安価『は』

「は、は、かあ……何度目だろ」
なんでか分からないけど尻取りを挑まれた。こいつなりに俺の好感度を上げようとしているんだか知らないけれど、尻取りってどうなんだ。
一応この間のことで——とても腹の立つこともあったけれど——恋人同士にはなったのだから、デートに誘うくらいはしてほしいのだけど。
というか、それくらいしてくれなければフラグは立たねえから。とでもいってやりたいくらいだ。いや確かに好きになり出すフラグが何時
立ったのかは自分でも覚えていないけど。
それでも尻取りなんていうままごと遊びで俺の心は動いたりしないのだ。
「は、ハイブリットレインボウ!」
ちなみに、いまは俺が「は」で攻めていたりする。
なんで「ら」とか「る」じゃなくて「は」なのかなんて自分でも分からん。なんとなくだ。
強いて言うなら、「は」で終わる単語はそんなに多くない気がしたから。「ら」や「る」で攻めることもしようとしないこいつへのハンデ
のようなもの。……いや、違うか。
「う、うちは。どこかの里を裏切った忍者の名字な」
ちなみに、妙な単語ばかりになっているのはこの尻取りが一時間程度は続いているからだ。
それだけつき合ってやっているのは、一応まあ、こいつは俺の彼氏だし、俺はこいつのことが好きだから。
——それと、言わせたい単語があるから。も、か。
「は、また「は」か。は、ハローワールド」
「なんだそれ? プログラム覚えるときに最初にうつプログラムか? まあありか」
「いや、某教団の曲名のつもりなんだけど……」
ほんとにこいつもなかなか言ってくれないものだな。妙な曲名ばかり使いやがって。
「ドーハ。あれな、某大会で悲劇が起こった場所な」
「いやそれくらい分かるけど。また、「は」かよ」
いい加減諦めてほしい。早くお前の身近にある「は」から始まる名前、いや単語を言えというのに。
「は、は、ハミルトンケーリーの定理!」
「……はあ、り、リハ。リハーサルの略な」
「えっ? 略とかあり? つうかそれリハーサルでいいじゃねえか」
「うるせえ俺が言うのはアリなんだよっ!」
結局、こいつが俺の言わせたい単語——つまりは「今の」俺の名前を読んだのは、これから一時間は経ってからのことだった。
まったく、そんなんじゃフラグたたねえから。
……いやというかこれ今日俺が好感度上げてんじゃね。意味ねえ。


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最終更新:2008年12月20日 13:45
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