「……太った」
いやいや、ショック何てうけちゃあいない。いくらいまの俺はそこいらにいる女たちとは一線を画すような美少女だとしても、
俺はもともと男なんだ。
だから、すこっしばかり太った位でショックをうけたりはしないのだ。
けれど、失敗だったかな、とは思う。
いくら俺が女になってからも以前と代わらない程度の食欲を持ったままだったとはいえ、
「女性限定!! 30分以内に食べればおだいはいただきません!!」
何て謳い文句のお店に行って、軽く平らげてしまったのは。
ただ、失敗だったかなと思うのは俺がいまの見た目を気に入ってるからであって、自分が醜くくなるのが許せないからであって
……あいつに嫌われるのかも何て考えは微塵も含まれちゃあいないのだ。
だから、今日から俺が少食を心がけようと思うのも、ここのところ見栄えに気をつかったたりしているのも、風呂に入る時間が
延びたことも、全て自分のためであって、断じてあいつに褒められるのがうれしいからなどでは有り得ない。
いや、あいつに褒められるのがうれしいのだって、ただ俺の可愛さを認めてくれるのがうれしいだけで、女にならなかったあい
つの事が気になるからではないのだ。
なんて、馬鹿らしい思考に耽ってから一息つく。
「はぁ……無駄だよなあ、こんな自己弁護見たいな考えごと」
どうしたって認めなければいけないんだから、自分のからだがもう女だってことも……心が体に引きずられてることも。
「寒っ」
こんな時期にバスタオル一枚で体重計に乗っているのだ。そりゃあ寒い。それに、なんだかまぬけな光景だ。自分のしているこ
とがあまりに女性らしくて。
けれど、いずれは、きっと、そう。
なるようには、なるんだから。
……そのとき、あいつに選ばせればいい。
そんなことを考えなから、俺は明日の朝からマラソンを始めよう。食事を減らすよりはこちらの方が効果的だろうし。何てこと
も考えて、風呂にはいることにした。
……前よりも長い時間を使って。
おわり
最終更新:2008年12月20日 13:32