「うわーっ、またかよ、ほんとにょたって下手だなぁ」
「う、うるさい。そもそも男はなんで突然私に料理を教えようなんて……」
そこは俺の家の台所。コンロは2口、シンクも調理台も広くないので、にょたに付き添うと必然的に密着するような空間だ。
「だってお前、女になったからには料理が上手いほうが何かと得じゃないか」
「まあ、それはそうだけど……」
俺は女体化してとてつもなく可愛くなったにょたに自分の料理の腕を自慢したくなったのだ。
「ほら、喋ってないで手を動かす。米は全部の粒を擦るように丁寧に磨ぐんだ」
「そんな抽象的なこと言われてもわかんないって」
「こうだよ、こう」
俺はおもむろににょたの手を取り、二人羽織りの状態で米磨ぎをレクチャーする。
やわらかいにょたの手がふやけて、さらにやわらかい……なんて考えながら。
「ほら、これでOKだ。あとは炊飯器に入れて、次の準備だな」
「うぉ! そんなに塩振ったら食えなくなるぞ!」
「手の上で包丁使うの!? うそでしょ!?」
「ちーがう、猫の手猫の手」
そんなやり取りをしながら、俺はにょたの料理を手伝った。
にょたは料理初心者どころか学校以外で料理するのが初めてというほどで、普通の20倍くらいは大変だったが……。
ともかく、なんとか朝食の定番であるご飯、お味噌汁、鮭の塩焼きを完成させた。
「ふあー疲れたな」
「なんだ、料理って結構楽しいじゃん。男、また教えてよ!」
作り始めたのは、午前8時頃。
完成したのは、午後5時頃で。
「勘弁してくれ……」
「勘弁したげる」
笑いながら、にょたはそう言った。
もしかして、最初から俺の下心はバレてたんじゃないだろうな……
そう思っていると、にょたは続けてこう言った。
「いただきます♪」
最終更新:2009年02月10日 10:54