183 名前:
◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:26:28.60 ID:Ji74kvwo
とある世界、ここでも女体化と言う概念がありつつもそれなりに進んでいる。これはそんなお話
この学校には2人の名物が居る、かつてその名を轟かしその力を思う存分繰り広げた孤独の
男、相良 聖・・それらから自然とついた通り名は“血に飢えた狂犬”彼が通った後には必ず血まみれの
野郎共が転がっていると言う事からついた仇名である。しかしそれも過去の話、現在は女体化によって
見事なまでの美少女になりその荒々しかった性格もかなり激変したそうな。
しかし未だに男時代の本能が残っているのか女体化してからも合気道を始めており、その強さは
極一部から“男時代の方がまだマシだった”とのコメントが残っている。それに力の方も普段の女性が
持つ“それ”を明らかに超えており合気道を使わずともそれだけで一掃出来てしまう。
女体化してからもその名前は今も健全である。
さてもう1人は聖とは違って完全な不良ではないが、この学校の部活内では頼られつつもそのあり余る
力に畏怖されている応援団、その全てを統一している人物・・藤堂 魁。彼もまた男時代はその強大な力を
持ちつつも聖とは違って真面目に行動していたのか頭の方もかなり切れており、その実績はあらゆる
猛者が揃う応援団を一手に取り仕切り纏め上げている事からまさに文武両道を表した人物であろう。
そんな彼も幸か不幸か女体化してしまって周りに(といっても部活内に)多大な影響を与えているようでは
あるものの、これといって全く代わりなく男時代と同じように猛者達を締め上げつつ伝統と誇りある
応援団を守っている、団内の部員達を容赦なく振舞うその姿はまさに地獄に住まう鬼・・いつしか
彼は“鬼の藤堂”と呼ばれ校内では有名な存在となっていたのであった。
そんな対極の2人は滅多に出会うことすらないものではあるのだが・・きっかけは思わぬところからやってくる。
184 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:27:24.91 ID:Ji74kvwo
教室内でどこでもある何気ない男女の会話。2人の名はそれぞれ木村 辰哉、月島 狼子といった。
この2人に関しての詳しい説明は省かせて貰うが・・いつものように何気ない話で盛り上がっているようだ。
「でさ、あの時の聖さんの活躍が凄かったんだよ! 男達を軽々片付けて・・その姿に俺痺れちまったぜ!!」
「へー・・」
「ちゃんと聞いてるのかよ!!」
「痛テテテッ!! ちゃんと聞いてるから噛むなよ!!!」
いつものように狼子に噛まれる辰哉、しかしこれもお約束の一つであるのでこの運命から逃れられる術などはない。
「そういやさ。俺前から思っていたんだけど・・相良さんとあの応援団の団長がやりあうとどうなるんだろうな?」
「そんなもの決まってるだろ! 聖さんが絶対に勝つ!!」
「だけどあの団長もかなり凄いらしいぞ。なにせあの応援団を1人でまとめているわけだからな」
辰哉の言うことも尤もではあるのだが、聖の事を良く知っている狼子は真っ向から反論する。
「あのなぁ! 聖さんのほうがもっと凄いに決まってるだろ!!
