUb40
「こうしてみると・・お前も大きくなったな」
「おいおい、いきなり何言うんだよ」
「フフフ、母親としての意見だ」
「何言って・・ん?」
偶然、テレビに目を向けると母さんが写っていた。周りのギャラリーがテレビに写る母さんに釘付けになっている中で
俺は目の前にいる本物に少しばかりのギャップを覚えてしまう。
29 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:58:08.94 ID:Vav2XUb40
「どうした?」
「い、いや・・実際とはえらい違うなっと」
「そりゃテレビだからな、当たり前のことだ」
「お、おいちょっと声が大きいぞ・・」
「フフフ・・心配性だな」
いくら地味目に変装を施しても声と口調だけは誤魔化せないものでもしここで母さんの事がばれてしまったら
大パニックになって自宅も引越ししなければならなくなる。それだけは絶対に避けなければならない・・少しばかり
長居は危険なようだ。
「さっ、腹も一杯になったし。そろそろ行くか」
「強引だな。そんな事じゃモテないぞ」
「親相手に遠慮はしねぇよ」
「全く」
少し強引に母さんを引き連れて、俺達はファミレスを後にした。
30 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:58:53.66 ID:Vav2XUb40
一通りのドライブコースをめぐった後で相変わらず横に乗っていた母さんが突然変な事を言い始める。
「そうだ」
「どうしたんだ?」
「買い物をするの忘れてな、NYに寄ってくれないか?」
「別に良いけど・・何を買うんだ?」
母さんから買い物に誘われるとは以外ではあるけども一体何を買うのだろうか?
「服とか不足していてな」
「それだけか?」
「まぁな」
少しニヤつきながら答える母さんにいささか疑問を覚えながらも俺も少し見たいものがあるので同行する
事にしよう、それに母さんと買い物をするのはあんまりなかったことだし意外な発見があるかも知れない。
「わかったよ。それじゃNYへと出かけるか」
「何が起きるか楽しみだ」
俺は母さんとは対照的に何も起きないことを願いながら車をNYへ向けて走らせる、NYへ着くまでに様々な
景色が俺達を楽しませてくれる。それに最悪のケースなどそうあっさりと簡単に起こるはずもないものだし
確率的にも少ない、そう考えると前向きにもなれるし余計な事を考えなくても良さそうだ。
31 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 18:59:40.17 ID:Vav2XUb40
アメリカの都市NY、その歴史はかなり古く自由の女神を象徴としながら世界を今もなおリードし続けている。
「相変わらず日本と比べて広いなここは・・」
「そうなのか?」
「ああ、アメリカは広大だからな。先輩と一緒に来た時は驚きの連続だったさ」
過去に日本に出かけた時はあんまり狭くも感じなかったが日本育ちの母さんにはそう感じてしまうのだろう、でも俺は
どちらかと言うとアメリカよりも質が芸術性の高い日本の方が好きなのだが・・どちらかと言うと俺自身がアメリカの
風景に飽きているのかもしれない。それよりも俺が突っ込みたい所は別にある、それは・・
「・・それよりもさ、密接して腕を組むのはやめてくれ!!」
「何だ、別に問題ないだろ?」
「あのなぁ・・」
確かに母さんは世間一般から見れば若々しいし女優をやっているだけあってとても美しい、しかし俺にとっては母親で
あるので腕を組んで歩くのはかなり恥ずかしいもので自分の歳も考慮すると少しばかり隠しきれないものだ。
だからついつい反抗心が言葉に出てしまう。
32 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:00:27.83 ID:Vav2XUb40
「そんな事は親父の役目だろ」
「・・母さんと一緒はそんなに嫌か?」
「だから嫌とかそんなんじゃないが・・」
「そうか、やっぱり恥ずかしいか」
真剣な言葉でしかもその潤んだ瞳で見られると非常に返答が困る、大体母さんの相手などは基本的には親父の
役目だし母さんとこういった場に行くのは本来ならば來夢がついているはずだ、いくら俺が親父の遺伝子を濃く
受け継いでいるとは言っても母さんにしてみれば息子ではあるはずなのだが・・どうやら母さんの思考は俺と少し
ずれているのかも知れない。
それにこのまま俺が渋ってしまえば平行線のままになるのは火を見るよりも明らかなのでここは俺が折れるのが
妥協だろう。
「わかったよ・・今日一日は母さんに付き合うよ」
「本当か。それを聞いて安心したぞ、欲しいものがあったら買ってもいいぞ。今日は私が奢ってやる」
「ハハハ・・感謝するよ」
あらゆる視線を独占しながら俺と母さんはどこかのカップルのごとく腕を組みながら買い物を始めるのであった。
33 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:01:02.69 ID:Vav2XUb40
「なぁ、この服は似合うか?」
「ああ・・悪くはない」
まず手始めにお約束(?)でもある洋服屋に足を運ぶ、俺が施した母さんも地味目の変装に飽きていたのか
