『ある研究者』

規則正しく音を立てる機械
チカチカと光るモニター
空しく響く時計の針
私はパソコンのモニターと向き合っている
嫌・・私は私の理論と向き合っている
気の遠くなる実験と研究
飽きるほど唱えた理論と結果
だがソレは雲を掴もうとして必至に飛び跳ねる子供のように
無謀で
夜空に広がる星数を正確に測るかのように
途方も無い行為で
時々私の理論は根底から間違っているのではないか
私はどうしようもない思い違いと固定概念に囚われているのではないかと
物言わぬ私の理論と結果が私訴えかけているように思える
変わり果てた私と言うこの肉の器が私の理論に対峙する
変わり果てる若者達が私に結果を突きつける
私が追い求める結果は多分・・・嫌・・確実に私が生きている内に出会う事は無いだろう
私が死んでから10年、20年、もしかしたら100年経っても叶わなぬかもしれない
だから私は死ぬまで私の理論と向き合い続ける
私の理論を受け継いでくれる人の為に・・
私の志を受け継い・・・

「朝っぱら熱心にパソコンに向かってると思ったら、こんなくだらない事をして・・・」

「くだらなくなんか無いよ。女体化治療の研究に命を捧げた天才生物学者の研究と心情を綴った
素晴らしい日記を後世に伝える為に~・・・」

「ホントくっだらねぇな・・・」

「なんかいった?」

「いいえ何も」

「ならよろしい。さあ用が無いならさっさと行った。私は今とても忙しい」

「カッチーン!アンタが『女体化した子達の女性ホルモンの分泌量を測ってデータで頂戴。
 出来れば女体化する前後のデータがあればなおよし』
  って言うから寝る間も惜しんで今日やっとデータも整理して持って来たって言うのにこの扱いは納得い!か!ねー!」

「あ~そうだったそうだった少し前の話だったから忘れていたよ」

「嫌味か・・・それは嫌味なのか・・・」

「いや~そうじゃないよ、そんな事よりデータは?」

「そんなこ・・・はぁ・・・・先生の言うとおりでした
 女体化したばかりの子は女性ホルモンの分泌量は多く時間が経つにつれて分泌量が正常値までに落ち込む仕組みでした。
  あと奇跡的に女体化前の子のデータも取れ、コレも先生の言うとおり微量ながら女性ホルモンの分泌を確認さえれました」

「そう・・ありがとうご苦労だったね」

「え?それだ~・・け・・・はぁ・・・女体化治療にお役に立てましたか?」

「いいや全く、精々女体化を人為的に発祥させる事が出来るかもしれない事が分かった程度だね」

「それじゃあ本末転倒じゃないですか!」

「仕方が無い。私達は余りにも女体化を理解していない。
 インフルエンザを知らないのにタミフルが出来るわけが無いように
  私達は骨の髄まで女体化を理解しなくちゃいけない訳で、
   まだ本来の目的のスタートラインにすら立てていないんだよ」

「そんな~それじゃあ何時になったらそのスタートラインに立てるか分からないじゃないですか」

「そう・・・もしかしたら生きてる内にソコに立つ事すら出来ないかも・・・そして今私達がやっている事は
 かけた時間に対して得られる物がとても少なすぎる・・・まるで今日の献立を毎日日記に記すように・・・」

「・・・先生・・」

「いや・・忘れてくれ、今日は少しセンチメンタルのようだ・・」

「タバコの本数も最近増えてますしね。禁煙しろとはいいませんが本数は減らすようにして下さい
 本来この部屋は禁煙なんですから。」

「フフ・・考えておくよ、まさか君が私の心配をするなんてね」

「不健康極まりない生活が目立ちますからね、俺でも流石に心配します・・・・
 なんですか?ニヤニヤとこっちを見て」

「フフフ何でもないよ。さあ今日も献立日記に1ページを刻もうか」


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最終更新:2008年11月19日 00:22
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