1.女体化現象。15、16歳で性行為未経験、いわゆる童貞が女体化してしまうという現象。
数ヶ月前に女体化を見事(?)無事に(?)果たした私にとって、それはそれこそ子供で生まれない限りは無関係なものになったと勝手に思い込んでいた。
しかし、昨日自宅に帰り着いて、何気なくカレンダーを見つめて、それが甘い考えであることを思い知らされてしまった。
早めにクリスマスプレゼントをもらったとはいえ、クリスマスイブまではあと一週間。
翌日が当然クリスマス。
そして、その翌日が・・・、隆司くんの誕生日だ。
2.『ガキの頃は誕生日とクリスマスを一まとめにされるのが嫌だった。』
そういっていた隆司くんの誕生日は12月26日。
当然学年は一緒。
数ヶ月前に私が女体化しているということは・・・。
隆司くんが童貞なら女体化する可能性があるということだ。
私が男だった頃はよく一緒に居たので女っ気が無かったのは間違いない。
少々疎遠になっていた時期に彼女が居たかな・・・。
このときは私が隆司くんを目で追っていたので断言できる。
彼女は居ない。
他にも脱童貞の可能性としては有り得るけど、童貞である可能性の方が高いと言えそう。
3.15歳では女体化が起こらない可能性もある。
つまり今年さえ乗り切れれば来年までの一年間の猶予が与えられるわけで。
一か八かにかけてみる・・・。ちょっと怖いよね。
う〜ん。
かといって未だ付き合っていると正式に言えないような微妙な距離を保っている状態でそこまで一気にいくのは飛躍しちゃうのでは・・・。
どちらにしろ、私から行くのは恥ずかしいし。
運命の日まで、後9日。
どうしよう・・・。
4.結局学校では何も出来ず、今日は大人しく帰宅することにする。
帰り道をとぼとぼ歩く。
はっきり言って少しもいい案が浮かばない訳で。
どうすればよいのだろう・・・。
下を向いて歩いている懐かしい声に話し掛けられる。
5.「優くん、いや、今は優ちゃんか。お久しぶり。」
「小泉先輩。お久しぶりです。」
「どうしたの?暗い顔して。」
「そうですか・・・。私そんな顔してましたか?」
「うん。してる。私でよかったら話、聞いてあげるよ?」
小泉先輩は近所に住んでいる私の2つ上の先輩だ。
中学は同じ中学に通っていた。先輩が高校にあがってから会う機会は減っていたが。
一人で悩んでいてもどうしようもない気がする。
素直に甘えてみよう。
6.先輩の自宅にお邪魔することになる。
2階が先輩の部屋だそうだ。お邪魔するのは初めてである。
どうぞ座って待ってて。との先輩の言葉に甘えて、部屋の真ん中にあるテーブルの側に座る。
テーブルの上にはカゴの中に大量の蜜柑が入っていた。
7.「どうぞ、蜜柑でも食べて。」
「ありがとうございます。」
「で、どうしたの?」
「えっと・・・、実は・・・。」
少し恥ずかしかったが全て話した。
それほど切羽詰っている。
8.「ふ〜ん。なるほど。それは確かに悩めるところね・・・。」
「はい。」
「女の子なんだから、安売りするって言うのもちょっと違うわよね。」
「そうですよね、やっぱり・・・。」
「でも、何もせずにカレが女体化しちゃうって言うのもいただけないわよね。」
「そうですね。どうしましょうか・・・。」
「最終的に決めるのは優ちゃんよ。ただ・・。」
「ただ?」
「私は何もせずに後悔した。あの時私が何か行動を起こしていれば。例え上手くいかなくとも後悔することは無かった。今もそう思う。」
「先輩・・・?」
「ごめんなさいね。話がずれちゃったね。」
「いいえ・・・。」
先輩も同じようなことを考えたことが有ったのかな?