あれやこれやと店に並んである洋服に片っ端から手をつけながら俺の意見を伺う。
「それじゃ・・この服は似合ってるか?」
「ああ」
「・・さっきから“ああ”としか言ってないな。それじゃあ女にモテないぞ」
「仕方ねぇだろ。母さんは何でも似合うんだから」
これはお世辞抜きの俺の本音、やっぱり舞台とかの衣装がぴったりと似合う母さんに“どれが一番似合う?”とか
言われても全て完璧に着こなしてしまうのだから逆に返答に困ってしまうものだ。親父やその友人である十条の
おじさんなら気の利いたセリフを言えれるのかもしれないが息子である俺にそれを求めるのは無理がある。
34 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:01:46.09 ID:Vav2XUb40
「それに母さんに合わない服なんてあるわけねぇだろ」
「それじゃあ、意味がないだろ。例えば香織ちゃんとデートをした時にそんな事ばっか言っていたら
退屈してしまって反感を買ってしまうぞ」
「何でそこであいつの名前が出て来るんだよ!!!!」
「フフフ・・」
あの女の名前が出るなど忌々しい限りだ、奴との思い出など悪い部分が大半だし数々の仕打ちを水に流すほど
俺もお人好しではない、そもそも何であいつの名前が出る時点で場違いと言うものだ。
「まぁ、実際にデートする時はそこらへんをよく考えるんだな。それじゃあ、これ全部買うか」
「おいおい、大丈夫なのか?」
「カードで支払うから問題ない。それに先輩からたまには贅沢しろって言われてるからな」
「意味わかんねぇよ」
來夢には母さんの金銭感覚を受け継がれないことを祈るばかりだ。
35 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:03:20.24 ID:Vav2XUb40
洋服屋を出た俺達ではあるが次にどこへ行こうか迷っていた俺であったが・・さっきから横にいた母さんが
とんでもないところに俺を誘い出した。
「お、おい・・ここは?」
「ランジェリーショップだが・・それがどうした、何か問題あるか?」
「大有だ!!!」
中性的な來夢はともかくとして息子である俺にこういったランジェリーショップに誘ってくるのは変な母親だ、それに
こういったのは本来親父がするべきであって俺は対象外のはずだ。それに彼女がいない俺にとって拷問に近い・・
「別にいいだろう? それに今日はお前の社会勉強だ」
「意味わかんねぇよ」
「男だからってこういったところに来ないとは限らないだろ。お前には女心って言うのがわかってないからな」
「んなもん、わかる!!」
全く、俺はこう見えてもそれなりに女の友人もいるし経験も積んでいる。鈍感では絶対にないと自信がある、それに
母さんに鈍感みたいだと言われると無性に腹が立ってしまう。
36 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:03:59.60 ID:Vav2XUb40
「わかったよ。出かけてやるぜ!!」
「フフフ・・じゃ、行くか」
こうして母さんと一緒にランジェリーショップに入った俺ではあったのだが精神衛生上きついもので途中帰ろうかと
思っていたのだが自分の言葉の手前もあるのでここは黙って耐えるしかない。
「中々いい下着がないな・・」
「別にそこまで拘らなくても」
下着ぐらい気軽で少しばかりセンスが悪くても良いとは思うのだが、母さんはどうやら違うようだ。
「フッ、お前は本当に女心がわかってないな」
「何だよ。別に下着でそこまで・・」
「女の下着は結構重要なんだぞ。・・そうだ、お前選んで見ないか? 女心には自信があるんだろ」
「わ、わかったよ!!!」
俺としても男の意地がある、そのまま店内の下着をじっくり見ながら自分のファッションセンスを武器に沢山ある
下着から限定して選び母さんに見せつけるのだが・・母さんの反応は少しイマイチであった。
37 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:05:04.25 ID:Vav2XUb40
「これはどうだ!!」
「・・地味だ」
「それじゃあ、これは!!」
「・・派手過ぎる」
「こいつは!!」
「・・見た目が悪い」
こんなやり取りが続く中で母さんは俺が絶対の自信を賭けて選び抜いた下着を片っ端から拒否してくれる、最初は
センスの違いかと思っていたんだがこうも選んだ下着を拒否するところを見るとどうやら違うように見える。
それに母さんに拒否られるとこちらとしても余計に意地になってしまうもので俺は片っ端から下着を探し始めてまた
母さんに突きつける。
39 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:05:27.89 ID:Vav2XUb40
「どうだ!!」
「バランスが悪いな」
「こっちは!!」
「色がイマイチだ」
「じゃあ・・こいつは!!」
「今までのと比べるといい方だな」
俺は意を決して最期の下着を提示する、ここで認めさせなければ俺のプライドが許さない。
今まで片っ端から俺の選んだ下着を拒み続けてた母さんであったが今回は少し手に取って見続けている。
そうだ・・このままこれで納得してくれ!!
