『お家騒動 閉幕』

10 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 14:44:59.78 ID:94V/Dql/0

一方、城下へ繰り出していた來夢姫と香織姫は楽しく散策しあいながらほのぼのと楽しんでおられました。

「來夢も少しははちゃらけなよ」

「香織さんは元気だね」

「だってこんな時だからこそ・・ね」

どうやら香織姫は未だに踏ん切りがつかないようです、それに体が弱くとても城下にすら出ることすらままならぬ
來夢姫に少しでも一般的な楽しさを教えて上げたい気持ちもあるようでそれを兼ねて入るようです。

「そんなことより來夢、あんたもちょっとは自分に率直になりなさいよ」

「えっ? 僕はいつでも・・」

言葉を飲み込みながら戸惑う來夢姫ではありますが、香織姫の言っている事には否定できません。
なんだかんだ言っても香織姫にとって來夢姫は男時代から弟みたいな存在でしたし女体化してからは妹同然に
可愛がっているのでその思いは強まるばかりです、といっても香織姫はどこぞの誰かみたいに來夢姫を過度な
束縛はしないので來夢姫にとっても有難いところです。


11 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 14:48:09.57 ID:94V/Dql/0

「・・あのね、私達は何年の付き合いだと思ってるの? 
私は來夢が心配の余り束縛をするどこかの馬鹿とは違って來夢の考えてる事ぐらい手に取るようにわかるわよ。
楽しさに溺れろとは言わない、だけど時にはわがままになるのも重要よ」

「ありがとう。香織さん・・」

「さっ、しんみりムードはこれでお終い! こうなったら徹底的に遊びましょ!!」

「そうだね!!」

先ほどから一転として動き回る來夢姫、そんな光景を隣に居た香織姫も嬉しそうにしながら一緒に行動します。
そんな2人の光景を影から見守る男が1人、香織姫が言うどこかの馬鹿・・慶太様です。あの後で荒くれ者を
一掃した慶太様は偶然にも來夢姫を見つけてすぐさま飛び出したい衝動に駆られていたのですが、香織姫が
いたお陰で泣く泣く影から見守るほかありませんでした。


12 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 14:50:33.83 ID:94V/Dql/0

「クソッ! 誤算だった・・まさか來夢とあいつが一緒に行動するとは――ッ!!!」

慶太様とて香織姫の事は昔から一緒に居る家族のようなものですので嫌いではありませんが・・幼い頃から
何かと喧嘩ばかりしてきたので自然と昔の癖が出てしまうものです。

「だけど、俺とあいつが結婚したとして親父は無論の事、母さんや十条のおじさんに來夢にとっては何ら変哲も
ないことだろうな。だけど何であいつなんだ・・」

しかしながらこのまま佇むわけにもいきませんので覚悟を決めて行くしかありませんが、何かしらのきっかけが
欲しいものです。そんな事を考えていた慶太様ですが・・そんな時、楽しんでいた香織姫達はとある災難に巻き
込まれてしまいます。

きっかけは香織姫がとある人物とぶつかってしまった事から始まります、香織姫がぶつかってしまった
相手・・それはあろう事か慶太様が懲らしめたゴロツキです。しかもあろうことか先ほど慶太様にやり込められた
こともあってか、ちょっとしたことでもすぐに怒りがこみ上げてきます。

13 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 14:57:09.81 ID:94V/Dql/0


「あっ、すみまs・・」

「おいっ! どこ見て歩いてるんだ!!」

「俺達があんな餓鬼にやられて腹が立っているってのに――ッ!!」

この時点で既に周囲に醜態を晒している形だけの維新志士ではありますが、1人の男が舐めまわすように
香織姫と來夢姫のほうに視線を集中させます。

「っと、こいつもそうだが奥に居る奴も良く見てみるとかなりの上玉じゃないか」

「それも・・そうだな」

この流れは非常に危険です、それを察知した香織姫は來夢姫を守ろうと男達に噛み付きます。

「ちょっと!! ぶつかってきたのは私でしょ、その子は関係ないはずよ!!!」

「うるせぇ!!!」

「ちょっとそこまで顔を貸して貰おうか・・」

「フフフッ!」

香織姫が男達を抑えようとしますが相手はなんだかんだ言ってもこの国では一応は侍・・香織姫がいくら
武道に秀でていてもこれでは勝ち目がありません。そうこうしているうちに集団の1人が來夢姫に迫ります・・