そりゃ応援団の団長も凄いと思うけど・・でも聖さんには敵わないに決まってる!!!」
「しかしあの団長も存在感は凄いもんだしな・・でも2人の決闘は見てみたい気もするな」
「だろ!?」
この時点ではただの何気ない会話の一つではあったのだが・・運悪くもとある人物が偶然にもこの会話を耳にしていた。
(団長と相良さんの勝負か・・見てみたい気もするな)
偶然聞いていたのは同じく応援団所属の桃井 国仁。普段なら頭の中で切り捨てるべきものでは
あるのだが、内容が内容なのでその分のインパクトが凄まじいものだ。桃井個人としても団長でもある
藤堂とこの学校の名物でもある聖との対決は見てみたい気もするが、もし冗談かなんかでも下手に
提示をしてしまえば自分の身は確実に危うい・・我が身の可愛さをよく考えた桃井は興奮をぐっと
抑えながら先ほどの提案を胸にしまいこむ。
(っと・・俺は何を考えていたんだ。それに実現してしまえば恐ろしい事になるしな)
桃井とて応援団に在籍して日は長い・・団長である藤堂の恐ろしさは身に染みてわかっている、ここは耐えるのが吉。
185 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:28:29.71 ID:Ji74kvwo
さてその当人の一人・・相良 聖はというともうすぐで授業にも関わらずのんびりと屋上でのんびり過ごしている、どうやら彼女にとって授業など感心はないようだ。
「最近は暇だな。屋上にいる野郎達も俺の姿見るたびに臆病風吹かしやがって・・情けねぇ奴等だ」
聖はご自慢の拳で関節を鳴らしながら仰向けになり青々とした空を見上げる。ここ最近は名前が更に広がったのか、聖の姿を見るたびにゴロツキの男達は喧嘩も売らず大人しくやり過ごすといったパターンが非常に多い、本来ならばここで名が売れたと判断して大人しくするといったのがベターなのだが、こと聖に関しては全く反対のようでこの欲求を満たさない限りは満足しないようだ。だからここ最近はその範囲を広め格闘技系の部活に殴りこみ、その欲求を満たそうとしている・・結果は全て聖の常勝で普通なら満足するのではあるが、却って物足りなさが倍増し日に日に溜まるフラストネーションが一気に増加してしまうという
悪循環が聖の中に広がっていく・・
「格闘技系の部活にも手を出したが・・てんで弱くちゃ話にならんしな。この俺を満足させる奴はいるのかね」
(やべ・・聖さんか、しかもヤバイ事聞いてしまったようだ)
そんなやきもきしている聖の姿を見つけたのは先ほど狼子との談笑を終えた辰哉、その噛み傷を見る
限りどうやら一回だけではないようだ。どうやら辰哉も教師にうまい事言って屋上でサボろうと考えて
いたのだが先客に聖が居た事ようである、しかも生憎にも先ほど聖が漏らしていた独り言をバッチリと
聞いてしまったようで行きづらい雰囲気である。諦めてこの場から退散しようとした辰哉ではあったが
振り返った聖が偶然にも辰哉を見つけると暇潰しに誘い出す。
(仕方ない、大人しく保健室に・・)
「おっ、辰哉じゃねぇか! お前もサボりか?」
「あ、アハハ・・そんなところです」
「丁度暇してたんだ! ちょっとこっちに来い!!」
「はい・・」
前々から辰哉は聖に関しては若干の苦手意識がある、そもそも聖は彼女である狼子の先輩でもあるし
辰哉の先輩で他ならぬ“殺戮の天使”中野 翔の彼氏であるので辰哉からすれば翔抜きだと少し気まずい
ものだ。
しかし対する聖は辰哉の事はそういった面は一切感じて居ないようでただ単に言い易い相手のようである。
186 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:29:19.52 ID:Ji74kvwo
「でよ、最近は暇を持て余しているわけだ」
「はぁ・・そういえば先輩は?」
「あいつは進学コースだから今でも柄にもなくバカみたいに勉強してるんじゃねぇのか?」
(先輩は頭がいいからな・・)
翔の頭脳明晰なところは辰哉は素直に感心している、影では不良をしているといっても成績は
常に一桁をキープしているし人望のほうも頗る良いといえよう。
「そういや今日も狼子に噛まれたようだな」
「ええ・・本当にあいつには困らせられますよ。ま、いい事なんですけどね」
「しかし狼子も噛むぐらいじゃ足りねぇだろうな。俺みたいに拳を使って・・」
「いやいや!! 今のままで充分ですッ!!!」
「そうか? 折角俺がご教授してやろうと思ったのに」
もし狼子が聖みたいに格闘技を覚え始めたら・・噛むだけでは済まされない、考えれば考えるだけ恐ろしい
結果が目に見えているので断っていた方がこの後は安泰だろう。
「だけど狼子もお前と居る時が楽しそうだ。お前の事を言う時なんて本当に嬉しそうだぜ」
「そうですか」
「大切にしろよ」
「・・はい!」
辰哉の真剣な顔つきを見た聖は一安心しながら日頃の憂さ話を再開する。
187 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:30:00.99 ID:Ji74kvwo
「んで、さっきのことだが・・この俺様に相応しい相手ってのはいねぇのかな」
「聖さんと釣り合う相手って・・先輩ぐらいしか思い浮かばないんですけど」
「あのなぁ! 第一あいつはもう俺の相手になんねぇんだよ!!