40 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:06:14.79 ID:Vav2XUb40
「ど、どうだ?」
「そうだな・・質も色も形も悪くないな」
「本当か!」
「まぁ、値段も225ドル程度だが・・悪くないな」
「おお225ドルか。それなら・・って225ドルもするのかよ!!!!」
下着一着に225ドルっというとかなり高額なお値段だ、それを程度と言い張る母さんは金銭感覚が凄いものだ。
「さ、会計を済ませてから出るぞ」
「ああ・・」
母さんは今までどんな人生を送ってこのような金銭感覚を身に付けたのだろうか気になるところだ。
それにしても女体化者はこういったランジェリーショップに入るのは辛いものだろうな・・と心から思ってしまうのであった。
41 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:07:24.28 ID:Vav2XUb40
相変わらずの母さんのペースに振り回されながらも今度は高級感が漂うジュエリーショップへと向かう、今度は
俺でも何ら抵抗感がないので安心だ。母さんはテレビでも常日頃宝石をつけているようだけどもそういったのに
案外疎いので見ているだけでも満足だ。
「そういや母さん」
「どうした?」
「婚約指輪はここで買ったのか?」
母さんが常日頃つけている婚約指輪と同じデザインがさっきここで飾っていたのと同じ物があったのでつい聞いて
見たくなったのだ。
「ああ、これな・・買ったのは日本だがここでも売ってたのか」
「へー・・で、いくらなんだ?」
「えっと確かあの時にあいつに聞いた時は・・2000万だって言っていたな」
「に、2000万だと――ッ!!!」
思わず日本語で声を荒げてしまったが、日本の事も頭に入っている俺にして見れば値段の大きさは容易に推測できる。
まぁ、親父も大々的に金を掛けたものだなぁ・・
42 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:08:50.18 ID:Vav2XUb40
「婚約指輪によくそんなに出せなたな・・」
「そりゃ、一生身につける指輪だからな」
「まぁ・・凄いもんだ」
親父も母さんと結婚するぐらいであそこまでの値段を出したものだ、俺には到底真似は出来ない・・
「そうだ。久々にお前と来たんだから記念になる物を買うか」
「おいおい、俺は眺めてるだけで・・」
「本当だったらこういった事は男のほうが率先してやるもんだが・・今回は特別だ。指のサイズはあいつと一緒ぐらいだな」
「ちょ、ちょっと待t・・」
そういって母さんはなにやら店員に話し掛ける、一体何をするのだろうか? いろんな考えが俺の頭中に
渦巻きながら時間だけが虚しく過ぎていく・・そして小一時間後、母さんが俺に指輪を差し出してくれた。
43 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:09:26.58 ID:Vav2XUb40
「母さん、これって・・?」
「ペアリングだ。まぁ、少し高いがお前ももうそういった歳だからな」
「あ、ああ・・じゃあつけて見るかな」
左手の薬指に指輪をはめて俺は少しばかりの興奮を覚えつつ指輪を見つめる、サイズのほうも丁度ピッタリで
改めて宝石の美しさが輝くものだ。
「ところで・・値段はいくらなんだ?」
「私のと合わせて1200ドルだな」
「そ、そんなにするのかよ!!!!」
1200ドルと言えば日本円に換算すると大体1000万ぐらいだ、よくそんなものをサラッと買える母さんは大物だが
こんな高い物を渡されても素直には受け取れない。
「買ってくれたのは有難いけど、こんな高いもの・・」
「まぁ、無理につけろとは言わないさ。だけども悪い事じゃないだろ? ま、無理にとは言わないが・・」
