雨が降っていた
窓に幾多もの雨粒が当たり、流れ落ちてゆく
閑散とした住宅地が雨の音を集めて耳に流し込む
「雨… 止まないな…」
薄暗い部屋の中で呟いた違う声
自分の心を投影しているかのような雨天
もう戻れはしない
誰かが階段を上る音がする
どうでもいい…
今度は違う音が
ドアをノックする音と話し掛ける声が聞こえた
「入るぞーって鍵かけてんのかよ珍しい
雨でも降るんじゃね?もう降ってるけどさ」
応える気分じゃない
誰だよこいつをあげたの
「冗談言ってる場合じゃないな」
それはこっちが言いたい
「プリントと貸してくれって言ってたゲーム置いとくぞ」
沈黙が流れる
「で、いつまでそうしてるつもりだ?」
「みんな心配してるぞ
俺とか俺とか俺がな」
「取り敢えず来いって
早退とか保健室行ってもいいしサボるなら付き合う」
「だからちゃんと来いよ
じゃそろそろ帰るわ」
階段を降りる音と玄関が開く音が聞こえた
窓から外に目を向けるとカバンを傘に雨の中を走る姿が見えた
傘借りりゃ良いのに
しばらくして置いていったプリントを取った
それは少しクシャクシャで隅が濡れている
そんなプリントを大事に引きだしにしまった
「雨… 止むかな?」
薄暗い部屋でそう呟いた
雨足が少し弱くなったように思えた
最終更新:2009年02月23日 23:14