「なんだって? 年賀状?」
「そうそう、年賀状。兄貴もちゃんと友達とかに出しなよ〜」
女体化してからの弟は、それまでの大ざっぱさはどこへいったのか。まめなことをするようになった。
年賀状なんて、去年は一通も出してないくせに、今年は俺に強要するほどだ。
「俺は年賀状画像で済ますからいーよ。ほれ、VIPのスレに参加してるしな」
PCの画面を見せながら軽く笑う。弟もVIPPERだったはずだが、弟は最近はめっきりPC自体を触らなくなっていた。
「兄貴暗いー。もっと明るい趣味持ちなよ」
「うるさいな。お前だって女体化するまでは嬉々として参加してたじゃないか」
「ほら、来年は丑年だから緊縛プレイのロリ牛ようじょ……」
「兄貴……私はなんで兄貴が女体化しなかったか不思議でならないよ」
呆れ顔で弟は俺を見てくる。
そんなに俺が男なのがうらやましいのだろうか。
「そりゃ、そん時はまだオタじゃなかったしな。普通に彼女いたし」
「あー三木さんだっけ。可愛い人だったのにね」
「うるさい」
弟は机に向かい年賀状を書く作業を続けていた。
いっちょまえに丸文字なんか使いやがって、すっかり女気分を満喫している。
「ほい、兄貴」
「んあ?」
声をかけられて弟の方に向き直ると、弟は一枚のはがきを差し出して微笑んでいる。
「年賀状あげる」
「はぁ? 俺は兄弟だぞ——」
「——待て、そのまま動くなよ」
俺はおもむろに近くにあったデジカメで年賀状を差し出す弟をフィルムに収める。
「うわ! 何するの!?」
「いやー、いい写真が取れた。“年賀状を手渡ししてくれる美少女”って萌えるわ。せっかくだから今年の俺の年賀状はこれで……」
「何それ……バカ兄貴」
すまん。これが限界w
最終更新:2008年12月20日 13:17