クロス『漢と漢』(転)

198 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:43:43.50 ID:Ji74kvwo

そんなピリピリとした放課後の出来事が起きている中でこちらのカップルは先輩組とは対象的に
のほほんとした雰囲気が一杯に広がって周りを充満していた。

「辰哉~、今日はバイトは休みか?」

「ああ、明日は出る事になるけどな」

狼子はいつものように辰哉とのふれあいを楽しむ、刹那の方は帰り道が違うので今回は2人きりの
帰宅になるようだ。だから2人とも自然にテンションが高くなる。

「んじゃ、その日は俺が遊びに行ってやるよ」

「別にいいが・・俺は基本的に表には出ないぞ?」

「つまんねぇな! 噛ませろ!!」

「痛ェッ!!! だから噛むなって・・」

噛まれながらも幸せと言うものを肌で実感する辰哉であったが、先ほどの応援団の一件をふと思い出す。

「そういや先輩、ちゃんと止めれたんだろうか?」

「へ?」

「ほら、さっき話した応援団の奴だよ。先輩、うまく相良さんを止めたんだろうかと思ってな」

どうやら辰哉も翔の動向は気になるようではあるが、聖の事を熟知している狼子はすぐに結論付ける。

「どうせ、聖さんのことだから普通に突っ走ってるに決まってるだろ!」

「でも意外に先輩が・・」

「ないない、聖さんがそう簡単に退くわけないだろ!!」

持ち前の持論と聖との付き合いから辰哉を圧倒する狼子。しばらくは黙って聞いていた辰哉では
あったが、同時にあるいやな予感が脳裏に過ぎる。

「まさか今頃はその件で応援団が慌てたりしてな・・」

「そんでもって聖さんと団長の直接対決が実現だな!!」

狼子達の言っている事は半分当たっていた、その頃教室では宗像が藤堂を呼び出しての話し合いをして
いたのだが、場の空気はピリピリしており双方の顔つきも真剣そのものでただの話し合いではないことが伺える。

199 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:45:19.37 ID:Ji74kvwo

「こんなところに呼び出して・・何のようだ?」

「・・また相良だ」

「何だと―― その件は桃井に一任していたはずだが?」

「残念ながら事実だ・・っと言いたい所ではあるが今回は少し違う」

そのまま宗像は呼吸を整えると懐から手紙みたいなのを取り出し、黙って藤堂の机へと置く。藤堂は
そのまま手紙の封を切り中身を読んでいくのだが元々険しかった顔つきが更に険しく歪む。

「何だそれは・・」

「お前宛の果たし状だ」

「それは解っている!!! それよりも桃井はどうした!!!」

「桃井は現在保健室で治療中だ。そういえば経緯を説明していなかったな」

事の経緯は今から数分前、翔の説得がうまく言ったと安堵しきっていた桃井はいつものように校舎に
聳えている栗の木の下でのんびりと過ごしていた。桃井にとってはこの一件で1日を棒に振ったとも
言えなくもない、何せ半ば強制的に聖の説得を命じられるものの仲間は途中から離脱し孤立無援の
状態で必死に試行錯誤しながらベストな対処法を考え続けていた。

もしあの時に翔に断られていたら桃井の命はまずなかったであろう、今回の一件で桃井は寿命が
確実に縮んだと思っている、聖の彼氏でもある翔が引き受けたとなれば安堵せずに入られない。

「これで学園内にも平和が戻るだろう。全く今日は散々だった・・」

放課後とはいえここまでのんびり出来たのは何年振りであろうか? 暫しの間、黄昏ながらのんびり
気ままに過ごしていた桃井であったがとある人影が視界に入る、しかもそれは絶対にあってはならぬモノ・・

「あれってもしや・・」

「オラオラ!! てめぇら待ちやがれ!!!!」

「ヒッ・・ヒイイィィィィ!!」

(あの人影は・・間違いない!! 相良 聖だ!!!)