私は、私はどうしたいんだろう・・・。
9.「優ちゃんはどうしたいの?」
「私は・・・、うん。私は隆司くんに女になって欲しく無いです。」
「そっか。うん分かった。じゃあ、ちょっとだけ手伝ってあげる。」
「先輩。でも・・・。」
「大丈夫。任せておいて。」
先輩はパチンとウィンクをして見せた。
理由は無いけど、すごく安心した。何とかしよう。
後悔しないように。
10.件のミニスカサンタ事件から2日後。
あの後、駅で追いついてなんとか誤解は解けた。
しかし、結局告白は出来ず。プレゼントを渡すのが精一杯だった。
そして、今日。
今度は優から放課後のお誘いがあり、今はその指定された待ち合わせの場所へ向かっているところだ。
なんだか、いつもの商店街から外れた薄暗い場所へと向かっている。
一体どこで待ち合わせるんだ・・・。
指定の住所に到着する。雑居ビルの2階に目的地はあるようだ。
なんか怖いな・・・。
覚悟して階段を上るとドアを開けた。
11.『おかえりなさいませ、ご主人様〜ぁ!』
ドアを開けた俺はそんな言葉に迎えられた。
アレ?ナンダココハ・・・。
目の前にはいわゆるメイドさんがたくさん居る。
えっと、これって、メイドカフェってやつですかね・・・。
場所間違えたかな・・・。
急いでポケットのメモを取り出して、確認していると・・・。
12.「やぁ、少年。君がタカシくんかな?」
「えっ、・・・はい、俺がそうですけど。」
何処かで見たことがあるようなメイドに・・・いや、この人はなぜかサンタの格好をしている。
しかもミニスカ。
ミニスカサンタに話し掛けられる。
「そうか、そうか。待ってたよ。まあ、遠慮せずに入ってよ。」
そう言うと俺の腕を取って店内に連れ込むミニスカサンタ。
なにもんだ、この人は・・・。
そんなことを考えていると・・・。
「優ちゃ〜ん。タカシくん来たよ〜。」
なんだと、優?
つまり、やはり、待ち合わせ場所はココであっていたのか・・・。
そんなことを考えていると店の奥から優が出てくる。
うん、あれ?えっと、優だよね。
13.恥ずかしそうにうつむく女の子。
その顔は確かに優だ。
しかし、格好が・・・。
一言で言えばサンタだ。
ただ、ミニスカだ。
ミニスカサンタだ・・・。
メチャクチャ可愛い・・・。
14.着替え終わった優を連れてメイドカフェを二人で出る。
優が着ていたサンタコスチュームは袋の中に入れて優が右手に持っている。
最初に俺に声をかけたサンタさんは『また来てね〜』とさわやかに言ってきた。
「優。」
「・・・。なに、かな?」
「なんで、その・・・あんなことに?」
「う〜ん・・・色々あってね。なんか、私の思い描いていたのとは大分違ったんだけど・・・。」
「・・・、どういうことよ・・・。」
「いや・・・、うん、何の意味も無かったのかもね・・・。」
「意味ね・・・。どういう意味を持つのを望んでたかは分からないけど・・・。」
「うん・・・。」
「可愛かったよ、優。」
「・・・、本当に?」
「うん。」
「ありがとう。」
少し顔を赤くして喜ぶ優。本当に可愛いよ・・・。
頭がどうにかなりそうです。俺は・・・。
15.「優。」
「・・・なに?」
「俺さ、ずっと言いそびれてたんだけどさっ。」
「うん。なに?」
「俺・・・。俺・・・。」
「どうしたの?」
「優。」
「はい。何度もどうしたの?」
深く息を吸い、吐き出す。
なんだか、想像していたシチュエーションと違う。
もう少しいい雰囲気で言いたかったけど。
優が可愛かったから良いか。
16.「好きだ。優が女体化してからずっと。」
「隆司くん・・・。それって、ホントに?」
「ああ、命をかけて。」
「私も・・・。」
「優・・・。」
「私も大好きだよ、隆司くん!」
ボフッと突っ込んできた優を抱きしめる。
小さくなった身体は俺の腕の中にスッポリ収まった。
17.「そうだ、クリスマスプレゼント。お返ししないとね。」
「良いよ、別に。あれはお詫びの意味合いが大きいし。」
「それじゃ悪いよ。」
「気にすんなって。それに優が俺の彼女になってくれたことが一番のプレゼントだよ。」
「・・・、ありがとう。でも、やっぱりプレゼントあげたい。」
「・・・、そうか、しつこいね、優は。何をくれる予定?」
「コレ、かな。」
私の左手は隆司くんの右手に。
空いている右手にもつ袋を軽く上げてみる。
「それって・・・。」
「クリスマス、楽しみにしていてね。」
ほぼ、先輩と勇気さんの言うとおりになったな。
でもすごく恥ずかしくって私は全力で逃げ出すハメになったのだった。
おしまい。
最終更新:2008年12月14日 00:08