それに最近の野郎達は俺の姿を見るたびに逃げ出す始末・・却って情けなく感じまうんだよ」
「アハハハ・・」
聖の話に付き合うたびに辰哉からは苦笑しか漏れない。そもそも聖に釣り合う相手を探せと言う事が
土台無理がありすぎる、男時代から培ってきた経験と磨き上げてきたその力・・加えて師範代クラスの
合気道の実力が組み合わされば正面から向き合って勝つのは素人ではまず無理、相手側から
武器使用が許可されない限りは難しい話だろう。
さっきの狼子との会話の内容も思い出してしまうのだが、余り提示しない方がいいだろう、もし実現すれば
この後がなにやら大変な事になりそうなのは肌で感じる。
「まぁ、そのうち見つかりますよ・・」
今の辰哉はこの言葉で精一杯・・
188 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:31:40.83 ID:Ji74kvwo
そして時間は過ぎて放課後、聖は友人達と別れて彼氏である翔と仲良く帰宅の戸についていた。
翔の方はこれからバイトではなく聖の家庭教師、こう見えても翔は将来聖と一緒に自分が進学する
予定の大学へ進学するつもり。そのためには勉強あるのみであるが、こと聖に関しては全くの
勉強嫌いで翔るも最初は苦労させられたのだが・・とある人物に相談しつつ自分なりに教える方法を
模索して行った結果、聖の成績は何とか人並み程度に落ち着いたのではあるのだが、それだけでは
翔が志望する大学には到底受かるはずがない、だからこうしてバイトの合間を縫って家庭教師を
している・・とは言いつつも本来の家庭教師が終わった後は2人きりで過ごすのが通例となっている。
「そういやよ、お前良くサボれるよな。単位は大丈夫なのかよ?」
「はぁ? んなもん知るかよ!!」
「あのなぁ・・」
いつものように溜息混じりの言葉を吐きながらもさすがに長く付き合っているので聖の事はよく分かっている
つもり、そんな翔でも聖の行動については頭を悩まされる事がある。
「だけどな、いくら俺が家庭教師をしてお前の成績が上がったとしてもな・・単位がなきゃ進学はもとより卒業すら出来んぞ」
「えっ? ・・ということは」
「無事に留年。それどころか辰哉や狼子と一緒の学年になるぞ」
「マジかよ!! 誰が好き好んで留年なんてしてやるものか!!!」
聖にとっても留年するということはとても耐えがたい事ではあるようで素直に危機感を感じるようだ。
- とはいっても聖の単位の方は教師陣の総力もあってか何とかギリギリ卒業できるぐらいには
調整をしてくれてはいるようではあるのだが聖自身の授業日数が伸びない限りは難しいようである。
「だからよ、ちょっとはサボらず授業にも出ておけよ。わかんないことあったら俺が教えるから」
「・・考えとく」
ふてくされる聖を見ながら翔は自らの目標のために何とか聖を授業に出そうといろいろ画策するので
あったが・・妙案と言うものはそう簡単に思い浮かぶものではないものでさすがの翔も頭を悩ませられる
ものだ、しかしいつでも考えたって仕方ないので暫くは胸の中に閉まって置いた方が得策かもしれない。
それよりもこれから目の前に起こりうる出来事を楽しんだ方が良いものだろうと翔は思考を切り替える。
「さて、今日は授業の内容おさらいとその応用だ」
「・・それだけか?」
「まぁ・・後はお楽しみだ」
「そうかい」
2人の顔つきが少しばかり艶を帯びているのは気のせいだろうか?
最終更新:2009年05月28日 05:03