桃井が目撃したのは不良を執念深く追いかけている聖。相手が部活に所属している人物ではない
ものの、その光景は異様だ。しかし桃井にとっては気が気ではない状態だ、桃井の予定では本来ならば
聖は放課後は真っ直ぐに自宅に帰りこの学校には居ないはず・・考えられるケースを想定すれば結論は一つしかない。

「まさか中野先輩・・しくじったのか!!!」

己の運のなさに落胆する桃井ではあるが、聖の行動を考えると今はそのような状況ではない。
その頃聖は逃げる不良を1人ずつ殲滅して最後の1人を追い詰めていた・・

200 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:46:26.59 ID:Ji74kvwo


「さぁって・・てめぇで最後だな」

「あわわわわ・・・」

「この俺様の恐ろしさを思い知れェェ!!!!!!」

「や、やめろ!!!!」

迫り来る聖の拳に不良は身が竦み、防衛本能を必死に働かせて目を瞑りダメージを抑えようとする。
しかし本来届くはずの衝撃は一向に来なく、ゆっくりと目を開くと不良の目線からは驚くべき光景が広がっていた。

「やめてくださいッッ・・」

「てめ・・離しやがれッ!!!!!」

「俺が抑えているうちに早く逃げろ!!!」

「は、はい!!!!」

桃井の掛け声に不良は一目散にこの場から脱兎の如く立ち去る、そんな中で聖は一瞬で桃井の拘束を
振りほどくとそのまま敵意むき出しで桃井を睨みつける、桃井は体中から武者震いしながらも必死で抑え
ながら聖と相対する。

「何の真似だ・・」

「じっ・・自分は応援団所属、2年の桃井 国仁であります!!! 今回は・・」

「うるせぇ!! んな御託はどうでもいいんだよ!!! 俺は非常ォ~に機嫌が悪いんだよ!!! 
邪魔する奴は誰であろうとも容赦はしねぇ!!!!!!」

「クッ、団長がここに居れば・・」

「団長? ・・そうだ、いい事思いついた」

団長という言葉を聞いた聖は何か思いついたようでおもむろにポケットから用紙とペンを取り出すと
サラサラと書き込み、そのまま手紙を作成すると桃井の制服のポケットに収める。そして関節を鳴らしながら
桃井へと近寄る、一連の聖の行動に桃井は呆然とするしかない。

「これでよし・・さて、お前にはさっき邪魔されたからな。覚悟しろ!!!」

「う、うわあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

桃井の意識はここで止まった、悪魔ともとれる聖の微笑によって・・


201 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:47:17.32 ID:Ji74kvwo

宗像から事情を聞いた藤堂は力任せに手紙を握り締めながら身体を震わせる、宗像はそんな藤堂の
様子を見ながらも冷静に対応する。

「これでついに応援団にも被害者が出てしまった。このままだと軒並みにやられてしまうだろう」

「・・生徒会には?」

「まだ報告はしていない・・が、ばれるのも時間の問題だろうな」

藤堂は暫く冷静に考えながらあらゆるパターンを頭の中でシュミレートしながら試してみるが、妙案など
出るはずもなくその重い腰を上げる。

「宗像」

「ん?」

「・・こうなったら直接、俺が出る! もはや応援団に被害が出てしまったのなら仕方あるまい。
あの糞女ァ・・応援団の恐ろしさをたっぷりと味あわせてやる!!!!」

教室中が振るえ上がるぐらいの怒声を放ちながら聖との決闘に応じる、宗像も長年の付き合いから
それを察するとすぐに手回しの方を提案する。

「生徒会からは俺が話をつけよう。元はあちらからの要望だ、多少の無茶は引き受けてもらわんとな」

「上等! 待っていろ・・相良 聖!!!!」

かくして世紀の決戦は静かに動き出した。


202 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:48:56.63 ID:Ji74kvwo

舞い上がる風、グランドから吹き荒れる砂埃・・今にも激戦の予感がピリピリと感じつつも校舎全体に
設けられた会場では観客の興奮だけでまだ開始されていないのにも関わらず、その盛り上がりは
ピークにまで達していた。

「さぁ・・やって参りました夢の大決戦!! 勝利する女神は果たしてどちらだッ!!! 皆、盛り上がっているかッ!?」

「「「「「「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」

男女混じっての熱気溢れる声援に会場全体は揺れ動く、本来ならこういった場は男子が大多数を
占めるものと思っていたのだが意外にも女子の人数もかなり占めている。
実はこれにもちゃんとした事情があり、最初は賭博が発端となったのだがそれではつまらないと
言う事になり金以外にも更なる商品が加わり、世界を又に掛けて活躍する世紀の大女優SAORIの
非発売品の極秘ブロマイドが商品として出展される事となったとたんにコレまで無関心を決め込んでいた
女子の数が上級生下級生問わず人数が急増し今に至るわけ、やはりいくら時代が経とうとも若かりし頃の
美貌とスタイルと保っているSAORIの存在は女子にとって憧れの象徴でもあるのだ。

「司会はこの私、生徒会会計担当の保坂でお送りします。さて! 主役の登場です!! 
中学時代は伝説の不良と恐れられ数々の男達を恐怖のどん底に落としめた!! 