14 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 14:58:54.01 ID:94V/Dql/0

「ちょっと!! ぶつかってきたのは私でしょ、その子は関係ないはずよ!!!」

「うるせぇ!!!」

「ちょっとそこまで顔を貸して貰おうか・・」

「フフフッ!」

香織姫が男達を抑えようとしますが相手はなんだかんだ言ってもこの国では一応は侍・・香織姫がいくら
武道に秀でていてもこれでは勝ち目がありません。そうこうしているうちに集団の1人が來夢姫に迫ります・・

「さて、俺達と一緒に行こうかお嬢ちゃん」

「えっ、ちょっと・・」

「ちょっとあんた!! 來夢から手を離しなさいよ!!!」

「人の心配している暇はないだろ!!」

「や、やめなさいよ!!!」

ついに香織姫にも男達の魔の手が差し伸びます、影から見ていた慶太様もこればかりは居ても立っても
いられずに腰に差してある自慢の愛刀を携えて男達の元へと向かいました、そんな事も露知らず男達は
香織姫と來夢姫に迫ります。


15 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:02:26.41 ID:94V/Dql/0

「さっ、あそこの飲み屋で酌でもして貰おうか」

「ちょ、ちょっと!!」

「か、香織さん・・」

「散々遊びきった後でこいつらを遊楽に叩き打って大もうけしてやる!!!」

「そりゃいいぜ!!!」

下卑な企みを考え付いて笑いが止まらない男達・・もはやそこには先ほどの維新志士の欠片すらありません。

「さて行くk・・ウゲッ!」

「おい、どうs・・フゴッ!」

突如として倒れるゴロツキ達、香織姫と來夢姫は何が何だか全く解らずただただ呆然するしかありません。
そしてゴロツキをのしたのは他ならぬ慶太様、しかしその顔つきはいつもとはちょっと違っておりました。
あっという間に仲間をのされてしまった残りの1人はいつもとは違う慶太様に言葉では表しきれないほどの
恐怖心が身体の芯まで湧きあがり、それに伴うかのように体中からは震えが止まりません。


16 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:04:11.67 ID:94V/Dql/0

「貴様等、一度ならず二度までも・・」

「あわわわ・・」

慶太様は鞘を抜くと真剣を振るい、その剣先を男の顔面に突きつけます。ようやく香織姫と來夢姫も
落ち着いたのか冷静になって周りを確認すると事の顛末を把握いたしますが・・いつもの慶太様とは違うことに
驚きを隠せません。

「どうした、維新志士ならそれに違わぬ誇りを見せてみろ」

「お前、今してる事解ってるのか・・いくら武士の世とは言え刀で人を切りつけたら死罪同然だz――」

慶太様はそのまま一閃・・真剣を振り、武士の象徴たるべきである髷をそっくりそのまま切り落としてしまいました。
突然の慶太様の行動に男は腰が抜けて恐怖がピークに達したのかあろう事か失禁してしまいました。

「あ・・あがッ・・・ た、たすけt」

「こんな奴が国を憂う維新志士だとは・・笑わせるな。この国のために切り捨てるのも一考か」

もはや慶太様には理性のガタが外れ掛かっているようです、もしこれ以上の事をしてしまえばいくら慶太様が
明人将軍の息子とは言えどもタダではすみません。普段の慶太様なら解るはずなのですが、どうやら物事の
判別がつかないぐらいに慶太様は怒り狂っているようです。

