「いや、感想って言われても」
唐突に、親友に嬉々として女になった感想を求められても困ってしまう。
そもそも、俺が女になったのは今朝だというのに。まだ頭が混乱していて、まともに思考が働いていないくらいなのだから、感想なんて言われても困ってしまう。
「いや、確かにね、まだ聞くには早いだろうと俺も思ったよ。
けど、やっぱり気になるじゃないか、俺だってもう一週間もないんだから」
そう、俺とこいつの誕生日は五日しか変わらない。そしてこいつも当然童貞。
だから、まあどんなものか聞きたくなるのはわかる。
「いやでも感想ってやっぱちょい難しいだろ
まだ俺だってこの体になれちゃいないんだから」
「だろうな、けど俺が聞きたいのはたった一つの行為についてなんだ」
「一つの行為?」
なんだかもったいつけた調子のこいつに、話を続けやすいよう相槌をうってやる。
うん。俺っていいやつだ。
「そう一つの行為だ
――すなわち、お前が今朝、俺にメールを打ってから五分後くらいに風呂場で始めた……」
……ちょっとまてこいつなんについてきこうとしてやがる。そもそもこいつはめーるしてからさんじゅっぷんごくらいにきてたじゃないかいやまさか
「みてた、のか」
「ふむ、正しくは聴いてた、だな
で、どうだった。気持ちよかったのか? その体、というか女の体でのオナ」
クズ野郎の顔が大きくずれた。ていうか殴った。俺が。
「お前……よくそのことを俺に話してくれたな
お礼に――――殺す」
「いやそれお礼じゃないから。うわいてえ蹴るな。やめろ、股間を狙うんじゃねえ。いてぇ! いてぇから!」
「うるせえぇぇえ!! しねっ! てか殺す。マジで殺す」
このあとなぜか俺はこいつを殺せず。それどころか、やられちゃってなんだかカップル的なものになってしまいました。
いや、女にさせるのが嫌だったから仕方なくだよ。気持ちよくなんてなかったってば。ほんとに。
最終更新:2008年12月05日 00:25