通称血に飢えた狂犬、相良 聖ッッ!!!」

「「「オオオォォォォ!!!」」」

「うるせぇ! 外野は黙ってろッ!!!」

「「「・・・」」」

聖自身、あまりこういった事が好きではないようで一喝して観客を黙らせるとそのまま所定の
位置へとつく、司会者の保坂も唖然としながらも気を取り直してもう1人の主役を紹介する。

「さて次に登場しますのは泣く子も黙る応援団団長ッ! 藤堂 魁ッッ!!!!」

「「「オオオォォォォ!!!」」」

「皆、団長の晴れ舞台だ! しっかりと応援しておけ!!!」

「「「「「「「「「「「「「押忍ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」

藤堂からは聖と同じぐらいの歓声に加えて桃井を筆頭とした応援団全員の声援を背に受けて威風堂々とした
佇みのガクラン姿で登場し、聖と同じくして所定の位置につく。2人は初対面ながらも激しく睨み合いを
繰り返しながらお互いに食い入るように見つめ合う、どうやら2人とも自分が勝つ絶対の自信でその現れが
スッと言葉に出る。

203 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:50:06.08 ID:Ji74kvwo

「てめぇが噂の応援団長か・・相手にとって不足はねぇぜ!!! この俺様の名に掛けて完膚泣きに潰してやる!!!」

「この騒動も本来ならば俺が直々に出向く事はなかあったが・・応援団の誇りに掛けても貴様は徹底的に倒す!!!」

「まぁまぁ、双方とも落ち着いて・・ほら握手でも」

「「・・」」

司会を引き受けた保坂は面白半分興味半分で参加をして見たものの直接対面して見ると明らかに
場が重い、傍目から見ていた方がよっぽどマシだ。だけども引き受けた手前もあるので沿う易々とは
引き下がれない、保坂は少し深呼吸をすると声を高らかと上げる。

「で、では!! これから世紀の対決を始めたいと思っています!!!」

その同時刻、舞台裏で設けられた解説席では聖の恋人である翔と副団長である宗像が座っていたの
だが、翔は思っても見ない事態にただただ頭が困惑するばかりだ。それもそのはずで翔にこの事が知らされた
のは決戦が始まる直前の事であったので不機嫌際まりないが、隣に居る宗像は翔とは対照的に涼しい顔つきの
まま静かに事の様子を見守っていた。

「おい!! なんであいつとお前の所の団長が決闘しなきゃならんのだ!!!」

「・・桃井を通じてお前にも協力を要請させたはずだ?」

「まぁ、確かに依頼はされたのはされたが・・俺はちゃんとあいつに“大人しくしろ!!”って言ったぞ!!! 
それにこんなことすれば後で生徒会や先公が黙っちゃいねぇぞ!?」

「その点については抜かりはない。生徒会には教師への根回しは無論の事、会場の手続きなどの協力は
して貰った。後は必要に応じて解説をするだけだ」

「へいへい」

今更ながら流石の翔でも膨れ上がったこの決戦を止める事など出来るはずもなく現状を認めざる得なかった。


204 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:51:38.60 ID:Ji74kvwo

「さて、最初の競技ですが・・100M短距離走です!! 両者とも位置についてください!!!」

保坂の指示の元、2人は整備された陸上部専用のグランドでスタートを整える。

「なんだ、随分とお間抜けな内容だな」

「逃げてもいいんだぞ・・」

「ヘッ、誰が逃げるかよ! てめぇこそ尻尾巻いて置くなら今の内だぜ!!」

「その言葉・・後悔させてやる!!」

「それではいいですかぁ!! よ~い・・ドン!!!」

保坂の合図と共に2人は勢いよく猛スピードでグランドを駆け抜ける、観客は2人のスピードを眼で
必死に捕らえようとするがそれでも早すぎるためどちらが優勢かはわからない。2人は100Mという
短いトラックを一心不乱に走り抜け、お互いの勝敗を分けたタイムに全員の注目が集まる。