黙って様子を見ている香織姫や來夢姫も不安が過ぎり、最悪の事態を考えてました。

17 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:11:27.35 ID:94V/Dql/0

「か、香織さん。兄貴このままどうなるんだろ・・何だかいつもと調子が違うみたいだけど」

「・・これ以上はまずいわね。來夢、ちょっとここで大人しくしてるのよ」

「えっ? ちょ、ちょっと香織さん!!」

何を思ったか香織姫は來夢姫をその場に残すと颯爽と走り出し現場へと向かいました、そんな慶太様はと言うと
そのまま真剣を振りかざし今にも男を斬ろうとしていた真っ最中でありました。

「・・これ以上の猶予は無用だな。俺の家族に手を出そうとした報いはその命で償って貰おうか」

「ひ、ヒィィィッ!!!!」

「これ以上はもう止めなさい!!!!」

何と香織姫は慶太様の前に立ち、なんとその身で慶太様を制止しようと試みたのです。
突然の香織姫の行動に怯えている男や見守っていた來夢姫は無論の事、当人であられる慶太様も驚きを
隠せません。

しかし慶太様は理性のガタが外れ掛かっているので香織姫を力づくでどけようとします。


19 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:16:12.20 ID:94V/Dql/0

「・・そこをどけ。こいつらは俺の家族に手を出そうとした」

「だからって・・これ以上したらあんたは列記とした人殺しになるのよ!!!」

「うるさい! お前には関係ない筈だ・・」

「関係大ありよ!! いい!? 私はあんたの許婚なの、あんたが罪人になるとこれから結婚する私が
どれだけの苦労を背負うと思ってるの!?

だからこれ以上はもう止めるの!! これでも納得が行かなかったらその刀でこの私を斬ってから好きにしなさい!!!!」

「・・・」

香織姫の決死の説得に慶太様は動きが止まってしまいます、更に香織姫は一呼吸整えると止めの文句を言い放ちます。


20 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:19:56.05 ID:94V/Dql/0


「あんたは・・この程度で終わる人間じゃないでしょ!!!」

「そうだよ兄貴、香織さんの言う通りだよ。兄貴はここで立ち止まっちゃいけないんだよ!!」

「――ッ! 俺は・・」

2人の懸命の説得による効果か・・慶太様はそのまま黙って刀を鞘に戻しました。香織姫は一安心したのか
身も心も軽くなってその場でへなへなと倒れこんでしまいましたが、慶太様は慌てて香織姫に駆け寄り倒れ
そうなその身を支えました。

「大丈夫か?」

「バカッ!! ・・こんな無茶して」

「すまない・・」

「本当に・・本当に心配したんだからね――ッ!!!!!!」

「ありがとう」

2人は周囲の目もくれずに暫く互いの身を寄せ合いながら抱き合っておられました。

21 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:21:38.41 ID:94V/Dql/0

後日、慶太様は香織姫と一緒に明人将軍からのお呼びが掛かりました。
もちろん昨日の件についてです、2人は覚悟を決めつつ身を控えながらながら今か今かと明人将軍の言葉を待ちます。

「2人とも顔を上げよ」

「「はい・・」」

2人が顔を上げたのを確認すると明人将軍は単刀直入に用件を言います。

「俺が呼び出した用件は分かっているな?」

「ああ・・ッ!!」

(バカッ! おじ様は将軍なのよ!! そんな態度取らずにもう少し敬いなさい!!!)

(あ、ああ・・)

影から香織姫に抓られながら慶太様は何とか姿勢を正そうとします、明人将軍はと言うと2人の様子を
チラホラと見ながら親心が働いて和んでしまいそうになるのですが瞬時に割り切るとそのまま2人に
大人の貫禄を見せつけます。


22 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:25:40.99 ID:94V/Dql/0

「さて慶太、昨日の事についてだが・・いくら相手があれとはいえ城下で堂々と真剣を振るったお前は
本来なら文句なしの島流しだ」

「・・」

明人将軍が制定した考えにより最近になって武士の象徴でもある刀の使用がかなり制限されることとなり、
自分の身に危険が迫った時以外での刀の使用は厳禁となってしまい、禁を破った場合は度合いにも
よりますが、それでも最低でも島流しとなってしまいます。

