「長男、ちょっと、星を見に行かないか?」
「えーいきなりなんだよ父さん?」
「まあ、付き合ってくれよ」
「んーまあ、明日休みだし、いいけどさ」
「じゃ、支度するからちょっと待っといてくれ」
「んー。先に車行っとく」
数十分後、二人は、山の中腹にいた。
「長男、お前ももうすぐ15だろ?」
「そうだね」
「どうするつもりなんだ」
「どうって……」
「お前の姉さん、いや、兄さんにも言ったんだがな。男でいるのか、女になるのか」
「俺、そんなの考えてないよ」
「じゃあ、考えてみてくれ。お前の兄さんもそうだったが、これは考えなきゃいけないことだ」
長男は少しだけ悩んでから……答えた。
「……今は、女になりたいと思ってる。美少女になれるってのにはあこがれてるし……」
「ははは。長男はそんな風に思ってるのか」
「だがな、男でいるのも、悪くないぞ?」
「これは昔の話なんだがな、俺も女になりたいと思ってたんだ」
「え、じゃあどうして?」
「そう言ったら、おまえの母さんにひっぱたかれたんだよ。『私と付き合ってるくせに、そんなこと』ってな」
「そ、その頃から付き合ってたんだ……」
「おいおい、引くなよ。円満な夫婦じゃないか」
「で、結婚したんだ」
「まあな。今ではあのとき女にならなくてよかった。と思ってる。お前達が生まれたしな」
「ふぅん」
「まあ、よく考えることだな」
そのとき、チカチカと空が光り、星が降り注いだ。
「ほら、見ろ。流星群。あんな感じで、選択肢は広がってるんだ。どれも希望がある。光った未来だ」
最終更新:2008年12月20日 13:38