「えっと・・あ、集計が出たようです。まず藤堂さんのタイムが9秒23! そして相良さんのタイムが9秒18! 
この勝負は相良さんの一勝ですッ!!!」

「「「「「「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」

「えー・・ではこの結果について解説の方をお願いします」

保坂も疲れてきたのか話を解説の方にいる翔達に振る、いきなり話を振られた翔はどのように話して
いいのか解らずに頭を悩ませるが宗像は冷静に分析をしてパッと言葉に出す。

「ああ見えて団長は瞬発力が必要とされる短距離走は苦手だ」

「あいつはそうだな・・女になってからすげぇ素早くなってきたな」

「解説ありがとうございます! ・・さてそれでは次の競技に移りたいと思います!! 
短距離走があってこれはないのかッ! 20キロの長距離走ですッッ!!!」

「「「「「オオオオオォォォォォォッッッ!!!!!!!!!!!!」」」」」

競技の内容がご都合主義なのは生徒会や応援団のごく一部の人達に問い合わせてもいいかも
しれない、さて先ほどから短距離走を行っていたトラックを整備が完了して両者は再びスタート位置につく。

205 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:53:31.44 ID:Ji74kvwo

「たった20キロか・・いつものロードワークにしては少なすぎだな」

「随分と余裕だな」

「当たり前だ。俺はいつも最低30キロは走ってるからな、20キロぐらいどうと言うことはないぜ!!」

「・・いつまで持つかな」

「さぁって・・両者準備はいいですかッ!? それでは・・よ~い・・スタートッッ!!!!」

再び保坂の掛け声に合わせて2人は一斉にスタートを切る、しかし我武者羅に突っ切る短距離走と違って
長距離走はペース配分も考えなければならないので速度は遅めではあるのだが、2人ともピッタリと
くっつきながら走っているので傍から見れば優劣など分かるはずがないのだが・・本人達はその微妙な
距離も把握しているようでいがみ合いながらも走り続ける。

「この調子だと楽勝だな! 俺の方が少しリードしてるからお前の勝ち目はないな、団長さんよ!!」

「フッ、誰がお前ごときに負けるか! その様子だと、どうせばてるのがオチだな」

「ギブアップするなら今のうちだぜ!!」

「お前もな!」

そんな調子で走り続ける2人、普通の人間ならこんなにくっちゃべっていたらばててしまうのが常なのだが
こと2人に関してはそのような様子はなく、いがみ合いながらもただ黙々と走り続けていた。

「まさに一進一退の接戦が繰り広げられています!! 解説席の皆さん、これはどう見ますか?」

「ふむ、傍から見れば優劣が見えなくともないが・・見たところうちの団長の方がリードしているな」

「だけど僅かなリードぐらいは大した事ねぇだろ」

「ほぉ、前の体育祭では長距離走でトップを維持していたが僅かな気の緩みでペースを遅らせてしまって
2位に転落した者が言えるのかな?」

「ウグググッ・・痛い事を言いやがって!!」

「え、ええ~・・解説からは以上です! さてレースもそろそろ終盤です!! 
果たしてこのまま相良さんが勝つかッ! はたまた藤堂団長が一矢報いるのか・・注目が集まるところですッッ!!!!」

20キロと言う果てない徒競走もそろそろ決着がつくところ、しかし傍目からはどちらがリードしているのかは
わからないもので判定を任されている陸上部の一員もようやく見える程度、全神経をフルに稼動させながら
今にもゴールに向かわんばかりの2人の姿を必死に目に焼き付ける。そして一瞬の刹那――2人はほぼ
同順でゴールを駆け抜けた・・とはいってもこれはあくまで傍目から見た感想ではあるが、すぐにタイムが
切られその結果は厳正なる審査の元へと移る。