ううっ・・ここまで言われると心なしか良心が痛んでしまう。
それに上目遣いで見られるとますます断りづらくなる、子供故の感情だ・・
45 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:10:54.09 ID:Vav2XUb40
「じ、じゃあ・・折角だし貰おうかな」
「そうか、母さんは嬉しいぞ!」
「ハハハ・・」
やっぱり母さんは偉大だ・・少しばかり自分の内心に苦笑している中で1人の老紳士が俺の宝石をまじまじと
見つめている。目に映る老紳士が気になってしまうので適当に母さんを引き離す。
「・・どうかなさいましたか?」
「いやこれは失礼しました。その指輪は世界でも極僅かの数しかないんです」
「そうなんですか」
この指輪がそんなにも凄いものだとは驚きだ、考えて見ればそんな貴重な指輪が1000万なのは破格の値段だと思う。
46 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:11:55.75 ID:Vav2XUb40
「へー、この指輪って希少価値高いんだな。・・で、本当は幾らぐらいなんですか?」
「そうですな、時価で最低でも6000ドルは下らないでしょう。
ここでまさか見られるとは思いもよりませんでした、大切にしてくれたら宝石も喜びになられますよ」
「は、はぁ・・」
「では私はこれで・・」
そういって老紳士は俺の元から立ち去る、突然の出来事に俺は困惑してしまうが母さんが買ってくれた指輪は
大切にしていきたいと思う。少し気持ちを切り替えて母さんの方を何とかしようと思ったその矢先、左手に何やら
感触を感じる。左手をにはなにやらメモ書きが残されている、奇妙な心境のままで目を凝らしながらメモの内容を
良く見てみると何やら電話番号が書かれておりそこに必ず電話するようにとのことだ。
一見すると何やら意味不明な怪文書ではあるが何やら緊急性が伝わってくるのはなんだろうか?
47 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:12:31.99 ID:Vav2XUb40
(何だろうな。携帯に掛けてみるか・・)
悪戯の可能性も否定は出来ないが・・あの老紳士はもうそんな事するような歳ではないだろう、携帯を取り出して
電話を掛けるとワンコールも経たないうちに出てきたのは俺の聞き覚えのある声だった。
“お坊ちゃま、よく出てきてくれました・・”
「あ、あなたは・・確かガードの」
電話に出たのは親父が俺達のために雇っているガードの人だった、有名人の子息というのは色々な嫉妬を買い易く
それを嫉んで俺達に危害を加えている人間は少なからずいる。いくら格闘技で鍛えていても隙はある、それらを
重く考えた親父は俺達の影にガードを雇ったのだ。それにガードと言っても素人に毛の生えたようなものではなく、
元が軍隊の特殊部隊の出らしいのでプロ中のプロなのだ。
“会話している暇はありません。・・お坊ちゃま、緊急事態です”
「ど、どうしました?」
“今までのあなた達の行動が一部のパパラッチに感ずかれました。しかも性質の悪い部類です・・”
「何だって!!」
アメリカは日本と違って自由だ、しかし自由故に強固な縛りが存在しない。パパラッチと言うのもその一例で彼らから
すれば国民の“知りたい自由”を行使しているに過ぎないようだが俺達にとっては迷惑極まりない話だ。
48 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:13:28.97 ID:Vav2XUb40
「状況は・・?」
“既に店の周りに張り付いているようです。ルートを逆算するとランチの後から既につけられていたようですな・・
それよりも奥様は?”
