…ブン!…ブン!
棒状のモノが風を切る音が、リビングから俺のいる廊下まで聞こえてくる。
「オイ、危ねーからやめろって言っ…!?」
言いながらドアを開け、入った瞬間に俺の真横、数cmの場所を通過する金属バット。
姉貴はまーた室内で素振りをしてやがったのだ。
「…った傍からコレかぁーッ!」
「あははは、ごめんごめん。」
焦ったようにバットを後ろに回して隠す姉貴。
しかし、今更そんなコトしてもわからないワケがない。
「ごめんじゃなくてさ!前にもやってて、俺の後頭部掠めたじゃんか!」
「でも当たらなかったじゃーん。だーいじょうぶだって、間合いの把握には慣れてるんだから。」
もう、このやりとりも何度目だろうか。
言ってもさっぱり聞かないこの人に、果たして嫁の貰い手がいるのか、おと…妹ながら心配だ。
「ハァ…まぁいいや。ん?何これ。」
説得を諦め、素振りを続ける姉貴から離れてコタツに入ると、その上には小箱が乗っていた。
「ああそれ?戦利品。いるならあげるよー。」
開けてみると、それはピアス…しかも、姉貴のセンスでは選びそうもないド派手なヤツだ。
「戦利…何の?」
「それはナイショ。」
「…エンリョシテオキマス。」
「あらそう?…じゃ、ちょっとシャワー浴びてくるねー。」
一息ついて風呂へと向かった姉貴が置いていった金属バット。
何気なく、それを手に取ると、
かなり使い込まれているが綺麗だったそのバットに新しく、微妙にヘコんだ跡が…。
しかしその発見は、ただなんとなく恐ろしく、俺の心の中へと、大切にしまっておくコトとなった…。
おしまい
最終更新:2008年12月05日 01:22