そして厳正なる審査の結果がついに出る・・


206 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:55:45.53 ID:Ji74kvwo

「ただいま、先ほどのレースの結果が出ました。・・僅か0.1コンマの差ではありますが、この勝負は
藤堂団長の勝利ですッッ!!!!」

「「「「「オオオオオォォォォォォッッッ!!!!!!!!!!!!」」」」」

哀楽入り混じった歓声をあげる観客、彼等にして見ればこの勝負に勝たなければ金はもとより、景品の
非販売品である沙織のブロマイドが懸かってるのである。しかしそんな中で聖はこの記録に納得が
いかないようで観客の声量に負けないぐらいの声を張り保坂に詰め寄る。

「おいッ!! 俺が負けるとはどう言う事だ!!!」

「で、ですが・・これは厳正なる審査の結果で」

「うるせぇ!!!! んなもん関係ねぇんだよ!!」

保坂の胸倉を掴んで抗議を上げる聖であったが、ここで藤堂が静かに声を上げる。

「・・惨めだ、自分の負けを認めずに声を荒げる。まるで負け犬の遠吠えだな」

「何だと・・」

「これで一勝一敗だ。それに元を正せば本来、俺は出てこなくていい筈だった・・
正直このお遊びに結果なんてどうでもいい」

吐き捨てるようにその場を後にしようとする藤堂、そもそも彼女にして見ればこんな勝負など全く持って
意味のないもので自分が勝とうが負けようが正直言ってどうでもいい。ただなり崩しに場に流されて
参加しただけ・・2人の行動に先ほどから歓声を上げていた観客はだんまりと行動を見守りざる得なかった。

そのまま黙って立ち去ろうとする藤堂であったが再び聖の声が鳴り響く。

「待てよ。結果なら次があるだろう・・ 来いよ、最終決戦だ!! 逃げるんならそれでもいいぜ? 
てめぇの不戦勝なら文句なしに俺の勝ちだしな」

「・・いいだろう、その挑発に乗ってやる!!」

2人の間に燃え上がるモノ・・それは純粋な闘志、それは徐々に周りを包み込み全てを燃え上がらせる。

「さて、予想外の事態となりましたが決勝戦の競技は・・あっ、ああ!! マイクを取り上げられたら困りますッ!!!」

「うるせぇッ! ・・おい、応援団長!! 決勝はこの俺様・・相良 聖との一騎打ちだ!!! 
女だから問題はねぇよな、団長さんよ?」

「さっきの競技で準備運動も済ませたとこだ。来いッ!! この応援団長、藤堂 魁が相手になってやるッ!!!」

「行くぞ――ッ!!」

ついに勝負は最終決戦を迎える。

207 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:56:45.29 ID:Ji74kvwo

待ちに待った決勝戦の内容は聖と藤堂との一騎打ち、この内容に観客は抑えようのない興奮で
盛り上がらないわけがない。しかし主催者側はこの決戦に関して予め決めておいた教員側との
取り決めに反する事となる。
教員側もすんなりとこの決戦を許可したわけではない、その取り決めの内容とは“暴力行為が
なければ承認する”といったもので主催者側もそれに配慮して最低限かつ効率的な競技を
考えていたのだが、それを嘲笑うかのように聖の独断でこの一騎打ちがなされた。

この内容は明らかに教員側との取り決めに反する事となる、当然主催者側は焦りが募るが、解説席に
居た宗像はとんでもない事を言い放つ。

「・・やらせてやれ、このまま中途半端に中止してしまえば最悪の結果になるのは明らかだ」

「し、しかしッ!!」

「取り決めに反してしまえば・・」

明らかに戸惑いを隠せない生徒達ではあるのだが、ここでだんまりを保っていた翔が言葉を述べる。

「俺からも頼む。もうここまで来たら俺でも止められぇ、それに止めたらとばっちりが凄いもんになるしな」

「もし教員側から何かしらのクレームがついたら俺が責任を持とう。・・やってくれるか?」

応援団の仏と校内の人徳(表向き)にここまで言われたら主催者側も引き受けないわけには行かない、主催者側は
結論を保坂に伝えるとそのまま保坂はマイク片手に高らかと宣言を開始する。

「では・・決勝は特別一本勝負!! それでは・・始めてくださいッ!!!!!!!!!!!」

「「「「「「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」

場内に広がる大歓声の中でついに決勝戦は動き出す。

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最終更新:2009年05月28日 05:07
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