「まだ店の中にいます」
最悪の状況が俺の頭を過ぎり具現化してしまう、ああ見えても親父と母さん達は今まで俺達の存在を世間には
シャットアウトしているので明らかになると今の家は即引越し、しかも相手がパパラッチならその好奇心が止むまで
執着に追いまわされて俺達の生活を掻き回されてしまうだろう。そんな不安たっぷりの俺にガードの人は希望を
与えてくれる・・
“お坊ちゃまが不安にならなくても大丈夫です、あなた方が乗っていた車はナンバーを変えて既に別の場所に
移していますし既に我々が退路を確保しております。後はそちら次第です”
「いつもすみません・・」
“我々は旦那様からのご依頼通りにしているだけです、ではうまくやって下さい”
「はい」
携帯を切ると俺はまだ売り場で宝石を見つめている母さんを引き離す。
50 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:16:21.41 ID:Vav2XUb40
「母さん、ちょっと付き合ってくれないか」
「おいおい、どうしたんだ?」
「いいから・・面白いところがあるんだよ」
母さんを店から引き離してすのはかなり難しい事ではあるがやらなければ俺達の未来が危ういため絶対に
クリアしておきたいところだ。
「面白いところって・・いきなりどうした?」
「今思い出したんだよ。そこは時間限定みたいなもんだから早く行こうぜ!!」
「お、おい!!」
強引に母さんを引っ張ってガードの人達から教えて貰った退路へと道を進める、母さんは突然の事で戸惑っては
いるようだがこちらとしては生活が掛かっているので簡単には翻せられない。店を出て周囲を用心深く警戒しながら
車を手配してくれている場所へと慎重に歩く、退路を確保してくれたガードの人には本当に感謝ものだ。
母さんと共に指定された場所へとつくとそこには無事に車が止まっていてそれを見た俺は自然と安堵の息が出る。
(ふぅ~、どうやら助かった。まだ周りには誰も居ないが早く行かないとな・・)
「全く人を散々連れまわしておいて・・面白いところがあるんだろうな?」
「ああ、とりあえず車に乗ろうぜ」
「息子ながら調子が良いな・・」
母さんとして見れば至福の一時を邪魔されて気分が悪いだろうな、それに気がつけば空は夕暮れの後半で
夜に近い・・ここらで締めでいくしかないな。
51 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:17:32.42 ID:Vav2XUb40
車を走らせる中で少し機嫌が悪くだんまりしていた母さんがようやく口を開く。
「で、真相はどうなんだ?」
「何が?」
「・・惚けるな、宝石店で何があったんだ」
相変わらず母さんは鋭い、俺なりに普通に振舞っていたつもりであったが・・やっぱり怪しい部分が合ったのかもしれない。
「実はな、パパラッチに追われてたんだよ」
「何だと!!」
母さんには真相は余り話したくはなかったのもあったけども隠し続けるのもあれだし素直に話しても良いとは思って
いたのだが、やっぱりそういったことには気を病んでいるようだ。
52 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:24:14.50 ID:Vav2XUb40
「でも大丈夫だ、ガードの人達と一緒に何とか巻いた。今頃は街中を必死に探しているさ」
「そうか、しかし感ずかれるとは軽率だった」
珍しく気弱な母さんを見ているとこっちとしても調子が下がる、まぁそうまでしても俺達の事を気に掛けているという
事かもしれないがあまり自分を責めるのはよくない。
「あんまり自分を責めるなよ。ばれなかっただけでもいいじゃないか」
「・・そうだな」
「自分の事だけ気にしてればいいさ」
「調子に乗りすぎだ」
「折角フォローしているのにそりゃないだろ・・」
軽く凹んでしまった俺ではあるが母さんがいつもの調子に戻ってくれて安心だ。
53 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:25:11.92 ID:Vav2XUb40
母さんの一言から始まったこのドライブもそろそろ締めの段階が近づいてきている。最初は嫌々だった俺も気が
付いて見れば母さんと一緒にいてそれなりに楽しんでいたし、途中いろんなトラブルがあったもののそれらを
差っ引いてもいいものだと俺は思っている。
とんだ休日になってしまったが家でゴロゴロするよりもそっちの方が刺激的だろう。
「ところでさっきから山道ばかりだが・・どこに向かうんだ? まぁ、予想は大体つくが・・」
「面白いところだよ。きっと満足するさ・・っと、着いた着いた」
「ここは・・」
目的の場所に着いたので俺は車を止めてそのまま母さんを引き連れて外に出る、そのにはアメリカの都市部が
織り成す眩いばかりの夜景の数々が広がり見るもの全てを見とれさせるには充分過ぎるほどだ。それは母さんも
例外ではなく驚きの表情を見せてくれたのだが・・それは一瞬の出来事ですぐに元の表情に戻ってしまう。
もっといい反応が出来ると期待していたので少しばかり落ち込んでしまう。
「あれ? そんなに驚かないな。もしかして知ってるのか?」
「まさかお前がここを知っていたとはな」