しかし明人将軍は2人にとある条件を突き出します。


24 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:28:29.39 ID:94V/Dql/0

「だが、特別に免除にしてやってもいい」

「マジかよ!!」

「ただしそれには条件がある・・何、そう難しい事ではないお前と香織姫が正式に婚約を結ぶことだ」

「それって・・」

「だがッ! ・・離縁は無論の事、互いに他の相手を作った場合は先の騒動の件も含めて死罪を覚悟しておけ! 
    • 俺からは以上だ」

慶太様は呆然とする中で隣に居た香織姫はどこかしおらしくもその表情はどこか嬉しそうです。
しかし当の慶太様はこの申し出に少しばかり不服があるようですが、もし拒否してしまえば明人将軍の
事ですから息子にも容赦はしません。それに母親である沙織姫や妹の來夢姫の悲しい顔を予想すると
凄く居た堪れない気持ちにもなりますし何よりも原因自体が軽率すぎますのでここは男として
覚悟を決めるしかありませんでした。

「・・わかった。こうなったら婚約でも何でもしてやるよ!!!」

「決まりだな。その言葉、忘れるんじゃないぞ」

「おじ様・・ありがとうございます!!」

明人将軍は少し照れ臭そうにしながら静かにその場から立ち去っていきました・・

25 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:32:14.29 ID:94V/Dql/0

話が終わって慶太様と香織姫の2人は離れの方へと移動していました。特に香織姫の方は嬉しさの余り、気が
動転しそうですが・・慶太様の方はと言うと先ほどから一転として不安の気持ちで一杯のようです。

「婚約か・・」

「何よ! さっきはおじ様の前で大層な事を言った癖に!」

香織姫はハッキリしない慶太様の態度が気に食わないようです。まぁ無理もありませんが・・

「あのなぁ、俺だって親父からあんな事言われるなんて」

「怖いんでしょ? 結局あんたは所詮口だけだったようね。
別にいいわ、私が拒否すればあんたは島流しで私は他に良い人見つけて万々歳だし」

「何だと・・!!!」

香織姫のこの言葉に慶太様の中で火がつきます、慶太様も男です! 女性に・・それも他ならぬ香織姫に
あんな事を言われたままおめおめと引き下がってしまえば末代までの名折れです。

「よし・・俺も男だ!! 自分の言った事には責任を持ってやる!!! お前と婚約して一生守ってやるよ!!!!」

(これで私も結婚か・・バラ色の生活が始まるわ)

これを契機に2人は正式に婚約を結び、2人が寿命で亡くなるまでこの国は安泰したとのことです。


めでたしめでたし


27 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/02/13(金) 15:33:35.20 ID:94V/Dql/0

おまけ

明人将軍は部屋を出た後、別室で業務をしておられた十条大老の元へと姿を現しました。
十条大老も明人将軍の顔を見て全てが丸く収まったと判断すると安堵の息が出ます。

「ご苦労さん。こっちも昨日のご意見番との話し合いの調製がうまくいったぞ」

「そうか」

仕事が終わり2人はお茶を啜りながら一息つきます、元々明人将軍は慶太様と香織姫の婚約話には
賛同的で既に孫の名前まで考えている有様です。十条大老も明人将軍までとは言いませんが
中々うまくいっていなかった2人の関係が一気に進んで一安心と言っていたところです。

「元は真菜香と小林が妊娠中に考え付いた話だが・・今考えて見ると2人ともこの事を予想してたかもな。
お前も息子の不祥事を利用するとは考え付いたものだ」

「別に慶太のためではない、あいつがこの話を飲まなければ適当な無人島に島流しをするまで・・それだけの
ことだ。身内だろうが容赦はせんよ」

「全く・・仕事人間だなお前は」

「将軍になってからそれだけの事は覚悟していた。お前もそうだろ?」

「俺は生涯一生、将軍であるお前の黒子を勤めるまでだ。いざとなればお前の代わりに腹を切るまでさ」

「・・2人の婚約は決まった、後は俺達が膿を出し切るまでだ」

後の人達はこの2人を高く評価し、その活躍と生涯を小説や舞台で表現をしながらいつまでも称えていたようです。

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最終更新:2009年05月28日 05:01
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