安価『ほ んだな』

「ほ……」
なんだこれ。
いきなり親友——つっても俺の方から一度告白してふられてる危うい関係ではあるけれど——からうちに来いといわれたと思ったらずっとこの調子。
家に呼ばれたこと自体——こいつが女になってからは初めてだ——はうれしいのだけれど、こんな調子ではどうしたらいいのかわからない。
と言うか、なんだか既視感を覚えてしまう。
いつだったか、似たようなことがあった気がするのだけれど、思い出せない。
「ほ…………ほ、ほ!!」
それに、目の前のこいつが段々怒り出してきているような気もする。早く気がつけといわんばかりの表情だ。
なんだろう、この状況。
なんでだか分からないけれど後頭部がズキズキ痛み出してくる。
「ほ、ああ、もういいか。残念。失格だ」
唐突に目の前の親友が、諦めたようにそういった。
なにがなんだか分からない……。けれど、すごくもったいないことをした気がするのは気のせいなんだろうか?
「せっかく、お前と同じように百回も言ってやったってのに気がつかないんだからもうだめだ。あの後まともに接してきてくれたから、せっかくフラグがたったのに、残念だったな」
——あのあと? フラグ?
ああ、これあれか。あの時の再現か。あの時の事、最後に頭を叩かれ過ぎたせいであんまり覚えてなかったからなあ。ようやく思い出せた。こいつは、あの時の俺の真似をしていたんだ。
そういうことなら、後に続く言葉だって予想が付く。
……きっと、まだギリギリセーフだよな。
そう決意して。
俺はこいつに——

——そのあと、折角念願の関係になれたのはいいが、興奮のあまり襲いかかり——家の中に恋人と二人なんて状況じゃあしかたがないだろ?——、こいつの倒した本棚に押し潰されたの後、さんざん罵倒され、またしても記憶を失いかけたのは秘密だ。
彼——彼女曰く「つき合って初日に行為に及ぶなど言語道断。何足飛びだ? せめて数回デートしてからにしろ。まだフラグは立ってない」だそうだ。まったく攻略難度が高いのか低いのか分からなくて困る。
いや、今回悪いのは間違いなく俺なのだけど。
おわり


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最終更新:2008年12月20日 13:44
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