「母さん・・もしかしてここ知ってたのか?」
母さんの反応から推察するとこれしか浮かび上がらない、それにしてもこの場所は俺が独自に見つけて考案して
いた秘密のスポットではあるのだが何故ここを母さんが知っているなんて・・少し悔しい。
54 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:28:49.13 ID:Vav2XUb40
「あいつと結婚してお前がまだ産まれたばかりの頃な、あいつが車を運転してくれてここに案内してくれたんだよ」
「お、親父がここに来たのかよ!!!!」
「ああ、それにしても成長したお前と一緒にここに来るとは思わなかったな」
「全く何だか先超された感じだな」
親父がまだ小さい俺と母さんをここに引き連れている辺り、親子の因果を感じてしまうが不思議と負い目めいた
ものは感じない。それにしても母さんとここに来ると変に緊張してしまう、母さんとは長い所親子をやっているが
ここまで緊張したのは始めてだ。
「今日は色んな事があったが、これは飛んだサプライズだな」
「そ、そうか?」
「おいおい、そんなに緊張するな」
「緊張なんてしてない!!!」
やっぱり母さんは俺の事をよく解っている、だからこう言葉に出てしまうのだろう。しかし母さんは少し笑いながら
俺にこう言ってくれた。
55 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:29:27.82 ID:Vav2XUb40
「フフフ、まぁ・・私とはあくまでも模擬デートだからな」
「ムード壊さないでくれよ・・」
「親子にムードもヘッタクレもないだろ。全く何か期待していたのか?」
「そんな事はないが・・」
相変わらずの母さんの対応に内心では溜息の連続ではあるが、相手が母さんなので仕方がない。
「今日のデートはそうだな・・まぁ60点ぐらいだな」
「採点までするのか」
「そうじゃなきゃ面白くないからな。まぁ、でも・・今日は面白かったぞ」
クスクスと笑う母さんに悪気がないのは分かるものの余計に体が重い、どうやら俺は心の奥底で本気で何か
あると期待していたようでそれが余計に口惜しい。
57 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:33:32.03 ID:Vav2XUb40
(喜んで良いのか悪いのやら・・)
「・・仕方ない。こっち向け」
「へっ――?」
俺が気がついた時には既に母さんが俺の唇を奪っていたところだ、突然の母さんの行動に俺の思考は完全に
停止をした。このまま暫く固まったまま数秒の時間が過ぎて俺はようやく母さんから開放される・・
「息子相手にキスするのは変な感じだが・・満足したか?」
「・・・」
「どうした? キスぐらいで何固まってるんだ」
何を仰る母上様、突然あんな事をされたら固まる奴はいない。実の母親に突然キスされた俺は今でも自分の唇に
指を当てるがまだ生暖かい感触が残っている、これが母さんなりの俺へのご褒美と言うことだろうか?
58 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:34:38.36 ID:Vav2XUb40
「いきなりキスはないだろ・・」
「お前が小さい頃にはよくしてやったもんだぞ♪」
「だからって俺にも心の準備がな・・」
「情けないな、それじゃ香織ちゃんがいた時にどうするんだ」
「何でそこにあいつの名前が出る!!!!」
相変わらずのペースに俺は戸惑うばかりだ、女優が成せる技なのか・・それとも俺の事を知りつくしている母さんが
成せれる技なのかは未だに良く解らないことだ。ただ一つ言えれることは母さんには何をされても不思議と納得して
しまってしまうところだ。
「はぁ・・」
「お前にはまだ刺激が強すぎたようだな。まぁ、これも経験だ」
「・・そうかい」
やれやれと思いつつもこれが母さん・・平塚 沙織なんだなっと改めて思いながら変なもやもや感を孕んだまま
俺の休日もとい、模擬デートは終わりを告げた。
59 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:35:39.62 ID:Vav2XUb40
おまけ
母さんとのデート(?)が終わった翌日、俺はのんびりとスクールへの準備を進める中で珍しく家に帰ってきた
親父が話しかけてきた。突然の親父の行動に驚いた俺ではあるが思い当たる節が色々とありすぎるのでここは
素直に聞くしかない。
「慶太、ちょっと話がある」
「解ってるさ・・昨日の事だろ? あれは車を無断で使用したりあいつらに感ずかれたのは俺が悪かったって・・」
親父とてガードからの報告を受けているはずだ、昨日の事は俺らの不注意とは言え迷惑を掛けてしまったの
だから謝るしか・・
「いや、その事については構わない。・・ところでその指輪、沙織もしていたようだが?」
「ああ、母さんが買ってくれたんだ。ペアリングでしかも高いんだぜこれ?」
「・・何だと」
俺にとっては何気ない一言であったがそれを聞いた瞬間、親父の声が一オクターブぐらい下がり眉をぴくぴくと
反応させる。まさか親父は俺と母さんがペアリングを買った事について非常に機嫌を悪くしているのか?
