幼い頃から『跡取り息子』と呼ばれ続けば、否が応でも……否なんて思う隙も無いほど、その呼び名通りに育つもんだ。
農業高校に入学し、野菜を植えて牛と戯れる。一年中教室で習う国語や数学なんかは重要ではないと知った。
今、数学の授業中に外を眺めた俺の瞳は、校庭を軽やかに駆け抜ける一頭の馬を映した。
「ジャック!」
ある時期から脱走する事で有名になった、栗色の艶やかな毛並みの持ち主は、校庭の端で雑草を食むと、追いかけて来た生徒が近付いたのを見計らって再び走り出した。
これを見てわかる通り賢い馬なので、逃げ出したら最後、ある一つの方法でしか捕まえられない。
「なんだ、また逃げたのか。蓮村、行ってこい」
数学教師が俺を見て言う。
うるさい教室から、急いでげた箱へ向かいスニーカーに履き替える。
校庭へ走るとジャックが再び姿を現せた。
「ジャック! めっ!」
俺が怒って叱りつけると、ジャックは目の前に止まり、体を震わせ頭を下げた。
「ちゃんと放課後まで待てないコは、めっ!」
ジャックを大人しく馬小屋へ帰す方法。それは俺がジャックを叱る事。しかも『めっ!』が無いと効かない。
そしてジャックが脱走し始めた時期とは、俺が女体化してすぐ。
みんなからはさすが『農家の息子』なんて言われるが、俺の心境は複雑だ。
おわり
これwwなんぞwwwww
最終更新:2008年12月20日 13:14