そんな下らない事では親父が怒るはずもあるまい、何せ仮にも世界中に影響力を持つ会社の長であるのだから
心が広いとは思うのだが・・
61 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:37:17.25 ID:Vav2XUb40
「他に沙織とお前が持っている物でお揃いの物はないのか・・・」
「この指輪以外ないよ。それに親父、さっきから様子がちょっとおかs・・」
「2人とも何やってるんだこんな朝っぱらから」
時を同じく仕事に出かける前の母さんが玄関に現れていつものように俺達2人を見つめている。
やっぱり世界的規模で活躍する母さんには休みが余りなさそうだ、でも心なしか表情が活き活きとしているような気がする。
「沙織、今日も仕事なのか?」
「ああ・・今日から世界中で舞台公演するからな。女優業も大変だ」
そう言いながらも余裕たっぷりの表情で母さんは軽く準備を整えてドアノブに手を掛ける、ここまでなんら極普通の
光景ではあるが・・この後母さんは少し笑みを浮かべながらとんでもない事を言いのけた。
「そうだそうだ。・・慶太、キスぐらいもう少しうまくしろよ。女はキスされる時が一番落ち着くんだからな」
「何言ってるんだよ!! あれは無理矢理母さんが――ッ!!!」
「男は言い訳をするな。それじゃ行ってくる、來夢の面倒を頼んだぞ」
そのまま母さんはいつものように軽やかな足取りのまま仕事へと出かけて行った。さて残された俺ではあるが
目の前にいる親父からは底知れないぐらいの黒いオーラがビンビンと発せられて鉄板が簡単に突き刺さるような
視線を一線に受ける。この状況を打破するにはもう逃げるしかあるまい、幸いにも親父はこれから仕事だし俺も
スクールへ行く時間となっているので逃げれる準備はすでに出来ているので後はそのまま母さんと同じように
ドアノブに手を掛けて出かけるだけなのだが・・肝心の身体の方が中々動かない。だけどもここでおめおめと
残ってしまえば俺の人生の中で最大級の刑罰が親父から直々に下されてしまう、全神経を集中的に振り絞り
何とか俺は右足を動かそうとするが・・怒りのオーラを全身に纏った親父はドスの聞いた声で俺の行動を更に封じ込める。
62 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2008/10/19(日) 19:38:34.17 ID:Vav2XUb40
「慶太、昨日の事について詳細をじっくり聞かせて貰おうか・・」
「おおおっ、俺!! こ、これっから・・スクールがあるのでその話はまた後日にしてくれないかなぁ?」
「お前も昨日はゆっくりと休めなかっただろう。・・俺から連休をやろう」
「い、いや・・学生は勉強が本業だかr」
「いいから俺と一緒に会社に来い!!!! 昨日の沙織との行動について洗いざらい喋って貰うぞ。
特にキスについてな!!!!」
「な、何でこうなるんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
その後、俺は強制的にスクールを休まされ親父と一緒に会社へと連行させられて親父と十条のおじさんがいる
社長室の前でFBI並の尋問をさせられながら、虚実を織り交ぜて昨日の出来事について洗いざらい喋らされるのであった・・
これ以降、俺が親父を苦手としたのは無理もないだろう・・
―fin―
最終更新:2008年11月10日 20:26